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浸りすぎ!
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さてどうするか。このままバディア辺境伯邸に帰っても良いものか。子亀を連れて帰って来たら「お前、何しに行ったんだ?」って言われそうだ。
「どうしたんですか、レオ様?」
「カビルンバ、このまま帰ったらどう思われると思う?」
「そうですね、何しに行ったんだと思われるでしょうね」
「よし、亀は置いて行こう」
「お待ちあれ!」
じいやが必死の形相で目の前に飛んで来た。どうやら本気で危機感を抱いているようだ。
奇遇だな、私もだよ。亀のペットを増やして戻って来たら、正気を疑われることだろう。
「何が起こったのかはワシが話す。それでみんな納得してくれるはずだ」
「そうかなー? 子亀の話なんて、みんな真に受けるかな?」
「お任せあれ!」
不安だ。とても不安である。でもことの一部始終をバディア辺境伯に報告しておかないとまずいだろう。エレナ嬢も不安に思うだろうからね。また寝込まれたりしてはたまったものではない。せっかく元気になったのに。ちょっと元気が良すぎな気もするが。
「それじゃ、バディア辺境伯邸に戻るか。頼んだぞ、じいや。お前にすべてがかかっている」
「御意に」
本当に大丈夫かな? バディア辺境伯邸の玄関に向かう。出て行くときの騒々しさはなくなり、シンと静まり返っていた。どうやら兵士の出撃準備は完了しているようである。
実に頼もしい領軍を持っているな。だがその準備は無意味になってしまった。
「れ、レオニート様!」
「バディア辺境伯に報告があるんだが」
「み、皆様サロンに集まっております!」
うーん、どうやら私が騒動を解決するまで、サロンにとどまっていたようだ。何か悪いことしちゃったな。そのうち戻って来るから、自由に過ごして良いよと、一言、言うべきだったか。
サロンへと案内される。そこにはどこかで見たことがある人物が加わっていた。だれだっけ?
「レオ様、あれ、冒険者ギルドのギルド長ですよ」
「おお、そういえばそんな気がする」
ヒソヒソとカビルンバが私だけに聞こえるような声でささやいてきた。あの怖そうな顔、確かに酒場にいたような気がする。
「バディア辺境伯、ただいま戻りました」
その場がシンと静まり返る。そしてなぜかその場に立っているバディア辺境伯。その顔はちょっとほほの辺りがピクピクとしていた。
「う、うむ、良く無事で戻って来てくれた。それで、その、肩に乗っている亀は一体……?」
「ああ、これですか。これには深いわけが……」
私が紹介するよりも早く、じいやが前方のテーブルにスイーと音もなく飛んで行った。テーブルについているメンバーが目を大きくして、少しのけぞった。
そりゃそうだよね。空飛ぶ亀が音もなく近づいて来たら、恐怖を感じるよね。
「ワシは万年亀のじいやだ。あ、じいやと言う名前は主につけてもらった名前で、ワシがつけたわけじゃないぞ」
「主?」
「あちらがワシの主だ」
そう言ってじいやがこちらを腕指した。そういえば名前を名乗っていなかったな。うっかりしてた。
「私の名前はレオニートだ。こっちは相棒のカビルンバ」
「どうも、相棒のカビルンバです」
強調するかのようにカビルンバがそう言った。何となくだが、カビルンバがドヤ顔しているような気がする。じいやがぐぬぬみたいな顔になってる。ケンカは止めて二人を止めて。そんなことをしている場合じゃない。
「それではじいや殿はレオニート殿の……?」
「主の相方だ」
相棒と相方、さほど違いはないのだろうが、肩書きが被らなくて良かった。うまくすみ分けができていると思いたい。ここで突っ込んだら負けだ。
「それで、これは一体どう言うことなのだ?」
「そのことについてはワシから話そう」
じいやがこちらに目配せをして長い首を上下に一度だけ大きく振った。テーブルの上に降り立つじいや。私たちもテーブルに集まった。
「そう、あれはワシがまだ子亀のころ、この世界の大部分が海に……」
「浸りすぎ! かいつまんで、最近の出来事だけを話してくれ」
一体じいやはどの時代の話からするつもりだったんだ? まさかこの世界の創世の話から延々とするつもりだったんじゃないだろうな。
「主はせっかちだな。まあ良い。いずれ酒の席で昔話はするとしよう。ええと、どうやら空腹のあまり正気を失っていたようでな。この辺りにいる人間から魔力を分けてもらおうと思っていたようなのだよ」
「は、はあ」
困惑するバディア辺境伯。いや、バディア辺境伯だけじゃない。みんなが同じような顔をしている。ああもう、むちゃくちゃだよ。
「えっと、私たちがランドキングタートルと呼んでいたのはこのじいやなんですよ。モンスターではなく、妖精の一種のようです」
「な、なんだってー!」
バディア辺境伯とオババ、ギルド長の声が重なった。残りの二人は目を大きくしている。まあ驚くよね。あの化け物みたいな巨大亀がモンスターじゃなくて、妖精だなんて。世も末だと思うだろう。
「そ、それでは、ランドキングタートルは倒された、いや、元に戻ったのか?」
「それが、じいやの話によると、なぜか子亀になっていたようで、どうしてそうなったのかは不明です」
うん、結局私が説明しているし、何も分からないことだらけだな。じいやをここまで連れて来る必要はなかったな。あとで自然に帰しておこうかな。
「それでは、脅威は去ったのだな、レオニート殿?」
「ええと、恐らくそうだと思います。こちらに向かうランドキングタートルがいなくなったと言う点においてはですが」
「おおお! やったぞ!」
「なんと、やりおったか!」
そこからはギルド長を含めて大騒ぎになった。あとで聞いたところによると、ギルド長はダグラス・エンダーと言う名前らしい。深く関わることはないとは思うが、顔見知りになっておいて損はないだろう。何かあったときの火消し役くらいにはなってくれるはずだ。クックック。
「どうしたんですか、レオ様?」
「カビルンバ、このまま帰ったらどう思われると思う?」
「そうですね、何しに行ったんだと思われるでしょうね」
「よし、亀は置いて行こう」
「お待ちあれ!」
じいやが必死の形相で目の前に飛んで来た。どうやら本気で危機感を抱いているようだ。
奇遇だな、私もだよ。亀のペットを増やして戻って来たら、正気を疑われることだろう。
「何が起こったのかはワシが話す。それでみんな納得してくれるはずだ」
「そうかなー? 子亀の話なんて、みんな真に受けるかな?」
「お任せあれ!」
不安だ。とても不安である。でもことの一部始終をバディア辺境伯に報告しておかないとまずいだろう。エレナ嬢も不安に思うだろうからね。また寝込まれたりしてはたまったものではない。せっかく元気になったのに。ちょっと元気が良すぎな気もするが。
「それじゃ、バディア辺境伯邸に戻るか。頼んだぞ、じいや。お前にすべてがかかっている」
「御意に」
本当に大丈夫かな? バディア辺境伯邸の玄関に向かう。出て行くときの騒々しさはなくなり、シンと静まり返っていた。どうやら兵士の出撃準備は完了しているようである。
実に頼もしい領軍を持っているな。だがその準備は無意味になってしまった。
「れ、レオニート様!」
「バディア辺境伯に報告があるんだが」
「み、皆様サロンに集まっております!」
うーん、どうやら私が騒動を解決するまで、サロンにとどまっていたようだ。何か悪いことしちゃったな。そのうち戻って来るから、自由に過ごして良いよと、一言、言うべきだったか。
サロンへと案内される。そこにはどこかで見たことがある人物が加わっていた。だれだっけ?
