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へし折れ! 破滅フラグ②
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「モニカは本当に魔法の才能がありますね。モニカの婚約者として、とても誇らしく思いますよ」
そうなのだ。モニカは俺と同じくらいの魔法スペックを持っていたのだ。
恐らく悪役令嬢としてのモニカは、ゲームの中ではプレイヤーが直接操作することはできないはずだ。そのため、実際にどれほどの力を持っているのかは未知数のはずである。
だが、公式の設定としては、主人公のライバルキャラに相応しい能力が与えられているのだろう。
この手のゲームはライバルキャラが残念設定であることもあるが、どうやらゲームの中のモニカ嬢はチート能力を与えられているようである。
まあ、そこそこ大きなキリエの森を消滅させるくらいだからね。さもありなん。
「そんなことはありませんわ。レオ様の教え方が上手なだけですわ。ありがとうございます、レオ様」
ちょっぴり恐縮しながら、モニカが頬を薄紅色に染めた可愛い笑顔を向けてくれた。
うん、やっぱりモニカには笑顔が似合っている。惚れてしまったやろー!
モニカの両親からはありがとうの手紙が届いていた。レオンハルト殿下の教えのお陰で、モニカが魔法を使えるようになった、とても喜ばしいと、これからもモニカをよろしくお願いしますと。もちろんですとも!
「それにしても、教えた生活魔法を全て使えるようになるとは思ってもみませんでしたよ。大抵の人は得意、不得意の関係で、良くて五、六個くらいまでしか使えませんからね」
モニカは洗濯や掃除だけでなく、収納魔法や転移魔法などのレアな魔法も使えるようになっていた。もちろん俺も使えるので、このレオンハルトというキャラクターも大概チートのようだ。
これだけチート能力をモニカが持っているなら、もしかしたらアレもいけるかも知れない。
もしそうなれば、モニカの悪役令嬢破滅フラグを折ることができる可能性が浮上する。
やってみる価値はあるな。
「モニカ、次は癒やしの魔法を覚えてみませんか?」
「え? 癒やしの魔法、ですか?」
キョトンとしているモニカの表情も凄くイイ。
思わず蕩けそうになる顔を抑えて、真面目な顔を作った。
「そうです。癒やしの魔法です。誰でも使える魔法ではないため、とても貴重な魔法で、とても必要とされる魔法です。モニカの魔法の才能があれば、きっと使うことができるはずです。モニカが癒やしの魔法を使えるようになれば、それが国にもたらす恩恵は計り知れません。どうですか? 一緒にやってみませんか?」
「この国のために……分かりました。やってみますわ」
そうこなくっちゃ! フフフ、見てろよ破滅フラグ、今へし折ってやるぞ。震えて待っていろ。
モニカの元々持っていた性格なのだろう。癒やしの魔法とモニカはとても相性が良かった。
まるでスポンジのように癒やしの魔法をどんどん吸収していくモニカ。城の治癒士達も大変驚いていた。
癒やしの魔法には才能の他に、使う側の人間性が大きく問われるという、かなり特殊な魔法だった。
そのため、魔法の才能があっても、癒やしの魔法が使える人はほとんどいなかった。
求められる人間性はズバリ「慈愛の心」を持っているかどうか。
これが簡単そうでとても難しいのだ。
心の奥底に黒いモノがいつしか溜まっていくのが人間という生き物だ。
それをほぼゼロのまま保つというのは、それだけで称賛に値するものだと俺は思っている。
癒やしの魔法を使うにはそれが必要だった。だからこそ、使える人が少なく、貴重な魔法なのだ。
ということは、それを難なく使うことができる俺は、大変、心が清らかな存在というわけで……ないな、ない。俺が癒やしの魔法を使えるのは公式チートだからだ。以上。
現在、この国には大きな戦争などは起こってはいないが、周辺の森や山や草原には魔物がまだまだ潜んでおり、その魔物を退治するために駆り出される兵士達は、当然怪我も病気もする。
そのような、日夜危険と隣り合わせになっている人達にとって、癒やし手というのは大変ありがたい存在であり、文字通り癒やしの存在であった。
癒やしの魔法を覚えモニカは、当然その癒やしの存在になっていった。
俺は積極的にモニカを兵士達が多く集まる宿舎や治癒院へと連れ出し、モニカを怪我や病気、呪いの解除や毒・麻痺・石化などの治療にあたらせた。
モニカの魔力量は相当のものであり、他の魔法使いが驚愕するほどの持続力を持っていた。
大きな怪我もたちどころに治していくモニカは、瞬く間に兵士達の支持を集め、聖女と呼ばれるようになるまでには、そんなに時間はかからなかった。
そんなある日、モニカは遂に国王陛下に呼び出された。
「れ、レオ様、私、何かやってしまいましたか?」
突然の呼び出しにオロオロするモニカの頭を俺は優しく撫でた。
「大丈夫ですよ。モニカに何か罰を与えようというわけではありませんよ。モニカが何か悪いことをしたわけではないでしょう?」
「それはそうですけど、呼び出されるようなことをした覚えもありませんわ」
不安そうに顔をしかめるモニカ。
ここで国王陛下が呼び出した理由を言ってもいいが、イタズラ心に火がついた俺はもう少しだけ黙っておくことにした。
「大丈夫ですよ。国王陛下に呼ばれたのはモニカだけではありません。モニカのご両親も来ているのでしょう? 私も参列するように言われていますので、モニカの隣には立てませんが、国王陛下の隣にいますよ」
ニッコリと微笑む俺を見て、更に訝しむモニカ。
本当に何のことだか気がついていないようだ。
この鈍感なところはゲーム補正なのか、素なのかは分からないが、そこも含めてモニカの可愛いところだと思う。
そうこうしていると、準備ができたと使用人達が迎えに来た。不安を抱えたままモニカは使用人に連れられて行った。
ここはお城の謁見の間。そこには多くの貴族達が新しい聖女の誕生を祝うために集まっていた。その顔のどれもが、大変誇らしげな顔をしていた。
聖女と呼ばれる人物がこの国からいなくなって久しい。そのため、この国の誰もが新しい聖女を待ち望んでいたのだ。
玉座には国王陛下が座り、その左右に俺と王妃殿下が座っている。目の前にはふかふかの深紅の絨毯が向かい側の扉まで続いていた。
その絨毯の左右には、今や遅しと貴族達が立ち並んでいる。当然、モニカの両親であるカタルーニャ公爵夫妻の姿もあった。
式典を統括している宰相から、モニカ令嬢の名前が読み上げられると、豪華な装飾を施された扉が開き、モニカ公爵令嬢が現れた。
左右に並んだ貴族達の間を、緊張のあまり引きつった微笑みを貼り付けたモニカが静々と進み、国王陛下の前で頭を垂れた。
「モニカ、面を上げよ」
国王陛下の威厳のある言葉に、震えるようにモニカが顔を上げた。
うん、これ、事前にモニカに聖女認定の式典であることを言っておかなければならなかったね。
お母様が今、チラリと俺の方を見て、「お前言ってないのかよ」というアイコンタクトを送ってきた。ゾクゾクするね。
「モニカ公爵令嬢、これまでそなたが行ってきた数々の慈愛に満ちた行為を称え、ここに聖女として認定する」
国王陛下の言葉が終わると同時に、はち切れんばかりの拍手が謁見の間に鳴り響いた。
もちろん俺も、王妃殿下も惜しげもない拍手を送った。
こうしてモニカは正式に、このガレリア王国の聖女として認定されたのであった。
式典の後は、お城のバルコニーに出て、国民達に手を振ることも忘れなかった。
俺は当然のようにモニカの隣に立ち、モニカと一緒に笑顔で手を振った。
モニカの顔には、終始笑顔が貼り付いたままだった。
そうなのだ。モニカは俺と同じくらいの魔法スペックを持っていたのだ。
恐らく悪役令嬢としてのモニカは、ゲームの中ではプレイヤーが直接操作することはできないはずだ。そのため、実際にどれほどの力を持っているのかは未知数のはずである。
だが、公式の設定としては、主人公のライバルキャラに相応しい能力が与えられているのだろう。
この手のゲームはライバルキャラが残念設定であることもあるが、どうやらゲームの中のモニカ嬢はチート能力を与えられているようである。
まあ、そこそこ大きなキリエの森を消滅させるくらいだからね。さもありなん。
「そんなことはありませんわ。レオ様の教え方が上手なだけですわ。ありがとうございます、レオ様」
ちょっぴり恐縮しながら、モニカが頬を薄紅色に染めた可愛い笑顔を向けてくれた。
うん、やっぱりモニカには笑顔が似合っている。惚れてしまったやろー!
モニカの両親からはありがとうの手紙が届いていた。レオンハルト殿下の教えのお陰で、モニカが魔法を使えるようになった、とても喜ばしいと、これからもモニカをよろしくお願いしますと。もちろんですとも!
「それにしても、教えた生活魔法を全て使えるようになるとは思ってもみませんでしたよ。大抵の人は得意、不得意の関係で、良くて五、六個くらいまでしか使えませんからね」
モニカは洗濯や掃除だけでなく、収納魔法や転移魔法などのレアな魔法も使えるようになっていた。もちろん俺も使えるので、このレオンハルトというキャラクターも大概チートのようだ。
これだけチート能力をモニカが持っているなら、もしかしたらアレもいけるかも知れない。
もしそうなれば、モニカの悪役令嬢破滅フラグを折ることができる可能性が浮上する。
やってみる価値はあるな。
「モニカ、次は癒やしの魔法を覚えてみませんか?」
「え? 癒やしの魔法、ですか?」
キョトンとしているモニカの表情も凄くイイ。
思わず蕩けそうになる顔を抑えて、真面目な顔を作った。
「そうです。癒やしの魔法です。誰でも使える魔法ではないため、とても貴重な魔法で、とても必要とされる魔法です。モニカの魔法の才能があれば、きっと使うことができるはずです。モニカが癒やしの魔法を使えるようになれば、それが国にもたらす恩恵は計り知れません。どうですか? 一緒にやってみませんか?」
「この国のために……分かりました。やってみますわ」
そうこなくっちゃ! フフフ、見てろよ破滅フラグ、今へし折ってやるぞ。震えて待っていろ。
モニカの元々持っていた性格なのだろう。癒やしの魔法とモニカはとても相性が良かった。
まるでスポンジのように癒やしの魔法をどんどん吸収していくモニカ。城の治癒士達も大変驚いていた。
癒やしの魔法には才能の他に、使う側の人間性が大きく問われるという、かなり特殊な魔法だった。
そのため、魔法の才能があっても、癒やしの魔法が使える人はほとんどいなかった。
求められる人間性はズバリ「慈愛の心」を持っているかどうか。
これが簡単そうでとても難しいのだ。
心の奥底に黒いモノがいつしか溜まっていくのが人間という生き物だ。
それをほぼゼロのまま保つというのは、それだけで称賛に値するものだと俺は思っている。
癒やしの魔法を使うにはそれが必要だった。だからこそ、使える人が少なく、貴重な魔法なのだ。
ということは、それを難なく使うことができる俺は、大変、心が清らかな存在というわけで……ないな、ない。俺が癒やしの魔法を使えるのは公式チートだからだ。以上。
現在、この国には大きな戦争などは起こってはいないが、周辺の森や山や草原には魔物がまだまだ潜んでおり、その魔物を退治するために駆り出される兵士達は、当然怪我も病気もする。
そのような、日夜危険と隣り合わせになっている人達にとって、癒やし手というのは大変ありがたい存在であり、文字通り癒やしの存在であった。
癒やしの魔法を覚えモニカは、当然その癒やしの存在になっていった。
俺は積極的にモニカを兵士達が多く集まる宿舎や治癒院へと連れ出し、モニカを怪我や病気、呪いの解除や毒・麻痺・石化などの治療にあたらせた。
モニカの魔力量は相当のものであり、他の魔法使いが驚愕するほどの持続力を持っていた。
大きな怪我もたちどころに治していくモニカは、瞬く間に兵士達の支持を集め、聖女と呼ばれるようになるまでには、そんなに時間はかからなかった。
そんなある日、モニカは遂に国王陛下に呼び出された。
「れ、レオ様、私、何かやってしまいましたか?」
突然の呼び出しにオロオロするモニカの頭を俺は優しく撫でた。
「大丈夫ですよ。モニカに何か罰を与えようというわけではありませんよ。モニカが何か悪いことをしたわけではないでしょう?」
「それはそうですけど、呼び出されるようなことをした覚えもありませんわ」
不安そうに顔をしかめるモニカ。
ここで国王陛下が呼び出した理由を言ってもいいが、イタズラ心に火がついた俺はもう少しだけ黙っておくことにした。
「大丈夫ですよ。国王陛下に呼ばれたのはモニカだけではありません。モニカのご両親も来ているのでしょう? 私も参列するように言われていますので、モニカの隣には立てませんが、国王陛下の隣にいますよ」
ニッコリと微笑む俺を見て、更に訝しむモニカ。
本当に何のことだか気がついていないようだ。
この鈍感なところはゲーム補正なのか、素なのかは分からないが、そこも含めてモニカの可愛いところだと思う。
そうこうしていると、準備ができたと使用人達が迎えに来た。不安を抱えたままモニカは使用人に連れられて行った。
ここはお城の謁見の間。そこには多くの貴族達が新しい聖女の誕生を祝うために集まっていた。その顔のどれもが、大変誇らしげな顔をしていた。
聖女と呼ばれる人物がこの国からいなくなって久しい。そのため、この国の誰もが新しい聖女を待ち望んでいたのだ。
玉座には国王陛下が座り、その左右に俺と王妃殿下が座っている。目の前にはふかふかの深紅の絨毯が向かい側の扉まで続いていた。
その絨毯の左右には、今や遅しと貴族達が立ち並んでいる。当然、モニカの両親であるカタルーニャ公爵夫妻の姿もあった。
式典を統括している宰相から、モニカ令嬢の名前が読み上げられると、豪華な装飾を施された扉が開き、モニカ公爵令嬢が現れた。
左右に並んだ貴族達の間を、緊張のあまり引きつった微笑みを貼り付けたモニカが静々と進み、国王陛下の前で頭を垂れた。
「モニカ、面を上げよ」
国王陛下の威厳のある言葉に、震えるようにモニカが顔を上げた。
うん、これ、事前にモニカに聖女認定の式典であることを言っておかなければならなかったね。
お母様が今、チラリと俺の方を見て、「お前言ってないのかよ」というアイコンタクトを送ってきた。ゾクゾクするね。
「モニカ公爵令嬢、これまでそなたが行ってきた数々の慈愛に満ちた行為を称え、ここに聖女として認定する」
国王陛下の言葉が終わると同時に、はち切れんばかりの拍手が謁見の間に鳴り響いた。
もちろん俺も、王妃殿下も惜しげもない拍手を送った。
こうしてモニカは正式に、このガレリア王国の聖女として認定されたのであった。
式典の後は、お城のバルコニーに出て、国民達に手を振ることも忘れなかった。
俺は当然のようにモニカの隣に立ち、モニカと一緒に笑顔で手を振った。
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