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30♣発覚 ─SIDE ルイ─
30♣8
しおりを挟む「ルイ、いいか。 この秘密は、今後こちらが動いて隙を与えてしまった場合、向こうにとっては充分反撃材料となり得るものだ」
「……なんや。 何かあんのはマジやったんか」
仰々しいな。 そないにヤバいネタなんか。
今も昔も変わらん、社長はライオン丸のような強面やから迫力満点。
おまけに眼光鋭く見てくるし、俺が問い詰められてる側みたいになってるやん。
「ああ。 一部の者しか知らない極秘事項ゆえ、お前にも口止めしておかねばならんが。 秘密を守ってもらえるか」
「大層やなぁ。 口約束が不安なら一筆書いて、血で拇印押したるで」
「……血っ!? ルイさん、痛いことはやめて!」
「おぅ、やめとこ」
「えっ……?」
言葉の綾、いうんを知らんのかいな。
ギョッとして立ち上がりかけたハルポンはまぁ、そういうとこがええんやけど。
周りがこんなハルポンをほっとかれんで甘やかしてるから、まったくすれてへん。 まるで天然記念物。
俺も人の事言われんほど、日に日にハルポンに甘なってるしな。 誰にも傷付けさせへん、とまで思うようになって。
事態が動くならと、さっきの今でここに居る。
頭の上にクエスチョンマークを一つ浮かべたハルポンから社長に視線を戻すと、こっちはまだ仰々しい顔で俺を見とった。
「SHDエンターテイメントと大塚芸能事務所は、確かに秘密裏にとある契約を交わしている」
「ふんふん。 まぁデカい事務所やからな、ここは。 そんな話一般企業間じゃ珍しい事でもないやろ。 でもハルポンと何の関係があるん? スパイじゃないんやろ?」
「それが関係あるのだ。 ハルがその契約の要なのでな」
「……ハルポンが? どういう事?」
もったいぶるなぁ……。
いつから社長はこんな回りくどい喋り方するようになったんや。
事務所間で契約しとるのは事実やけど、それにはハルポンが絡んでるって言いたいんやろ。
俺みたいにスルスルっと簡潔に話してくれんかな。 じれったいわ。
はよ言うてくれと急かしそうになったが、セナさんとハルポンを順番に見た社長はというと、ひと呼吸と言わずふた呼吸ほど置いてまた焦らす。
「……Lilyの離脱者の穴を、ハルが埋めてくれている」
「……ん? ……うん? うん……?」
「ヒナタというサポートメンバーを知っているか」
「おっ? ヒナタちゃんか!」
思いもよらんとこでヒナタちゃんの名前が出た。
知ってるも何も、俺はヒナタちゃん推しなんやで。
レコーダーが壊れてまうのも厭わんと、何回も巻き戻しては再生を繰り返して録画した映像を観とる俺は、その名前だけで大興奮した。
「そら知ってんで! 本メンバーやないのが不思議なくらいダンス上手いし、キラッキラな華もあってべっぴんでな! 俺めちゃめちゃヒナタちゃんの大ファ……」
「ヒナタは、──ハルだ」
「…………ッッ!?」
なんやて!?
ウソやろっ!?
ウソやんなっ!?
勢い余ってその場で立ち上がった俺に、全視線が注がれる。
いやだって、そんな……そんな事あるか!?
ハルポンがヒナタちゃんて……顔全然ちゃうやん!
メイクして衣装着て化けてたいうんか!? それだけであんなに別人になるもんなんか!?
分からん……! なんも考えられん……!
今まで生きてきて、こんな衝撃受けた事ない。
社長は俯いてしもた。
セナさんは背もたれに体預けて腕を組んだ。
そんで、ハルポンは……泣きそうな顔で俺を見とる。 ここに居るんは、いつも見てるハルポンその人。
……ヒナタちゃんではない。
「ルイさん、……ルイさんっ! ごめんね、ルイさん、あの……俺……っ」
「ま、待って。 ちょお待って。 ……待って」
「ルイさん……」
ごめんな、ハルポン。 頭ん中整理さして。
俺があんまりにも狼狽えてもうたから、ハルポンまで立ち上がって近寄って来ようとした。
それを左手かざして止めて、何も置かれてへんテーブルの上を凝視する。
「………………」
いったいどういう経緯で、そんな無茶苦茶な極秘事項が生まれたんや。
別事務所やで。 そもそも性別ちゃうし。
ハルポンがやってる事って、まるで影武者やん。
てか、あぁ……男が言うてたんはこの事やったんか。
〝世間の目を欺きやがって〟
〝権力持ってる奴は何をしても許されるのか〟
ハルポンが性別誤魔化して女性アイドルグループの助っ人になってるて、アイツは知ってたんや。
誰が聞いてもゴッツい極秘事項やのに……外部に漏れてるいうんか。
そらヤバいやん。
ヒナタショックで脳内爆破してる場合とちゃうで。
しっかりせんと、俺。
すごすごとセナさんの隣に着席したハルポンが、今にも泣いてまいそうになってる。
俺に隠してた後ろめたさで〝ごめんね〟言うたんやろ。 謝る必要なんかこれっぽっちも無いのに。
「ルイ、さん……っ」
「うん……すまん。 確認やけど、ヒナタちゃんは……ハルポンなんか? ハルポンが、ヒナタちゃん……そういう事?」
「……はい」
「いやなんで? なんでそんな……。 だって事務所ちゃうやん。 いくらハルポンがダンス上手いからって、アイドルがアイドルのサポメンて……しかも女になりきってやなんて……。 ほんまに訳が分からんのやけど」
声に出すと、やっぱり我慢できひんかった。
ハルポンを困らせたくなんかない。 尋問する気もさらさら無い。
ただただ純粋な疑問が湧いてん。
なんでや。 なんでや。
ガチで恋する手前やったヒナタちゃんが、ハルポンやった……て事はやで。
最初っからヒナタちゃんは居らんかった、て事になる。
毎日のようにヒナタちゃんに想いを馳せてた期間、ずーっと俺はハルポンの影武者を推してたんや。
全身がカチコチになるほどの衝撃的な事実に、俺はなかなか腰掛けられん。
体が……言うことを聞かん。
10
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