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アジト①
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ダンジョンの消滅により、キリエの森から魔物は姿を消していった。
その報告を受けた国王陛下は首を傾げていたが、俺達はそろって素知らぬ顔をしておいた。
そのかいあってか、今のところはダンジョンのことはバレていない。もしバレるとするならばモニカからだろう。あの子は何かをやらかすタイプだからね。
魔物の驚異が消えたことで、キリエの森を訪れる人は多くなった。
キリエの森には、王都で失われつつある手付かずの自然がまだまだたくさん残っている場所だ。薬の材料になる貴重な資源もたくさんあるため、それらを求めて人々が森を訪れているのだ。
もちろん、材料集めが目的ではなく、単に自然を満喫したいと思っている少し疲れた人達も訪れている。
そうなってくると、お金に目敏い商人達がこぞって森の整備を始めた。
そのため、今では森に幾つもの散策ルートが出来上がっていた。
もちろんその散策ルートは俺達も利用していた。
通行料はとられるが、良く整備されており、自然を損なわないような配慮がなされている。歩くだけで心が清らかになる感じがする素晴らしい散策ルートもあった。
だが、そのように利用されるのは森の一部だけであり、多くの場所は未だに人が来ることのない未開の地であった。
いつの頃からか、その未開の地に盗賊が住むようになっていた。
もちろん、盗賊の狙いは森の恵みを採りに来た人達であり、自警団や騎士団にも度々被害の報告が上がるようになっていた。
しかし、キリエの森は広い。定期的に掃除はするものの、全員を捕まえることはできず、だからと言って毎日掃除するわけにもいかず、いたちごっこが続いていた。
「レオンハルト殿下、最近は特に盗賊の被害が増えているみたいですね。もしかしたら、盗賊団が出来上がって、アジトを築いているかも知れません」
「盗賊団か。もしそうなら、見過ごせないね」
宰相の息子のアルフレッドが最近の情勢を俺達に報告した。
ここはお城の少し奥まったところにある中庭だ。
警備が薄いということもなく、かと言って人が多いわけでもない、みんなと集まって話すにはちょうど良い場所だった。
冒険者パーティーを組んで以降、俺達は定期的にこのように集まって、情報交換や最近の出来事を話すティータイムを作っていた。
「ピーちゃん様のお力を借りれば、すぐに盗賊達を見つけることができるのではないでしょうか?」
「そうかも知れないね。でも、ブルックリンも生命感知魔法を使えるようになったんだろう? 試してみたいんじゃないの?」
「確かにそうですが、まだまだ精度が甘くて、研鑽する毎日ですよ」
魔法に関してブルックリンは本当に余念がない。常に向上心を忘れずに毎日努力しているようだ。
それでも実践に勝る経験はないようであり、いまいち感覚がつかめていないようであった。
「私達だけで盗賊団を調査するのは無理かも知れないけど、騎士団つきなら許可をもらえるかも知れない。国王陛下に打診してみるよ」
やったぁと、モニカとギルバードとブルックリンから声が上がる。
ダンジョンを潰して以降、キリエの森に魔力溜まりはなくなり、俺達パーティーの出番もなくなっていた。
そこにようやく出番が来たのだ。喜びの声くらい上がるのは仕方がないのかも知れない。
後日、国王陛下に相談して、何とか騎士団つきで許可をとることができた。
森への盗賊団調査当日。俺達は城の裏手にある騎士団専用の馬止めに集合していた。
「なかなかの人数ですね」
「30人規模の小隊になるそうだよ。俺達は先頭集団について行き、指示を出す側にまわることにしよう」
ギルと話しているとモニカもやってきた。隣にはサラもいる。
「レオ様、私も一緒に先頭集団について行きますわ」
「モニカ、危険なんじゃない?」
フッフッフ、とモニカが笑う。まあ、サラがいる時点で危険などないのだけれどね。
「私も生命感知魔法を使えるようになりましたのよ!」
どうだとばかりに胸を張るモニカ。
最近は特に発育が良くなり、たわわに実りつつある胸が大きく揺れた。
それを見たギルは、悪いと思ったのか、慌てて目を反らした。
いい心構えだ、ギル。俺はしっかり見させてもらうけどね。
「分かりました。それではモニカも一緒に行きましょう」
俺達は先頭集団の馬車に乗り、キリエの森へと向かった。
森に着くとすぐに装備のチェックを行う。
それぞれが準備を完了したのを確認し、いつでも出撃できる体制が整った。
「皇太子殿下、どちらの方向に進みましょうか?」
騎士団を率いている兵長が尋ねてきた。
「そうだな、モニカ、ブルック、生命感知魔法の結果はどうなっている?」
それを聞いた兵長は驚いた様子だった。
生命感知魔法はまだ一般的には知られていない魔法である。噂くらいにしか聞いたことがなかったのだろう。
モニカとブルックはそれぞれが得られた情報をしばらく照らし合わせてから、答えを出した。
「レオ様、あちらの方角に多くの反応がありますわ」
モニカがその方向を指差した。その方角を地図で確認していた騎士達は一つの可能性を示唆した。
「そちらの方角には湖がありますね。ひょっとしたら、盗賊達のアジトがその近くにあるのかも知れません」
「なるほど、それじゃあ、その方角に行くとしよう。モニカとブルックは交代で生命感知魔法を使って欲しい。アジトがあるなら当然見張りや見回りがいるだろうからね。そいつらを捕まえて、話を聞くとしよう」
二人は頷いた。先頭は数名の騎士、そのすぐ後ろに俺達が続いた。
モニカとブルックに魔法に集中してもらうため、残りのメンバーは二人を完璧に守るのが仕事だ。
しばらく進んだ頃、一つの反応がモニカにあったようだ。
「あの高い木の上から反応があります。多分見張りではないかと思いますわ」
モニカが示した方向を見ると、周囲の木よりも少しだけ背の高い木が見える。
確かにあの高さの木ならば、見張りをするにはちょうどいいかも知れない。
幸いなことに、モニカの生命感知魔法の範囲は広く、さらには森の木の下を進軍しているため、上からは見にくい。まだ相手にバレていない可能性が高かった。
その証拠に、まだ相手が動く気配はないということだった。
「捕まえたいですね。何か方法はありませんか?」
俺はぐるりと周りを見渡す。ちょうどいいタイミングだったので、休憩を挟みながら対策会議を開いた。
「少人数で行くのがよろしいかと。さすがにこの人数で行くと目立ちますからね」
確かにそうだ。それじゃ、選抜メンバーを決めないといけないな。
「生命感知魔法を使えるモニカかブルックのどちらかは必要だな。それなら、俺達、冒険者パーティーで行くのが無難だね。相手も見た目で油断するかも知れないしね」
俺の意見に騎士団の兵長が難色を示した。
「危険ではないですか?」
何かあれば騎士団の責任問題に発展する。兵長が慎重になるのも当然だった。
「大丈夫、これでも優秀なメンバーぞろいなんだよ。生命感知魔法もあるし、それ以外の魔法も使えるからね。数人の盗賊くらい何ともないさ」
皇太子である俺の意見を無下に断るわけにはいかない。兵長はあくまで確認したに過ぎなかった。
それならば、と兵長は折れることになる。本当に中間職は大変だな。ちゃんと無事に帰ってくるので、そこは安心して欲しい。
その報告を受けた国王陛下は首を傾げていたが、俺達はそろって素知らぬ顔をしておいた。
そのかいあってか、今のところはダンジョンのことはバレていない。もしバレるとするならばモニカからだろう。あの子は何かをやらかすタイプだからね。
魔物の驚異が消えたことで、キリエの森を訪れる人は多くなった。
キリエの森には、王都で失われつつある手付かずの自然がまだまだたくさん残っている場所だ。薬の材料になる貴重な資源もたくさんあるため、それらを求めて人々が森を訪れているのだ。
もちろん、材料集めが目的ではなく、単に自然を満喫したいと思っている少し疲れた人達も訪れている。
そうなってくると、お金に目敏い商人達がこぞって森の整備を始めた。
そのため、今では森に幾つもの散策ルートが出来上がっていた。
もちろんその散策ルートは俺達も利用していた。
通行料はとられるが、良く整備されており、自然を損なわないような配慮がなされている。歩くだけで心が清らかになる感じがする素晴らしい散策ルートもあった。
だが、そのように利用されるのは森の一部だけであり、多くの場所は未だに人が来ることのない未開の地であった。
いつの頃からか、その未開の地に盗賊が住むようになっていた。
もちろん、盗賊の狙いは森の恵みを採りに来た人達であり、自警団や騎士団にも度々被害の報告が上がるようになっていた。
しかし、キリエの森は広い。定期的に掃除はするものの、全員を捕まえることはできず、だからと言って毎日掃除するわけにもいかず、いたちごっこが続いていた。
「レオンハルト殿下、最近は特に盗賊の被害が増えているみたいですね。もしかしたら、盗賊団が出来上がって、アジトを築いているかも知れません」
「盗賊団か。もしそうなら、見過ごせないね」
宰相の息子のアルフレッドが最近の情勢を俺達に報告した。
ここはお城の少し奥まったところにある中庭だ。
警備が薄いということもなく、かと言って人が多いわけでもない、みんなと集まって話すにはちょうど良い場所だった。
冒険者パーティーを組んで以降、俺達は定期的にこのように集まって、情報交換や最近の出来事を話すティータイムを作っていた。
「ピーちゃん様のお力を借りれば、すぐに盗賊達を見つけることができるのではないでしょうか?」
「そうかも知れないね。でも、ブルックリンも生命感知魔法を使えるようになったんだろう? 試してみたいんじゃないの?」
「確かにそうですが、まだまだ精度が甘くて、研鑽する毎日ですよ」
魔法に関してブルックリンは本当に余念がない。常に向上心を忘れずに毎日努力しているようだ。
それでも実践に勝る経験はないようであり、いまいち感覚がつかめていないようであった。
「私達だけで盗賊団を調査するのは無理かも知れないけど、騎士団つきなら許可をもらえるかも知れない。国王陛下に打診してみるよ」
やったぁと、モニカとギルバードとブルックリンから声が上がる。
ダンジョンを潰して以降、キリエの森に魔力溜まりはなくなり、俺達パーティーの出番もなくなっていた。
そこにようやく出番が来たのだ。喜びの声くらい上がるのは仕方がないのかも知れない。
後日、国王陛下に相談して、何とか騎士団つきで許可をとることができた。
森への盗賊団調査当日。俺達は城の裏手にある騎士団専用の馬止めに集合していた。
「なかなかの人数ですね」
「30人規模の小隊になるそうだよ。俺達は先頭集団について行き、指示を出す側にまわることにしよう」
ギルと話しているとモニカもやってきた。隣にはサラもいる。
「レオ様、私も一緒に先頭集団について行きますわ」
「モニカ、危険なんじゃない?」
フッフッフ、とモニカが笑う。まあ、サラがいる時点で危険などないのだけれどね。
「私も生命感知魔法を使えるようになりましたのよ!」
どうだとばかりに胸を張るモニカ。
最近は特に発育が良くなり、たわわに実りつつある胸が大きく揺れた。
それを見たギルは、悪いと思ったのか、慌てて目を反らした。
いい心構えだ、ギル。俺はしっかり見させてもらうけどね。
「分かりました。それではモニカも一緒に行きましょう」
俺達は先頭集団の馬車に乗り、キリエの森へと向かった。
森に着くとすぐに装備のチェックを行う。
それぞれが準備を完了したのを確認し、いつでも出撃できる体制が整った。
「皇太子殿下、どちらの方向に進みましょうか?」
騎士団を率いている兵長が尋ねてきた。
「そうだな、モニカ、ブルック、生命感知魔法の結果はどうなっている?」
それを聞いた兵長は驚いた様子だった。
生命感知魔法はまだ一般的には知られていない魔法である。噂くらいにしか聞いたことがなかったのだろう。
モニカとブルックはそれぞれが得られた情報をしばらく照らし合わせてから、答えを出した。
「レオ様、あちらの方角に多くの反応がありますわ」
モニカがその方向を指差した。その方角を地図で確認していた騎士達は一つの可能性を示唆した。
「そちらの方角には湖がありますね。ひょっとしたら、盗賊達のアジトがその近くにあるのかも知れません」
「なるほど、それじゃあ、その方角に行くとしよう。モニカとブルックは交代で生命感知魔法を使って欲しい。アジトがあるなら当然見張りや見回りがいるだろうからね。そいつらを捕まえて、話を聞くとしよう」
二人は頷いた。先頭は数名の騎士、そのすぐ後ろに俺達が続いた。
モニカとブルックに魔法に集中してもらうため、残りのメンバーは二人を完璧に守るのが仕事だ。
しばらく進んだ頃、一つの反応がモニカにあったようだ。
「あの高い木の上から反応があります。多分見張りではないかと思いますわ」
モニカが示した方向を見ると、周囲の木よりも少しだけ背の高い木が見える。
確かにあの高さの木ならば、見張りをするにはちょうどいいかも知れない。
幸いなことに、モニカの生命感知魔法の範囲は広く、さらには森の木の下を進軍しているため、上からは見にくい。まだ相手にバレていない可能性が高かった。
その証拠に、まだ相手が動く気配はないということだった。
「捕まえたいですね。何か方法はありませんか?」
俺はぐるりと周りを見渡す。ちょうどいいタイミングだったので、休憩を挟みながら対策会議を開いた。
「少人数で行くのがよろしいかと。さすがにこの人数で行くと目立ちますからね」
確かにそうだ。それじゃ、選抜メンバーを決めないといけないな。
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俺の意見に騎士団の兵長が難色を示した。
「危険ではないですか?」
何かあれば騎士団の責任問題に発展する。兵長が慎重になるのも当然だった。
「大丈夫、これでも優秀なメンバーぞろいなんだよ。生命感知魔法もあるし、それ以外の魔法も使えるからね。数人の盗賊くらい何ともないさ」
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