43 / 45
第一幕
第43話:天空の湯殿
しおりを挟む
今日はミーシャの修行が休みの日だ。ドランの店での過酷な特訓から解放された彼女は、朝からやる気に満ち溢れていた。
「アドルさん、今日は一日お手伝いできます! どんどん進めましょう!」
ミーシャが傍にいるだけで、改修の効率は跳ね上がる。俺が一人で何往復もして運んでいた素材は、彼女の 【 異空間保存 】 によって一瞬で地下室へと運び込まれた。
まずは地下の特務工房だ。俺は持ち帰った鉛合金と強化石材のサンプルを核に、壁一面を埋め尽くすように 【 複製錬金 】 を発動させる。外部への音や魔力反応を完全に遮断する厚い防壁。さらに、ミーシャが整理しやすいように素材別の自動仕分け棚を設置し、錬成の効率を極限まで高めた空間が完成した。
「次はキッチンですね! 私に任せてください」
ミーシャの希望を反映し、機能性と美しさを両立させたキッチンを作り上げる。大理石の広いカウンターに、魔導式のコンロ。調理動線は、かつて彼女が現代で培った知識をフルに活用したものだ。
続いて建物の外装と庭園に着手した。剥げ落ちていた外壁を磨き直し、噴水を修復して水を循環させる。二人の連携によって、数週間かかるはずの工事が、まるで魔法のように手際よく進んでいった。
「……ふぅ。ミーシャ、一度休憩しようか」
「はい! お茶を淹れますね」
修復されたばかりの中庭のベンチに腰を下ろす。まだ雑草は残っているが、噴水の水の音が心地よい。俺は手元の図面を広げ、次の工程を指差した。
「さて、休憩中も次の話を詰めよう。いよいよ、この館の目玉……天空の風呂に着手しようと思うんだ」
「天空の風呂……! 3階に作るんですよね?」
「ああ。最上階の南側に大浴場を構える。天井は錬金術で強化した透明度の高いガラス窓に作り替え、空を眺めながら入れる擬似露天風呂にする予定だ」
俺のアイディアに、ミーシャの目が輝く。
「お風呂は大理石ベース。それから、遊び心でシーザーの像の口からお湯が出るようにしようと思ってる。高級感溢れる、最高のリラックス空間だ」
「シーザーの口からお湯……! ふふっ、それ、すごく豪華そうですね! 夜は星を見ながらお風呂に入れるなんて、夢みたいです」
二人のイメージが共有され、設計が細部まで固まっていく。俺は少し真剣な表情になり、これからの展望を付け加えた。
「改修が一段落したら、次は自分たちの装備もしっかり整えようと思ってる。今まではあるもので済ませてきたけど、これから本格的にダンジョンに潜るとなれば、装備の質が生死を分けるからな」
「装備、ですか……。確かに、先日の黒犬との戦いでも痛感しました。もっと防御力や、魔力を高める装備が必要ですね」
「ああ。俺の錬金術と、ミーシャが持ち帰る希少素材を合わせれば、この街の店では売っていないような一級品が作れるはずだ。……よし、やるか!」
休憩を終えた俺たちは、一気に最上階へと向かった。作業は深夜にまで及んだ。重厚な大理石を切り出し、床と壁に敷き詰める。天井の一部を大胆に抜き、特製の強化ガラスを嵌め込む。そして、設計通りのシーザーの頭部を設置し、魔導式の昇温・循環機構を組み込んだ。
「……完成だ」
月明かりがガラス天井を通り抜け、磨き上げられた大理石の浴槽を青白く照らしている。蛇口、もといシーザーの口を開くと、心地よい温度のお湯が勢いよく流れ出し、湯気が大浴場を満たしていった。
「わあぁ……綺麗……」
ミーシャが感嘆の溜息を漏らす。それは、異世界の常識を遥かに超えた、贅沢と癒やしの結晶だった。拠点の生活環境は、これでほぼ完璧に整ったと言っていい。
「……さて。次は、この場所を誰にも汚させないための備えだ」
湯気に包まれながら、俺は次の工程、敷地全体の防衛システムの構築に思いを馳せた。この穏やかな時間を守り抜くための、鋼の要塞化。それが終われば、俺たちの本当の無双が始まる。
「アドルさん、今日は一日お手伝いできます! どんどん進めましょう!」
ミーシャが傍にいるだけで、改修の効率は跳ね上がる。俺が一人で何往復もして運んでいた素材は、彼女の 【 異空間保存 】 によって一瞬で地下室へと運び込まれた。
