296 / 632
29★発覚 ─SIDE 恭也─
29★
しおりを挟む─恭也─
ついさっき、セナさんから連絡を貰った。
水瀬さんとアイさんの件についてだ。
結果、無関係の他者からの依頼では、たとえ弁護士と名の付く者であってもこの件に関する情報開示は無理らしい。
『──そういう事なんだよ。 ごめんな、俺も無知でさ』
「いえ、謝らないでください。 ありがとう、ございます」
仕事も、例のゴシップの件でも忙しい最中、律儀なセナさんは俺にまで気を使う。
本当は四日も前にそういう回答があった事を知っていたけれど、俺とセナさんの連絡がすれ違っていて報告が遅れたと、とても申し訳無さそうだった。
降って湧いた偶然の一致がすごく気にはなる。 けれど、こればかりは仕方が無い。
これ以上深入りすると事務所にもセナさんにも迷惑が掛かるかもしれないし、俺の疑問はひとまず胸の中にしまっておく事にした。
そうこうしていると水瀬さんの撮影が終了してしまって、さり気なく情報収集する術もなくなった。
「あ、……」
考え事をしていて、うっかり〝ETOILE〟の楽屋を通り過ぎていた。
貼り紙には収録番組名も記されている。
すれ違ったスタッフさんと挨拶を交わして、大好きな親友の待つ扉を開いた。
この瞬間、毎回胸がドキドキする。
「葉璃ー」
「……っ! 恭也!」
「葉璃、会いたかったよ」
「……俺もっ」
楽屋に入って来たのが俺だと分かった瞬間、ポツンとパイプ椅子に掛けていた葉璃が立ち上がって飛びついてきた。
その微かな衝撃が心地良い。
柔らかく抱き締めてあげると、葉璃の腕が俺の背中に回った。
こんな事をしていたら、またルイさんがヤキモチ焼いて「俺もハグしたい」って言うんじゃ……。
今にも声が聞こえてきそうなのに、そういえばこの楽屋には葉璃しか居なかった。
「あれ、ルイさんは? 打ち合わせ?」
「弁護士さんと話があるからって、午前中で帰っちゃった」
「そうなんだ?」
「うん……」
「葉璃、寂しいの?」
「えっ? いやいや、そんな……」
「寂しそうに、見えるけど」
「えぇっ?」
ルイさんの名前を出すと、見るからにしょぼんと肩を落とした。
その話はしてくれるな、と言いたげに見えたんだけど、気のせいなのかな。
どうしても俺達とハグしたがるルイさんと同じく、それは俺も妬いちゃうよ。
伏し目がちになった葉璃を、少しだけ問い詰めるように黙って見詰める。 ……こういうところが異常だって言われる所以なのかもしれないけれど、葉璃の二番目は俺で居たいんだから言い訳なんかしない。
「恭也が来るまで一人だったから……心細かった、かも……」
「……そっか」
……うん。 こんな可愛い事言われちゃ、やっぱり言い訳なんか出来ない。
ルイさんが帰ってしまった事と、俺が来るまで一人ぼっちだった事で寂しかった葉璃は今、そうじゃなくなったって意味に捉えていいんだよね。
こうして葉璃が俺を自惚れさせるから、会う度に大好きの気持ちが大きくなる。
対面じゃなく隣同士で座る俺達は、世間では危ない関係に見えてるみたいだけれど、あながち間違ってないんだよなぁ。
葉璃からペットボトルのお茶を手渡されて、微笑む。 葉璃も、微笑み返してくれる。
言葉が要らないって、すごく幸せで素晴らしい事。
でも葉璃とのまったり優しい時間は、毎度あっという間だ。
打ち合わせを終えて、収録までの空き時間に再び楽屋へと戻った俺達は、示し合わせたかのようにまた隣同士に腰掛けた。
「──そうだ。 あのゴシップの件って、進展あったの?」
台本を捲りながら、何気なく聞いてみた。
セナさんと連絡を取りたくてもすれ違いだったほど、俺はこの一週間、何なら来週明けまで撮影が大詰めで。
葉璃とも簡単なメッセージのやり取りしか出来なくて、話をしたくてもゆっくり時間が取れなかった。
水瀬さんの件と並行して起こった、とんでもない裏がありそうなこの件も、ずっと気になっていた。
セナさんに頼まれたわけでもないのに、俺が出しゃばって動いた事が裏目に出ていないといいけど。
「あぁ……ううん、まだ社長さんからの連絡は無いみたい。 でも協力してくれる人が増えたから、聖南さんも俺もそんなに危機感無くて……」
「そうなんだ。 やっぱり、神崎さんは、黒なのかなぁ」
「怪しいんだけどね……証拠集めてるから、犯人はまだ言えないって」
「えっ? 犯人、もう、分かってるの?」
「うん、実は……」
10
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
灰の底で君に出会う
鮭茶漬け
BL
両親を亡くした高校生、神崎透は叔母の家に引き取られて暮らしている。しかしその家は、家族と呼べる場所ではなかった。家事、雑用、そしてバイト。どれだけ働いても感謝されることはなく、透は「穀潰し」と呼ばれながら日々を過ごしていた。
それでも透は思っている。ここに置いてもらえるだけでありがたい、と。
これは――居場所を持たなかった少年が、初めて愛を知るまでの物語。
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み/現在毎日更新予定
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる