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世界樹の秘密
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改めてミューが持って来た資料を確認する。確かに百年くらい前から徐々に葉の数が減っているようだ。百年よりほんの少しだけ前。勇者がこの世界に召喚されたのと、ほぼ同時期である。
もしかして何か関係があるのかな?
「ミュー、世界樹が生長するのに必要な条件はなんだ?」
「えっと、たぶん他の植物と同じように光と水ッス」
「本当にそれだけなのか?」
問い詰めると、腕に絡みついているミューが眉間にシワを寄せて考え込んでいる。この感じだと、それ以外の要素について考えたことはないようである。それにしても、思ったよりも胸が大きいな。ミューは着痩せするタイプだった?
「それだけだと思うッス。世界樹は地面がなくても育つッスから。これは長年の研究で明らかになってるッス」
「ほう」
すごいな、世界樹。大地の栄養がなくても育つことができるのか。あの他の追随を許さない巨大な体は、他の植物とは違う要因で構成されているようだ。
だがそうなると、ますます光と水だけであの大きさになったのかが気になるな。
「ミューさん、どうしてそのような研究を行ったのですか。もしかして、世界樹を増やすためですか?」
「その通りッス! 世界樹から採れる素材は高値で売れるッス。でもみんなはこの世界樹を傷つけたくないと思ってるッス。それで別のルートから世界樹の素材を入手しようと考えたッス」
「なるほど。それで、世界樹を増やすのには成功したのですか?」
カビルンバの質問に、ミューが首を振って答えた。どうやら世界樹を増やすのはかなり難しい研究のようである。どうやらミューはその研究をしているようだな。そしてその過程で世界樹が枯れている現実を知った。
「ミュー、世界樹が枯れ始めている話は他のエルフも知っているのか?」
「いや、上層部の一部だけッス」
「大騒ぎになる前に、なんとか原因を突き止めるしかないな。その世界樹を増やしているところを見学することはできないか? もしかすると、何か分かるかも知れない」
「分かったッス。部外者は立ち入り禁止の区画ッスが、魔王様なら大丈夫ッス」
ミューが胸を張った。ミューの権力と言うより、魔王の権力で押し通すつもりのようである。良いのか、悪いのか。職員にはあとで口止めしておこう。ソフィアの名前も出せば間違いなく黙っていてくれるはずだ。
さっそく研究室へと向かった。資料だけでは世界樹の葉っぱが減っていることしか分からない。あのまま考えていても良い考えは浮かばないだろう。
「ここがそうッス」
「ほほう、なかなか広い部屋だな。光は窓から入ってくるようになっているのか。今さらだが、世界樹に穴を開けても大丈夫なのか?」
「大丈夫ッス。もう役目を終えた部分をくりぬいてるッス。この窓は……ちょっとくらいなら大丈夫ッス!」
本当かなぁ。まあ、それほど大きな穴ではないし、大丈夫なのだろう。元がとんでもなく大きいからね。
部屋の中には十株ほどの苗木が天井からつるされている。本当に土は必要ないみたいである。
「見た感じ、ちゃんと育っているように見えるんだが」
「そうでもないッスよ。もう何十年もこの大きさのままッス」
「なるほど。まるで生長していないと言うことか」
どれも同じくらいの大きさで生長が止まっているようだ。間違いなく何かしらの要素が足りないのだろう。それなら土に植えてみたら、と思ったのだが、それを言う前に次の部屋に案内された。
その部屋では土の上に世界樹が植えられていた。だがしかし、それらも先ほど見たものと同じ程度までしか育っていなかった。なるほど、確かにこれなら土は生育に影響しないと言えるな。
「この大きさに何か意味があるんですかね?」
「単純に、生長するための何かしらの要素が足りないんだろう。外で育ててはいないのか?」
「さすがにそれは無理ッス。世界樹の株を持ち出すなんて、とんでもない」
それもそうか。エルフの管理が届かない場所で世界樹が大きくなったら、大問題になるだろう。それこそ、国同士が争いごとを起こしかねない。
可能性の一つとして、こうして室内で育てているからこれ以上生育しないということが考えられるが、それでも同じ大きさまでしか育たないのは不思議である。
「何が要因なんだろうな? んん?」
「どうしたのですか、レオ様? 変な声を出して」
「ああ、この部屋、大気中の魔力の量が極端に少ないなと思ってね」
「魔力の量?」
ミューが不思議そうな顔をしている。周辺の魔力が見えるのは、魔族の中でもごく一部の人たちだけである。当然、私は見ることができる。何か変わったところはないかと室内を調べていたら偶然、発見したのだ。
「うーん、もしかして世界樹が魔力を吸い取っているのでしょうか?」
カビルンバが菌糸を組んだ。なるほど、だからこの辺りは漂っている魔力の量が少ないのか。それなら納得できるな。それを聞いたミューの表情が極めて真面目なものになっていた。
「ダーリン、それ、マジバナッスか?」
「マジッス。これマジッス」
それを聞いたミューがものすごい勢いで部屋から出て行った。あ、ちょっと、こんなところで置いて行かれても困るんですけど……。
「どうする、カビルンバ?」
「そのうち戻って来るでしょう。それまで、魔力量についての検証を行っておきましょう。この部屋だけ、魔力が少ないのですか?」
カビルンバに言われて、世界樹の中を改めて確認する。うむ、この部屋だけじゃないな。全部の部屋で魔力が少なくなっている。もしかすると、外の魔力量も少ないのかも知れない。
部屋の窓から外を観察する。どうやら外は問題ないみたいである。
「世界樹の中だけだな。外はいつも通りのような気がする」
「なるほど。それなら世界樹が魔力を吸い取っている可能性がありますね」
「もしかして、世界樹が生長するには魔力が必要なのか?」
目の前の大きくなれない世界樹の若木を二人で見つめた。
もしかして何か関係があるのかな?
「ミュー、世界樹が生長するのに必要な条件はなんだ?」
「えっと、たぶん他の植物と同じように光と水ッス」
「本当にそれだけなのか?」
問い詰めると、腕に絡みついているミューが眉間にシワを寄せて考え込んでいる。この感じだと、それ以外の要素について考えたことはないようである。それにしても、思ったよりも胸が大きいな。ミューは着痩せするタイプだった?
「それだけだと思うッス。世界樹は地面がなくても育つッスから。これは長年の研究で明らかになってるッス」
「ほう」
すごいな、世界樹。大地の栄養がなくても育つことができるのか。あの他の追随を許さない巨大な体は、他の植物とは違う要因で構成されているようだ。
だがそうなると、ますます光と水だけであの大きさになったのかが気になるな。
「ミューさん、どうしてそのような研究を行ったのですか。もしかして、世界樹を増やすためですか?」
「その通りッス! 世界樹から採れる素材は高値で売れるッス。でもみんなはこの世界樹を傷つけたくないと思ってるッス。それで別のルートから世界樹の素材を入手しようと考えたッス」
「なるほど。それで、世界樹を増やすのには成功したのですか?」
カビルンバの質問に、ミューが首を振って答えた。どうやら世界樹を増やすのはかなり難しい研究のようである。どうやらミューはその研究をしているようだな。そしてその過程で世界樹が枯れている現実を知った。
「ミュー、世界樹が枯れ始めている話は他のエルフも知っているのか?」
「いや、上層部の一部だけッス」
「大騒ぎになる前に、なんとか原因を突き止めるしかないな。その世界樹を増やしているところを見学することはできないか? もしかすると、何か分かるかも知れない」
「分かったッス。部外者は立ち入り禁止の区画ッスが、魔王様なら大丈夫ッス」
ミューが胸を張った。ミューの権力と言うより、魔王の権力で押し通すつもりのようである。良いのか、悪いのか。職員にはあとで口止めしておこう。ソフィアの名前も出せば間違いなく黙っていてくれるはずだ。
さっそく研究室へと向かった。資料だけでは世界樹の葉っぱが減っていることしか分からない。あのまま考えていても良い考えは浮かばないだろう。
「ここがそうッス」
「ほほう、なかなか広い部屋だな。光は窓から入ってくるようになっているのか。今さらだが、世界樹に穴を開けても大丈夫なのか?」
「大丈夫ッス。もう役目を終えた部分をくりぬいてるッス。この窓は……ちょっとくらいなら大丈夫ッス!」
本当かなぁ。まあ、それほど大きな穴ではないし、大丈夫なのだろう。元がとんでもなく大きいからね。
部屋の中には十株ほどの苗木が天井からつるされている。本当に土は必要ないみたいである。
「見た感じ、ちゃんと育っているように見えるんだが」
「そうでもないッスよ。もう何十年もこの大きさのままッス」
「なるほど。まるで生長していないと言うことか」
どれも同じくらいの大きさで生長が止まっているようだ。間違いなく何かしらの要素が足りないのだろう。それなら土に植えてみたら、と思ったのだが、それを言う前に次の部屋に案内された。
その部屋では土の上に世界樹が植えられていた。だがしかし、それらも先ほど見たものと同じ程度までしか育っていなかった。なるほど、確かにこれなら土は生育に影響しないと言えるな。
「この大きさに何か意味があるんですかね?」
「単純に、生長するための何かしらの要素が足りないんだろう。外で育ててはいないのか?」
「さすがにそれは無理ッス。世界樹の株を持ち出すなんて、とんでもない」
それもそうか。エルフの管理が届かない場所で世界樹が大きくなったら、大問題になるだろう。それこそ、国同士が争いごとを起こしかねない。
可能性の一つとして、こうして室内で育てているからこれ以上生育しないということが考えられるが、それでも同じ大きさまでしか育たないのは不思議である。
「何が要因なんだろうな? んん?」
「どうしたのですか、レオ様? 変な声を出して」
「ああ、この部屋、大気中の魔力の量が極端に少ないなと思ってね」
「魔力の量?」
ミューが不思議そうな顔をしている。周辺の魔力が見えるのは、魔族の中でもごく一部の人たちだけである。当然、私は見ることができる。何か変わったところはないかと室内を調べていたら偶然、発見したのだ。
「うーん、もしかして世界樹が魔力を吸い取っているのでしょうか?」
カビルンバが菌糸を組んだ。なるほど、だからこの辺りは漂っている魔力の量が少ないのか。それなら納得できるな。それを聞いたミューの表情が極めて真面目なものになっていた。
「ダーリン、それ、マジバナッスか?」
「マジッス。これマジッス」
それを聞いたミューがものすごい勢いで部屋から出て行った。あ、ちょっと、こんなところで置いて行かれても困るんですけど……。
「どうする、カビルンバ?」
「そのうち戻って来るでしょう。それまで、魔力量についての検証を行っておきましょう。この部屋だけ、魔力が少ないのですか?」
カビルンバに言われて、世界樹の中を改めて確認する。うむ、この部屋だけじゃないな。全部の部屋で魔力が少なくなっている。もしかすると、外の魔力量も少ないのかも知れない。
部屋の窓から外を観察する。どうやら外は問題ないみたいである。
「世界樹の中だけだな。外はいつも通りのような気がする」
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目の前の大きくなれない世界樹の若木を二人で見つめた。
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