まずは地下の特務工房だ。俺は持ち帰った鉛合金と強化石材のサンプルを核に、壁一面を埋め尽くすように 【 複製錬金 】 を発動させる。外部への音や魔力反応を完全に遮断する厚い防壁。さらに、ミーシャが整理しやすいように素材別の自動仕分け棚を設置し、錬成の効率を極限まで高めた空間が完成した。
「次はキッチンですね! 私に任せてください」
ミーシャの希望を反映し、機能性と美しさを両立させたキッチンを作り上げる。大理石の広いカウンターに、魔導式のコンロ。調理動線は、かつて彼女が現代で培った知識をフルに活用したものだ。
続いて建物の外装と庭園に着手した。剥げ落ちていた外壁を磨き直し、噴水を修復して水を循環させる。二人の連携によって、数週間かかるはずの工事が、まるで魔法のように手際よく進んでいった。
「……ふぅ。ミーシャ、一度休憩しようか」
「はい! お茶を淹れますね」
修復されたばかりの中庭のベンチに腰を下ろす。まだ雑草は残っているが、噴水の水の音が心地よい。俺は手元の図面を広げ、次の工程を指差した。
「さて、休憩中も次の話を詰めよう。いよいよ、この館の目玉……天空の風呂に着手しようと思うんだ」
「天空の風呂……! 3階に作るんですよね?」
「ああ。最上階の南側に大浴場を構える。天井は錬金術で強化した透明度の高いガラス窓に作り替え、空を眺めながら入れる擬似露天風呂にする予定だ」
俺のアイディアに、ミーシャの目が輝く。
「お風呂は大理石ベース。それから、遊び心でシーザーの像の口からお湯が出るようにしようと思ってる。高級感溢れる、最高のリラックス空間だ」
「シーザーの口からお湯……! ふふっ、それ、すごく豪華そうですね! 夜は星を見ながらお風呂に入れるなんて、夢みたいです」
二人のイメージが共有され、設計が細部まで固まっていく。俺は少し真剣な表情になり、これからの展望を付け加えた。
「改修が一段落したら、次は自分たちの装備もしっかり整えようと思ってる。今まではあるもので済ませてきたけど、これから本格的にダンジョンに潜るとなれば、装備の質が生死を分けるからな」
「装備、ですか……。確かに、先日の黒犬との戦いでも痛感しました。もっと防御力や、魔力を高める装備が必要ですね」
「ああ。俺の錬金術と、ミーシャが持ち帰る希少素材を合わせれば、この街の店では売っていないような一級品が作れるはずだ。……よし、やるか!」
休憩を終えた俺たちは、一気に最上階へと向かった。作業は深夜にまで及んだ。重厚な大理石を切り出し、床と壁に敷き詰める。天井の一部を大胆に抜き、特製の強化ガラスを嵌め込む。そして、設計通りのシーザーの頭部を設置し、魔導式の昇温・循環機構を組み込んだ。
「……完成だ」
月明かりがガラス天井を通り抜け、磨き上げられた大理石の浴槽を青白く照らしている。蛇口、もといシーザーの口を開くと、心地よい温度のお湯が勢いよく流れ出し、湯気が大浴場を満たしていった。
「わあぁ……綺麗……」
ミーシャが感嘆の溜息を漏らす。それは、異世界の常識を遥かに超えた、贅沢と癒やしの結晶だった。拠点の生活環境は、これでほぼ完璧に整ったと言っていい。
「……さて。次は、この場所を誰にも汚させないための備えだ」
湯気に包まれながら、俺は次の工程、敷地全体の防衛システムの構築に思いを馳せた。この穏やかな時間を守り抜くための、鋼の要塞化。それが終われば、俺たちの本当の無双が始まる。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
背徳のミラールージュ(母と子 それぞれが年の差恋愛にのめり込んでいく鏡写し)
MisakiNonagase
恋愛
24歳の市役所職員・中村洋平には、自慢の恋人がいた。2歳年上の小学校教師、夏海。誰もが羨む「正解」の幸せの中にいたはずだった。
しかし、50歳になる母・美鈴が21歳の青年・翔吾と恋に落ちたとき、歯車は狂い出す。
母の恋路を「不潔だ」と蔑んでいた洋平だったが、気づけば自分もまた、抗えない引力に引き寄せられていた。
その相手は、母の恋人の母親であり、二回りも年上の柳田悦子。
純愛か、背徳か。4年付き合った恋人を捨ててまで、なぜ僕は「彼女」を求めてしまうのか。
交差する二組の親子。歪な四角関係の果てに、彼らが見つける愛の形とは――。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる