元魔王、救世主になる

えながゆうき

文字の大きさ
4 / 104

開拓村

しおりを挟む
 オッサンに肩を貸して進むこと小一時間。ようやく開拓村が見えて来た。道中の話によると、どうやら食料調達に来ていたらしい。開拓村の近くのモンスターは狩り尽くしてしまい、もはや遠出しなければまともに食料が得られないらしい。ダメじゃんこの地。そりゃ撤収を決めるわけだわ。

「あそこが開拓村だ。そういえば、レオは来たことがあるんだよな?」
「いや、初めてだ。どんな場所なのか楽しみだな」
「そうだったのか。開拓村に来る途中だったのか。この辺りには貴重な錬金術素材が見つかることがあるらしいからな。そういえば前に何度か錬金術師が来たことがあったな」

 遠くを見つめ、思い出すかのようにそう言っているところを見ると、その錬金術師が来たのはずいぶんと昔のことのようである。それだけ訪れる人が少なかったとなると、どうやらその貴重な錬金術素材とやらは大したことはなさそうだ。

 木の柵の間を抜けると、ヒゲもじゃのドワーフかと思わせるような人物がやってきた。一般的なドワーフよりも背が高いので、ドワーフではなく人間のようである。それにしてもそっくりだな。ドワーフと人間の間の子供かな?

「早かったな。もう戻って来たのか。ところで、その兄ちゃんは?」

 豊かなアゴのヒゲをなでながら尋ねて来た。その声色から、あまり歓迎はされていないようである。
 それもそうか。道中の話だと、食料に困りつつあるようだからな。これ以上の無駄な消費は避けたいのだろう。久しぶりの訪問者ともなれば、飲めや歌えのおもてなしが定番だからな。しかし、どうやらそれは期待できないようである。残念無念。

「ブラックベアーに襲われているところを助けてもらった錬金術師だ。この辺りに素材採集に来たらしい」
「ブラックベアーだと!? おい、その話は本当なのか?」

 ヒゲもじゃに肩を揺すられたオッサンがふらついた。その足下がおぼつかない様子に、ヒゲもじゃの男がビクッとなった。普段はこの程度で足下がフラフラすることはないのだろう。

「そのくらいにした方がいい。貧血で倒れるぞ」
「どういうことだ? ケガをしているようには見えないが……もしかしてその服についている血はお前のか!?」
「そうだ。彼が回復ポーション++を使ってくれなければ助からなかったかも知れない」
「回復ポーション++!? すみませんが、詳しいお話を聞かせてもらってもよろしいですか?」
「もちろんだ」

 ようやく目の前に偉大なる錬金術師がいることに気がついたようである。言葉遣いも丁寧なものへと変わっていた。そのまま俺たちは開拓村で一番大きな小屋へと連れて行かれる。

「私が村長です」

 どうやらこのヒゲもじゃのドワーフのような男が村長のようである。どうやらこの開拓村では村長自らが見回りをしているようだ。

「旅の錬金術師をやっている。ここへは素材を集めに来た」

 もちろんウソだが、バレなければそれは事実になる。こう言っておけば変な詮索をされないだろうというカビルンバの考えである。ブラックベアーが本当にいたことを示すべく、戦利品の「ブラックベアーの毛皮」を村長の目の前においた。
 すぐにそれが何なのか分かったのだろう。カッと目が見開かれた。

「これは間違いなくブラックベアーの毛皮……これがここにあるということは、倒したのですか?」
「もちろんだ。ブラックベアーなど、私の敵ではない」

 ゴクリ、と唾を飲み込む村長。お分かり頂けたかな? 村長よりも強いやつが目の前にいることに。先ほどの第一開拓村人と共に何があったのかを話した。村長はこの開拓村から一時間ほどの圏内にブラックベアーが生息していたことを聞いて青ざめている。どうやらこの村長の戦闘力はそれほど高くないようだ。

 それもそうか。この第一開拓村人はそれなりの戦闘力を持つからこそ、開拓村の外に狩りに出かけていたのだ。その強者がボコボコのけちょんけちょんにされて帰って来たのだ。「もうこの開拓村はダメだ、おしまいだ」と思っていても、何ら不思議ではない。

「大事な村民を助けて頂き、ありがとうございます。なんとお礼を申し上げたら良いのか。この開拓村は近いうちに廃村になります。それまででよろしければ、ゆっくりしていって下さい」

 村長、無念のリタイア宣言。どうやらブラックベアーによって完全に心が折れてしまったようである。村長がそれを村人に伝えると、村は少しだけ騒がしくなった。
 村人を助けたお礼はなかった。だがその代わりに、村長の家の空き部屋に泊まらせてもらうことができた。

「思ってたのと違う」
「何を言っているんですか。屋根付きの家に泊まれるだけありがたいと思わないと」
「こんなことなら家から出るんじゃなかった」
「あそこに引きこもっていたら、いずれ栄養不足で体を痛めることになりますよ」

 ダメだこの人、早く何とかしないと、みたいな感じで首を左右に振るカビルンバ。ちょっと傷ついたぞ。だがウジウジしていてもしょうがない。ここでできることをやらなくては。ウジウジするだけならイモムシでもできる。

「カビルンバ、これからどうする?」
「え、ボクに丸投げですか? そうですね、分かりました。レオ様に任せておいたら先に進みませんからね。むしろ後戻りすることになりかねない。……唇をかんでも無駄ですよ。事実ですから」

 カビルンバがひどい。かと言って良い案もない。ここはカビルンバに一任しよう。一流の人ほど、部下から学ぶことができるのだ。

「この辺りには錬金術の素材があるという話でしたね。まずはそれを探してみましょう。それが使える素材なら、それを元に新しい錬金術アイテムを作る。ある程度商品ができあがったら、隣の町へ向かいましょう」
「隣の町まではここから三日日ほどかかるんだったな。食べ物足りるかな?」
「徒歩ではそうですが、空を飛んで行くのでしょう? それならその日のうちにつきますよ」
「それは朗報だ。……別にこの村に来る必要はなかったんじゃ?」

 あ、カビルンバの目がつり上がっている。

「ボクが最初にそう言いましたよね? それを人に会う練習だとか言ってここに来ることを決めたのはどこのどなたでしたっけ?」

 そっと目をそらせておいた。あまりにも自然な動作だったから、カビルンバも見逃してくれるはずだ。魔王にだってうっかりミスはあるんだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

異世界で至った男は帰還したがファンタジーに巻き込まれていく

竹桜
ファンタジー
 神社のお参り帰りに異世界召喚に巻き込まれた主人公。  巻き込まれただけなのに、狂った姿を見たい為に何も無い真っ白な空間で閉じ込められる。  千年間も。  それなのに主人公は鍛錬をする。  1つのことだけを。  やがて、真っ白な空間から異世界に戻るが、その時に至っていたのだ。  これは異世界で至った男が帰還した現実世界でファンタジーに巻き込まれていく物語だ。  そして、主人公は至った力を存分に振るう。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

キモおじさんの正体は…

クラッベ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生し、ヒロインとなったナディア。 彼女はゲーム通りにいかない悪役令嬢のビビアンに濡れ衣を着せ、断罪イベントの発生を成功させる。 その後の悪役令嬢の末路は、ゲーム通りでは気持ち悪いおっさんに売られていくのを知っているナディアは、ざまぁみろと心の中で嘲笑っていた。 だけどこの時、この幸せが終わりを迎えることになるとは、ナディアは思っても見なかったのだ。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

処理中です...