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第5話 カヌレ
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あの飲み会から一週間ほど経った。
美春は夏実人形のことを周りに言いふらす様子もなく、かといってそれを材料に脅してきたりもしなかった。後日本人に確認したが、人形のことを忘れたわけでもないようだ。
変わったことと言えば、二日に一回の頻度で美春がうちにご飯を作りに来てくれるようになったことだ。
夏実が亡くなってから、まともに手料理を食べていないと話すと、じゃあ私が作る。と言って、悪いからと断ってもきかなかった。
もちろん有難いことこの上ない。が、人形のことを知られた以上僕が気を使ってしまうので出来ればそっとしておいてほしいのが本音だ。
今日は会社が休みだが、夕方に美春が来る予定だ。
僕はベッドに寝転んでぼーっと天井を見つめた。横を見ると、未だ処分できずにいる夏実人形がある。
その白い頬に手の甲を滑らせた。
くすぐったがる夏実の笑顔を思い出す。
僕は人形の首に手を回し、その唇に深いキスをした。冷たい舌に触れると、それを自分の舌に絡める。
下腹から熱いものが込み上げてくる感触に震えあがった。
僕はズボンと下着を脱いで、自分の陰部を人形の太ももに擦りつけた。人形の乳房に吸い付き、そのよく出来た陰部を撫でるように触った。
喘ぐわけでもない。表情が乱れるわけもないのに。
僕は頭によぎった余計なことを振り払うように、自分の陰茎を人形の乾いた陰部に挿入した。
「うっ…はぁ…。」
まるで寝ている夏実を襲っているようだ。中の構造までそっくり夏実のものだった。
ベッドの軋む音と僕の乱れた息づかいだけが部屋を満たしている。額の汗がぽたぽたと人形の腹の上に落ち、僕は勢いよく陰茎を抜いた。
ベッドの上に置いたティッシュを手に取り、溢れるように出続ける精液を拭き取った。
僕は人形の乱れた髪を横目で流しながらズボンを履き直し、ベッドに倒れ込んだ。
「何やってんだろう。」
虚しい独り言が天井にのぼり、じんわり消えていった。
インターホンの音で目を覚ました。僕はそのまま寝ていたらしい。
ドアを開けると、美春が満面の笑みで立っていた。僕が首を傾げると、後ろ手に隠していた紙袋を僕の目の前に差し出した。
「なんすか、これ?」
「ふふ、開けてからのお楽しみ!」
おじゃましまーす!と軽くスキップしながら美春はうちにあがった。
「これ、開けていいですか?」
僕はダイニングの机に置かれた紙袋を覗いた。白い箱が入っている。
「あ、だーめ!ご飯の後ね。」
僕はせっせと夜ご飯の支度を始める美春に、はーい。と返事し、ソファで携帯をいじった。
30分くらいして、美春の得意料理、パエリアが食卓に並び、僕らは仕事の話やくだらない世間話をしながらそれを完食した。
「さて、お待ちかねのデザートです~!」
そう言ってやっと美春は紙袋から白い箱を取り出し、開封した。
甘い匂いがふわっと香った。
「これ、カヌレですか?」
「そ!今日家で焼いてきたの。冬雪くん甘党だって会社の人に聞いたから。」
「わあ、僕カヌレ大好きなんですよ!ありがとうございます。」
僕はカヌレをひとつつまんで口に運んだ。中から溢れ出すチョコレートが甘ったるくて最高だ。僕は思わず頬が緩んだ。それを眺めていた美春がくすくす笑った。僕は少し悔しくて、カヌレを美春の口に放り込んだ。
もごもごさせながら、お行儀が悪い。と僕に注意したが、その様子が、可愛くて僕は吹き出して笑ってしまった。
次の瞬間、僕の目の前で美春の頭部が舞い、飛んできた血飛沫で僕は目を閉じた。
