狂愛サイリューム

須藤慎弥

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39❤︎特大スキャンダル②

39❤︎

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─聖南─



 今日も朝から葉璃を愛でることが出来、心が存分に満たされた。ついでに下半身がスッキリ軽やかで仕事も順調に進み、聖南は大層ご機嫌である。

 突発で入ったテレビ情報誌のインタビューを巻きで終えると、すぐさま車に乗り込んで葉璃の写真を眺めた。


「はぁ……かわいー……」


 毎日増え続けている葉璃の寝顔写真は、毎度のことながらため息ものだ。

 聖南のパーカーを着ている葉璃を見ているだけで、ムラムラする。触れてしまえば即座に性欲メーターが振り切り、理性が飛ぶ。

 付き合って三年目ともなると、少しはこの葉璃に欲情する気持ちも落ち着いていい頃だと思うのだが、まったくそんな気配は無く。むしろ高まり続けている。

 葉璃をミニチュアにして持ち歩きたいという願望が、未だ密かに健在であるほど。


「なんでこんなかわいーんだ!!」


 ニヤついていた聖南は、思わず静かな車内で孤独に憤る。

 閉じた瞼から生えているまつ毛まで可愛い。形の良い小鼻も、見るからにやわらかそうな真っ白な頬も、ムッと引き結ばれた濃いピンク色の唇も、うぶ毛をヒゲだと言い張るつるんとした顎も、何もかもがとんでもなく可愛い。

 写真を眺めていると、「聖南さん」と呼ぶ葉璃の声まで聞こえてきた。単なる幻聴にも、聖南は簡単にときめく。


「あと一時間か……もう行っちまうか」


 葉璃に会いたくてたまらない聖南は、午前の仕事が思いがけず早めに終わったことに感謝した。

 とはいえ葉璃の方は午前中に二本の打ち合わせ、その後すぐに収録という流れなので、尋ねたところで会えないかもしれない。……が、行くと宣言していたからには、聖南がETOILEの楽屋で我が物顔で待機していたとて驚かれはしないだろう。

 逆に、聖南の早い来訪に喜んで飛び付いてきてくれるかもしれない。


「それ最高じゃん……♡」


 そうと決まれば、とスマホをポケットに直した直後、着信音が鳴り響いた。

 私用のこれが鳴ったということは「葉璃!?」と狂喜し舞い上がったが、画面を見てすぐに真顔に戻る羽目になった。


「……なに、どした?」
『あけましておめでとう』


 だが実際は、否応無しにテンションの下がる相手……所属事務所社長である大塚だった。

 葉璃の可愛さに盛り上がった気分が一瞬にして落ち着いた聖南は、冷静にエンジンをかけ、ひとまず暖房を欲した。


「あぁ……あけおめ。新年なの忘れてたわ」
『まったくお前というやつは。そんなだからまたもこうして撮られるんだぞ』
「……は?」


 レジスターに手をかざし、そういえば葉璃と姫はじめしたっけとニヤついた途端、社長からとんでもない爆弾を落とされ固まった。


 ──またもこうして? 撮られるんだぞ? 社長の野郎、何言ってんだ?

 
 社長の温度感的には、それほど強いものではない。

 撮られたと言っても、どうせいつもの〝CROWN・セナの彼女を突き止めた!〟などと誇大表記した偽記事を併せて載せるつもりのデマだろう。

 それを言うなら、マスコミ連中にしてみれば〝セナ〟の共演者である女性歌手、モデル、タレント皆が彼女候補である。

 そんなものでいちいち騒ぐのは時間の無駄だ。

 自他共に認める葉璃中毒の聖南に、〝彼女〟は居ない。


『今から事務所に寄れないか』
「えー……これから葉璃の現場に行くとこなんだけど」


 例の一件以降、やたらと聖南に詫びの気持ちを伝えたがる社長のこうした呼び出し時、少々面倒でも聖南は都度向かうようにしていた。

 あとがうるさいからだ。

 「なぜ来ない、やはりまだ怒っているのか」としょんぼり声の留守電を残され、何やら罪悪感を抱かせてくる。

 そっちの方が面倒なのである。

 だがこれから愛しの恋人の仕事はじめの応援に向かう聖南は、とても忙しい。

 事務所に寄ったところで、こんな写真が届いたという確認をさせられるだけならば後日でも構わないだろう。


「今日じゃないとダメなのか?」
『写真が届いておるんだ。情報は回ってきていたが、一昨日現物が……』
「俺が撮られるなんて日常茶飯事だろ。ほっときゃいいじゃん。記事が出たとこで全部でっち上げなんだからさ」


 水面下で〝セナ〟の彼女探しとしていくつものゴシップ誌が動いているのは、聖南も把握している。

 行く先々で知った顔を見かけたり、怪しげな車から尾けられたりと現時点で毎日のようにマスコミに追われているのだ。

 だからこそ送迎時の葉璃は後部座席で横になっているのだし、駐車場からエントランスまでの数メートルを戦々恐々としながら忍び足で駆けている。

 恋人の存在を明かしたことでさらなるゴシップの種を蒔いた気がしてならないが、葉璃を安心させるための宣言になんの悔いも無い。

 ただ厄介なのが、写真を撮られるだけならまだしも、ありもしないウソ情報を記事に書かれるのは非常に迷惑だ。

 それを葉璃が目にし、万が一鵜呑みにしてしまったらと思うと……想像しただけで髪をグシャグシャに掻き乱したくなる。


『確認せんで良いのか? 報道規制が解除されたと同時に、すべての写真を掲載するつもりらしいぞ』
「あっちも商売だしそれは構わねぇけど。掲載記事内容は事前確認できるんだろうな?」
『条件をつけてくる可能性大だがな』
「脅してくるっての?」
『それはどうだか』
「…………」


 聖南は考えた。そして天秤にかけた。

 〝葉璃のもとへ行きたい欲〟と、〝後々面倒なことになりそうなゴシップ写真の確認と詳細の把握〟を。

 律儀にも番組関係者に謝罪回りをしたいと震えながら言っていた葉璃を、聖南は今すぐにでも飛んで行って労ってやりたい。

 その気持ちは山々なのだが、ここのところ聖南は業界女性と二人きりになっていないので、いったい誰と撮られたのかが気になってきた。

 捏造されたレイチェルとのツーショット写真以来で、身に覚えも無いだけに興味がある。


「……分かった。今から行く」


 結果、長い目で見れば後者優勢だった。



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