448 / 632
42♡克服?
42♡6
しおりを挟む♡ ♡ ♡
夜中まで聖南が帰らないと知った二人が、なんとごはんに誘ってくれた。
お腹空いた、なんて俺は一言もぼやいた覚えがないのに、恭也が素早くお店の手配を、ルイさんは車を出して送迎してくれることになった。
ほんとはまだ離れがたかったけど、ついて来てってお願いした手前もうワガママは言えないと思って我慢してたんだ。
だからすごく嬉しい。
三人での時間はあっという間に過ぎちゃって、別れ際とっても寂しくなるのが分かってるんだけど、楽しいひとときを優先してしまった。
だって俺、気付いちゃったんだよ。
「恭也、ええ店知ってるやん。うまそー」
「以前、映画の撮影してた時に、教えてもらったんです。とても美味しかったので、葉璃にも食べさせて、あげたくて」
「ははっ、そういうことか。俺もおるけどなー、二人っきりいうわけやなくてごめんなー」
「いえ。そんな風に、言わないでください。俺は、ルイさんとも、親睦を深めたいと……思ってますから」
「またそんなこと言うてんの!」
しゃぶしゃぶのお鍋がぐつぐつしてる向こう側で、恭也とルイさんがこんな会話をしていた。
「今日めっちゃ照れさすやん!」と満面の笑みで恭也の肩をバシバシ叩いてるルイさんに、「痛いです」と冷静な顔で返してる恭也だけど、ああ見えて全然嫌がってないのが俺には分かる。
「あ”ぁッ!! 恭也なにしてんの!? 全部入れたらあかんよ! それやと寄せ鍋になるやん! しかもこの皿の具材全部いこうとしてたやろ! 鍋が埋もれてまうって!」
「ダメなんですか」
「あかん! 肉もそんな一緒くたに入れたら灰汁がぎょうさん出て大変なことになんで! しゃぶしゃぶなんやからチマチマ食おうや!」
「でも肉団子と、とり肉は、先に入れないと……」
「そ、それは合うてる。団子ととり肉は頼むわ」
「分かりました」
「プッ……! あははは……っ!」
俺は思わず、っていうか我慢できずに爆笑してしまった。
面白い。この二人の会話、面白すぎる。
運ばれてきた具材を全部投入しようとした恭也も、それを慌てて止めてるルイさんも、どっちも本気だから可笑しくてしょうがない。
俺、恭也とルイさんが仲良しなところを見るの、好きだ。
ホテルで語り合ったって聞いた時も嬉しい気持ちになったけど、実際に目の前でそれを実感するやり取りを見てたら、さっきの会議の緊張がすっかり消えちゃった。
まだ事務仕事が残ってるからって残念そうだった林さんは、また次の機会に絶対誘うんだ。この二人の漫才みたいな会話を、林さんも交えて見て、笑いたい。
「てか全然飲み物こんやん。遅すぎひん? 恭也、ちゃんと頼んだんか?」
「え? ルイさんが頼んだんじゃ、ないんですか」
今度は飲み物がきてないって内容で会話が始まった。
俺は聞き耳を立てながら、メニュー表代わりの四角い機械に視線を落として〝ごはん〟の文字を探す。
俺と恭也は、会話が無くても一緒にいるだけでいいみたいなのんびりコンビだから、ルイさんの賑やかさはまだ正直慣れないところがある。
でもすごく楽しい。すっごく。
「はっ? なんで俺やねん!」
「だって、注文する端末持ってたの、ルイさんですよ」
「いや俺はトイレ行くから頼んどいてって言うて、端末は恭也に渡したで?」
「あ、そうだった。俺そのとき、電話きて、注文は葉璃にお願いした……気がする」
「えっ!?」
急いで顔を上げると、二人が俺をジーっと見ていた。
「ハルポン、俺喉カラカラや」
「葉璃、決定アイコン、押した? 選ぶだけじゃ、注文したことには、ならないからね?」
「い、いや、でも俺、注文する端末ってやつ持ってないよ! 恭也からお願いされた気がするのは覚えてるけど、でも……っ」
そうだった。ルイさんがトイレ、恭也が電話しに行ってる間、俺は数分間だけ一人になってお鍋を見張ってたんだっけ。
二人の会話楽しい~! ってウキウキだった気持ちが、一気に〝ヤバイ〟に変わる。
「ハールポ~ン」
スッと椅子を引いて立ち上がったルイさんが、テーブルを挟んだ俺のもとまでやって来ると、なぜかふわっと微笑んで顎クイしてきた。
「な、なんですか」
その呼び方と怪しいくらいの眩しい笑顔に、俺は瞬時に嫌な予感がした。
ルイさんがこんな顔して優しい声を出すなんて、何かある。
緊張が走った俺の手元を、ふと顎クイをやめたルイさんが指差した。
「ハルポンがさっきから熱心に見てるそれ、〝注文する端末〟やないの~?」
「えっ、……あっ!」
「端末持ってるやないかぁ!!」
「わぁん! すみませんー!」
持ってた! 俺がこれ持ってた……! ってことは、飲み物の注文を任された俺はその任務を遂行出来てなかったんだ!
