あれな除霊屋さん

むふ

文字の大きさ
10 / 12
とある日のバイト風景

とある日のバイト風景2

しおりを挟む
「師匠今日の仕事は内勤でよろしいでしょうか」
「あぁ。10:00から11:30まで電話を。30分昼食の準備。その後1時間休憩。13:00から修行だ」
「かしこまりました」



 現在時刻は9時過ぎ頃。
 仕事用のスマホを充電器に刺して、メモとペンを用意。
 そして、○イッターと○nstagramのほぼ稼働していない師匠のアカウントから、電話相談本日やります。と投稿。

 ほぼ稼働してないにも関わらず、意外と電話がくる もので10時になったら電話に師匠ではなく私が出て対応します。

 10時までの時間で、部屋の掃除と洗濯をする。
 急いで洗濯機を回す。
 ほとんどこちらに住んではいないので、かなり少ない洗濯物を回して乾燥までかけてしまう。
 パンツなんて見慣れてしまって、恥ずかしさなんてどこへやら。

ーー私は主婦か?



「師匠、洗濯洗剤が無くなりそうです」

 リビングにいる師匠へ声をかけて、小さく手を挙げた。

 経済新聞なのか、海外の読めない新聞なのかよくわからないけど新聞を読んでコーