元魔王、救世主になる

えながゆうき

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テイムかも知れない

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 ピタリと動かなくなったランドキングタートル。さてどうする?
 動かぬのなら 首をはねてしまえ ランドキングタートル。字余り。
 トドメを刺そうかと動き出すのと同時にカビルンバがそれを止めた。

「見て下さい、少しずつ縮んでいますよ!」
「そうか? 私にはサッパリ分からんが……まあそれは置いておいて、倒してしまった方が後の世のために良いのではないか?」

 うーん、と悩むカビルンバ。悩むと言うことは止める理由があるのだろう。今は脳内会議中かな? しばらく様子を見よう。お、確かに縮んでいるような気がする。その速度は加速度的に速くなっているようだ。

「倒すのは良くないかも知れません。そんなことをすればレオ様が勇者に崇め奉られることになりますよ」
「魔王が勇者になるとか、世も末だな」
「勇者っていう柄じゃないですからね」
「ウッセ」

 それじゃ様子をうかがうしかないな。無力化できればそれでよし。倒すのは最終手段だ。このサイズならフルバーストを使うまでもないだろう。それならば「魔王再臨!」にはならないはずだ。
 その代わりに「勇者再臨!」になりそうな気がするが。どっちもどっちだな。

 ランドキングタートルは固まった状態でどんどん小さくなり、今ではランドタートルよりも小さくなり、ただのタートルになりつつあった。

「どこまで縮むんですかね?」
「さあ? もしかすると、そのまま跡形もなく消えてしまうんじゃないのか。そうなると、私が倒したことになるのかな。それはそれでまずいぞ」

 ドキドキしながら観察していると、小亀ほどの大きさになったところで変化が止まった。そして首を持ち上げ、こちらを見上げた。

「仲間になりたそうにそちらを見ている」
「お前が言うな」
「何ですかこのしゃべる亀は?」
「しゃべるカビに言われたくないわ!」

 ぐぬぬとにらみ合う二人。俺から言わせてもらうとどっちもどっちなんだけどな。それを言えば火に油をそそぐことになりそうなので黙っておこう。沈黙は金だ。

「それで、何者なんだ?」
「ワシか? ワシはな、万年亀じゃ」

 どうだと言わんばかりに二本足で立ち上がった。うん、まあ、はい。どんな顔をすれば良いんだ?

「なるほど、鶴は千年亀は万年と言いますからね。ランドキングタートルなど、結局は人が付けた名前ですからね」

 納得したのかカビルンバがうなずいている。私は納得できないんですけど。モンスターは普通しゃべらないだろう? カビルンバみたいに。カビルンバみたいに……?

「万年亀はモンスターじゃないのか?」
「ワシをあやつらと一緒にするでない。あんな無意識に魔力を求めるだけの下等な生き物とは断じて違う」

 不快そうにしている。どうやら本気で嫌なようである。この話題は万年亀の前でしない方が良いな。

「それじゃ、カビルンバと同じく妖精の一種なのか。なるほどね」
「あれが妖精じゃと? 世も末じゃな」
「あなたに言われたくないですねー」

 あ、またカビルンバと亀がにらみ合っている。同族嫌悪かな? ならどちらも妖精だな。こんなところで亀の姿をした妖精に出会うとは。何の因果だ。
 もしかして妖精に好かれやすい体質なのかな? それはそれでちょっと微妙だぞ。あんまりうれしくない。どうせなら女の子にモテたかった。

「どうして人間がいる場所に向かっていたんだ?」
「む? ワシはまた人がいる場所へと向かっていたのか……」

 ますます小さくなった亀。申し訳なさそうである。思わずカビルンバと目を見合わせた。

「腹が減ってな、無意識に食べ物を求めていたようじゃ。人がいる場所にはたくさんの食べ物があるからな」
「まさか、人を食べていたのか?」
「違う違う! 人を食べても魔力を吸収することはできない。近くにいる人から少しずつ分けてもらっていたのじゃよ。そのためにはたくさんの人が必要になるのじゃ」
「実に迷惑極まりないな」

 モンスターと同じじゃん、と口から出そうになったのをグッと堪えた。偉い。

「その通りじゃ。だからなるべく動かないようにしておる。だがそれでもおなかはすくのでな」

 それで数千年に一度、大惨事が起こるのか。この選択が合っているのか、間違っているのか。判断がつかないな。

「それで、今は?」
「ワシの腹は満たされた。こんな晴れやかな気持ちは小亀のころ以来じゃ!」
「そりゃ、小亀になっていますからね」
「そう、それじゃ」

 ビシッと指を差す亀。小亀になったなら、これからはそれほど食料を必要としないだろう。これから数万年は人々は安心して暮らせるようになる。めでたしめでたし。

「見ての通り、ワシはなぜか小亀になってしまっておる。この姿ではモンスターに出会えば食べられてしまう。お主らはこんなかわいい小亀を見捨てて行くつもりなのか?」
「そんなこと言われても……」

 救いを求めてカビルンバを見た。カビルンバは先ほどから終始、眉間にシワを寄せている。

「別に救う義理はないですよね。むしろ、いなくなった方が今後のためにもいいかも……」
「お、鬼! 緑の悪魔!」

 ムッとするカビルンバ。どうやら鋼のメンタルでも、悪口を言われると気にしてしまうようである。しかし連れて行くと言ってもなぁ。

「亀の歩みでついてこられても困るんだけど」
「心配はいらん。このように空も飛べるぞ!」

 亀がフワリと浮かび上がった。なるほど。これなら移動に困ることはなさそうだ。だがしかし。

「それならモンスターから逃げられるんじゃないのか?」
「何をたわけたことを言っておる。これができるのはお前さんから魔力を分けてもらっておるからじゃよ」

 フォッフォッフォと笑う亀。この場に置き去りにして行こうかな。うん、それがいいかも知れない。クルリと亀に背を向ける。

「ま、待つのだ! 調子に乗りすぎました。正直、スマンかった。お前さんに見捨てられたらもう終わりなんじゃ、おしまいなんじゃー!」

 必死すぎる。何だかかわいそうになってきたぞ。カビルンバも両菌糸をあげているし、反対はしないと言うことなのだろう。それじゃ連れて行くか。亀一匹増えたくらい、どうにでもなるだろう。

「分かった。連れて行こう。それで、名前は?」
「ありがたや、ありがたや……名前は好きな名前をつけて構わんぞ」

 亀に拝まれる私。この光景はエレナ嬢には見せられないな。とても状況を説明できるとは思えない。名前か、そうだな。

「よし、それじゃ今日からお前の名前は『じいや』だ」
「え?」
「それじゃひとまず帰るとしよう。報告はしないといけないだろうからな」
「生き証人がいて良かったですね」

 ニッコリと笑うカビルンバ。説明する手間が省けて、実にうれしそうである。説明を求められても、私たちでは分からないからね。

「説明を頼んだぞ、じいや」
「か、かしこまりっ!」
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