てっきりこれはメニュー表代わりの機械なんだろうって思ってたけど、注文もこれでするんだよね。
うぅ……こういう事はいつも、聖南がテキパキやってくれてるからなぁ……!
〝バレたら終わり〟の重大任務は失敗しないのに、注文一つできないなんて俺ってば……!
「サラトガクーラー楽しみにしてんやぞ!」
「なんですかそれ!? この時期にクーラーは寒いですよ!」
「ちゃうって! サラトガのアルコール度数ゼロバージョンや! こんな説明したってお子様なハルポンには分からんやろ!」
「何も分かりませんでした!」
「素直でよろしい!」
「ありがとうございますっ」
喉がカラカラらしいルイさんがお怒りだ。
それにつられて俺もテンションが上がっちゃって、しかも初耳の横文字をいっぱい言われて訳が分からなくなった。
最後に褒められたからまだしも、今みたいなルイさんの剣幕は知らない人からしたら怖いよ。……むぅ。
「あはは……っ! まぁまぁ、ルイさん、落ち着いて。葉璃も、ね」
恭也まで席を立って、ほっぺたを膨らませた俺のそばに来てくれた。
俺だって好きで間違えたわけじゃないもん。
ルイさんと恭也に挟まれる形になったけど、構わず俺は恭也にそう訴えた。
「恭也……ルイさんに怒られた……ちょっと間違えただけなのに……」
「そうだね。あんな大きな声、出さなくていいのにね。でもルイさんに、悪気はないからね。葉璃は少し、天然なだけだから、気にしなくていいよ」
「て、天然……」
「ほんま、ハルポンてたまにめちゃめちゃありえへん天然かますよな。思いっきし端末持ってんのに「持ってない」言うし。あれやな、眼鏡かけてんのに眼鏡探すタイプ」
「あはは……っ! たしかに!」
「ちょっと恭也! たしかにって何っ? たしかにって!」
あ、あれ……?
もしかして、二人が仲良くなったら俺がいじられ役になっちゃうの? ルイさんだけでも手ごわいのに、恭也まで加わったら俺どうしたらいいの?
いつも優しいけど、恭也は基本的に聖南みたいな思考の持ち主。
「葉璃が、必死で眼鏡探してる姿、目に浮かぶ! 可愛い!」とまで言って、ルイさんとケラケラ笑ってるよ。
ここに聖南が居てくれたら……いや、たぶん聖南も二人と一緒に笑ってるんだろうな。
そう考えると、どんな理由にせよみんながニコニコになるっていい。
天然も悪くないかも。
3
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
灰の底で君に出会う
鮭茶漬け
BL
両親を亡くした高校生、神崎透は叔母の家に引き取られて暮らしている。しかしその家は、家族と呼べる場所ではなかった。家事、雑用、そしてバイト。どれだけ働いても感謝されることはなく、透は「穀潰し」と呼ばれながら日々を過ごしていた。
それでも透は思っている。ここに置いてもらえるだけでありがたい、と。
これは――居場所を持たなかった少年が、初めて愛を知るまでの物語。
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み/現在毎日更新予定
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる