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エピローグ
Ep-1
しおりを挟む私が吉野家に嫁いで五度目の春を迎えた。
桜はほとんど咲き終わり、緑色がチラチラと見えている。
うん、今日も良いお天気。
絶好の行楽日和だわ。
「ジェシカ、どうかしたか?」
「いえ、そろそろ桜も終わりだなぁって見てただけです」
「この辺で弁当を食べないか?」
「まま、おなかすいた~」
「お腹空いた? ママが作ったおにぎり食べる?」
「たべる」
和仁さんに抱っこされていた鏡花ちゃんは、ストンと降りると近くにあったベンチの方に駆け寄る。
「ここすわる」と言うと、和仁さんが抱き上げてベンチに座らせてあげた。
私も隣に座り、ウェットティッシュで小さなおててを拭いてからおにぎりを渡す。
「はい鏡花ちゃん、シャケおにぎりよ」
「いただきます」
「いただきますできて偉いわね~」
両手でおにぎりを持ってはむ、と食べる鏡花ちゃん。
ああ、なんてかわいいの。
ほっぺたにご飯つぶついてるところですら天使だわ。
「鏡花、ついてる」
私がうっとりしている間に和仁さんがご飯つぶを取ってくれた。
「ぱぱ、じーじとばーばは?」
「後から来るよ」
「あとっていつ?」
「夜かな」
「もおよる?」
「まだ昼」
お義父様とお義母様はどうしても外せない用事があって、後から合流することになっている。
せっかくの家族みんなでの旅行だから、鏡花ちゃんも待ち遠しいのね。
うちの子、本当にかわいい……。
私たちの愛娘、鏡花ちゃんは二歳になったばかり。
色白の肌、色素薄めのふわふわの髪にグレーの瞳というまごうことなき天使に成長した。
毎日成長していて発見の毎日だ。
組の中ではお嬢と呼ばれ、みんなにもかわいがってもらっている。
今は二泊三日の家族旅行でハイキングに来ているところ。
お天気が良くて気持ちが良い。
お弁当も張り切っていっぱい作ってしまった。
「鏡花ちゃん、まだ歩けるの?」
「あるける」
「すごい! 偉いわ、鏡花ちゃん」
お義母様が手作りしてくれたうさぎさんのリュックを背負い、よちよち歩く鏡花ちゃん。
後ろ姿もかわいい。
「鏡花、パパと手繋ぐぞ」
和仁さんが手を差し伸べるときゅっと握りしめるところもかわいい。
なんていうか、推しと推しのコラボを見ているような気持ちだわ……。
「えっ、あのお父さん超イケメン」
「そうなの? 娘さんしか見てなかった。おめめがすごく綺麗だった」
すれ違うハイキング客がそんな風に囁いていた。
そうなんです!
うちの旦那と娘、最高なんです!!
もう写真を撮る手が止まらない。
「……ジェシカ、何してる?」
思わず立ち止まって見惚れていたら、なかなか来ない私を和仁さんが呼びかけた。
「疲れたのか?」
「あっ違うの。推しの尊さを噛み締めていたところで……」
「推し?」
「まま!」
鏡花ちゃんは空いている方の手を差し伸べる。
すぐに理解した私は駆け寄って鏡花ちゃんの手を握りしめた。
「ごめんね、お待たせ」
「まま、おそい~」
「ごめん、ごめん」
「きょうか、かけっこいちばんだったの」
「すごいわ! 鏡花ちゃんは足が速いのね!」
私は運動がからっきしなんだけど、運動神経は和仁さんに似てくれたのかしら。
子どもの体力は底なしというけど、いつも元気に駆け回って千原さんたちをヘトヘトにしている。
かと思えば眠くなってしまったり。
「……ぱぱ、だっこ」
「おいで」
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