「レオ様、あれ、冒険者ギルドのギルド長ですよ」
「おお、そういえばそんな気がする」
ヒソヒソとカビルンバが私だけに聞こえるような声でささやいてきた。あの怖そうな顔、確かに酒場にいたような気がする。
「バディア辺境伯、ただいま戻りました」
その場がシンと静まり返る。そしてなぜかその場に立っているバディア辺境伯。その顔はちょっとほほの辺りがピクピクとしていた。
「う、うむ、良く無事で戻って来てくれた。それで、その、肩に乗っている亀は一体……?」
「ああ、これですか。これには深いわけが……」
私が紹介するよりも早く、じいやが前方のテーブルにスイーと音もなく飛んで行った。テーブルについているメンバーが目を大きくして、少しのけぞった。
そりゃそうだよね。空飛ぶ亀が音もなく近づいて来たら、恐怖を感じるよね。
「ワシは万年亀のじいやだ。あ、じいやと言う名前は主につけてもらった名前で、ワシがつけたわけじゃないぞ」
「主?」
「あちらがワシの主だ」
そう言ってじいやがこちらを腕指した。そういえば名前を名乗っていなかったな。うっかりしてた。
「私の名前はレオニートだ。こっちは相棒のカビルンバ」
「どうも、相棒のカビルンバです」
強調するかのようにカビルンバがそう言った。何となくだが、カビルンバがドヤ顔しているような気がする。じいやがぐぬぬみたいな顔になってる。ケンカは止めて二人を止めて。そんなことをしている場合じゃない。
「それではじいや殿はレオニート殿の……?」
「主の相方だ」
相棒と相方、さほど違いはないのだろうが、肩書きが被らなくて良かった。うまくすみ分けができていると思いたい。ここで突っ込んだら負けだ。
「それで、これは一体どう言うことなのだ?」
「そのことについてはワシから話そう」
じいやがこちらに目配せをして長い首を上下に一度だけ大きく振った。テーブルの上に降り立つじいや。私たちもテーブルに集まった。
「そう、あれはワシがまだ子亀のころ、この世界の大部分が海に……」
「浸りすぎ! かいつまんで、最近の出来事だけを話してくれ」
一体じいやはどの時代の話からするつもりだったんだ? まさかこの世界の創世の話から延々とするつもりだったんじゃないだろうな。
「主はせっかちだな。まあ良い。いずれ酒の席で昔話はするとしよう。ええと、どうやら空腹のあまり正気を失っていたようでな。この辺りにいる人間から魔力を分けてもらおうと思っていたようなのだよ」
「は、はあ」
困惑するバディア辺境伯。いや、バディア辺境伯だけじゃない。みんなが同じような顔をしている。ああもう、むちゃくちゃだよ。
「えっと、私たちがランドキングタートルと呼んでいたのはこのじいやなんですよ。モンスターではなく、妖精の一種のようです」
「な、なんだってー!」
バディア辺境伯とオババ、ギルド長の声が重なった。残りの二人は目を大きくしている。まあ驚くよね。あの化け物みたいな巨大亀がモンスターじゃなくて、妖精だなんて。世も末だと思うだろう。
「そ、それでは、ランドキングタートルは倒された、いや、元に戻ったのか?」
「それが、じいやの話によると、なぜか子亀になっていたようで、どうしてそうなったのかは不明です」
うん、結局私が説明しているし、何も分からないことだらけだな。じいやをここまで連れて来る必要はなかったな。あとで自然に帰しておこうかな。
「それでは、脅威は去ったのだな、レオニート殿?」
「ええと、恐らくそうだと思います。こちらに向かうランドキングタートルがいなくなったと言う点においてはですが」
「おおお! やったぞ!」
「なんと、やりおったか!」
そこからはギルド長を含めて大騒ぎになった。あとで聞いたところによると、ギルド長はダグラス・エンダーと言う名前らしい。深く関わることはないとは思うが、顔見知りになっておいて損はないだろう。何かあったときの火消し役くらいにはなってくれるはずだ。クックック。
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