狂愛サイリューム

須藤慎弥

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49♡デート

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♡ ♡ ♡



 撮影が終わってスタッフさん達への挨拶を済ませた俺は、ルイさんが運転する車でお家まで送ってもらうことになった。

 遠いからいいですって毎回断ってるんだけど、押しの強いルイさんはいつも送迎してくれてすごく助かっている。

 行き帰りに色んな話が出来るし、かと言って逆に何にも話さない無言の日もあったりして、ルイさんはどうだか分からないけど少なくとも俺は居心地が悪いと感じなくなった。

 これはもう、ずいぶん前から。

 ルイさんと知り合ってまだ一年も経ってないのに、すごい事だって自分でも思う。

 人見知りで根暗でおもしろい事ひとつ言えない俺に、ルイさんがそれだけ歩み寄ってくれてるからなんだろうな。

 この短期間で絆を深めるには濃い出来事目白押しだったし、出会った頃はまさかETOILEの新メンバーになるなんて思いもよらなかったし。

 言ってしまえば、こういう大切な仲間との出会いも〝必然〟的なのかもしれない。

 聖南とアキラさんとケイタさんの三人がそう信じて疑わないように、俺も……。


「── もしかしてハルポン、そんままで密会行くつもりなん?」
「え?」


 うとうとしかけてた俺に、信号待ちでハンドルから手を離したルイさんがふと問いかけてきた。

 いつ聖南から連絡がきてもいいように、これからお家に帰って支度して……とか、ルイさんは見た目チャラチャラしてるけど安全運転なんだよなぁ……なんて色んな考え事をしてた俺は、いつの間にかまぶたが重くなっていたらしい。

 撮影は予定より一時間くらい押してしまったけど、まだ夜の八時前だっていうのに自分でも気付かないうちに疲れが出ちゃってたんだな……。

 だって、ルイさんの言った意味がまるで分かんないんだもん。


「そ、そのままって? そのまま……? 何がですか?」
「言葉通りの意味やけど」


 とぼけた声で返事をすると、俺の方を向いてたルイさんはふと前を見据えてハンドルを握り直した。


「今セナさん、マスコミからむちゃくちゃ張られてるんやろ? 密着番組の情報はすでに流れとるし、ひた隠しにしとる恋人はレイレイで間違いない言うて裏取ろうとされてるし。マスコミはかなり必死みたいやん」
「あぁ……いや、その……色々問題はありますけど……。でもそれと、俺がこのまま聖南さんと会うのと何の関係があるんですか?」


 話を聞いても、意味が分かんないままだった。

 聖南がマスコミに追われてるのは、言ってしまえば『いつものこと』。

 春に〝セナ〟プロデュースでデビューする女性歌手の情報がマスコミに漏れていて、しかもそれが聖南の恋人かもしれないってなったらそりゃあ追っかけも加熱する。

 だからこそ俺と聖南は、離れて暮らすことを選んだ。余計な疑惑を増やさないように。

 まぁ、二人揃って一ヶ月も経たないうちに限界を迎えたなんて、ちょっと大きな声では言えないんだけど。


「レイレイがマスコミと繋がっとるかもしれんて言うてたやん。もしかすると自分で情報流しとるかもしれんって」
「……はい、まぁ……」
「いつどこでマスコミが見張ってるか分からん。それやったらこっちも手打たんと!」
「えっ?」


 力強くそう言われたものの、さらに意味不明だ。

 手を打つって……何をどうするんだろう。

 運転中のルイさんにあんまり話しかけちゃいけないかもと、俺は黙って『手を打つ』の意味を考えてみた。

 だけど分かんない。

 俺の頭が働いてないうえに、ルイさんは突拍子もないことを言うのが得意だから見当も付かなかった。


「……あの、ホントにどういう意味なんですか? 手を打つって……」
「そらそんまま、ハルポンむき出しで会いに行ったってええよ?」
「むき出……ちょっ、待ってください。むき出しって言い方、なんかヤです……」
「なんでや。てかそんなんはどうでも良くて」
「えー……」


 うーん……まどろっこしい……。

 たまに聖南もこんな話し方をするんだよね。

 もったいぶるというか、すぐには核心に触れてくれないというか。

 おかげで俺は、真剣に話を聞いてるのにあっちこっちに思考が飛んじゃう。そして最終的に「なんの話でしたっけ?」になっちゃって、なぜか周りから笑いが起こる。

 これは俺の、ひとつの事に集中する悪いクセみたいなもの。

 マルチタスクができる人と一緒にしないでほしいよ、まったく。


「ええか、よう聞け。ハルポンはなんや分からんけど、メイクしたらめちゃめちゃ美人になるやん? もはや変身レベルやん? ビフォーアフターいうやつでテレビに出演できそうなくらいやん?」
「……そんなに変わります?」
「変わる、いうもんやない。あれは別人や。忘れたんか、俺がヒナタちゃんにゾッコンやった事。あれがハルポンやと分かってもなかなか諦められんかったの、そばで見てたから知ってるやろ。忘れたとは言わせへんで」
「あ、えっと……それは……忘れてないっていうか……忘れられない、ですから……」


 うっ……どうして急にそんな話を……? 気まずいったらないよ……っ。

 二人きりになっても俺からあえて〝ヒナタ〟の話題を出さなかったのは、まだルイさんの中で心の整理が出来てないって分かってたからだ。

 しかもあの時は状況も悪かった。

 俺とヒナタが同一人物だという事実を受け止めて消化するには、相当な時間が必要だってルイさん本人が言ってたくらいだし……って、だからどうして今〝ヒナタ〟が出てくるの。

 もごもごと口ごもりながら、再び赤信号で停車した車内で、俺は静かにルイさんの横顔を見つめた。

 まどろっこしい言い方はやめて、何が言いたいのかそろそろハッキリお願いします── こんな念を視線に込めてみる。

 すると……。


「そこで俺からの提案。その別人級メイクで密会行ったらどうや」
「えぇっ!?」




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