その刹那に、夏実が美春の後ろでほくそ笑んでいるのが瞼の裏に焼き付いた。
美春は夏実人形のことを周りに言いふらす様子もなく、かといってそれを材料に脅してきたりもしなかった。後日本人に確認したが、人形のことを忘れたわけでもないようだ。
変わったことと言えば、二日に一回の頻度で美春がうちにご飯を作りに来てくれるようになったことだ。
夏実が亡くなってから、まともに手料理を食べていないと話すと、じゃあ私が作る。と言って、悪いからと断ってもきかなかった。
もちろん有難いことこの上ない。が、人形のことを知られた以上僕が気を使ってしまうので出来ればそっとしておいてほしいのが本音だ。
今日は会社が休みだが、夕方に美春が来る予定だ。
僕はベッドに寝転んでぼーっと天井を見つめた。横を見ると、未だ処分できずにいる夏実人形がある。
その白い頬に手の甲を滑らせた。
くすぐったがる夏実の笑顔を思い出す。
僕は人形の首に手を回し、その唇に深いキスをした。冷たい舌に触れると、それを自分の舌に絡める。
下腹から熱いものが込み上げてくる感触に震えあがった。
僕はズボンと下着を脱いで、自分の陰部を人形の太ももに擦りつけた。人形の乳房に吸い付き、そのよく出来た陰部を撫でるように触った。
喘ぐわけでもない。表情が乱れるわけもないのに。
僕は頭によぎった余計なことを振り払うように、自分の陰茎を人形の乾いた陰部に挿入した。
「うっ…はぁ…。」
まるで寝ている夏実を襲っているようだ。中の構造までそっくり夏実のものだった。
ベッドの軋む音と僕の乱れた息づかいだけが部屋を満たしている。額の汗がぽたぽたと人形の腹の上に落ち、僕は勢いよく陰茎を抜いた。
ベッドの上に置いたティッシュを手に取り、溢れるように出続ける精液を拭き取った。
僕は人形の乱れた髪を横目で流しながらズボンを履き直し、ベッドに倒れ込んだ。
「何やってんだろう。」
虚しい独り言が天井にのぼり、じんわり消えていった。
インターホンの音で目を覚ました。僕はそのまま寝ていたらしい。
ドアを開けると、美春が満面の笑みで立っていた。僕が首を傾げると、後ろ手に隠していた紙袋を僕の目の前に差し出した。
「なんすか、これ?」
「ふふ、開けてからのお楽しみ!」
おじゃましまーす!と軽くスキップしながら美春はうちにあがった。
「これ、開けていいですか?」
僕はダイニングの机に置かれた紙袋を覗いた。白い箱が入っている。
「あ、だーめ!ご飯の後ね。」
僕はせっせと夜ご飯の支度を始める美春に、はーい。と返事し、ソファで携帯をいじった。
30分くらいして、美春の得意料理、パエリアが食卓に並び、僕らは仕事の話やくだらない世間話をしながらそれを完食した。
「さて、お待ちかねのデザートです~!」
そう言ってやっと美春は紙袋から白い箱を取り出し、開封した。
甘い匂いがふわっと香った。
「これ、カヌレですか?」
「そ!今日家で焼いてきたの。冬雪くん甘党だって会社の人に聞いたから。」
「わあ、僕カヌレ大好きなんですよ!ありがとうございます。」
僕はカヌレをひとつつまんで口に運んだ。中から溢れ出すチョコレートが甘ったるくて最高だ。僕は思わず頬が緩んだ。それを眺めていた美春がくすくす笑った。僕は少し悔しくて、カヌレを美春の口に放り込んだ。
もごもごさせながら、お行儀が悪い。と僕に注意したが、その様子が、可愛くて僕は吹き出して笑ってしまった。
次の瞬間、僕の目の前で美春の頭部が舞い、飛んできた血飛沫で僕は目を閉じた。
その刹那に、夏実が美春の後ろでほくそ笑んでいるのが瞼の裏に焼き付いた。
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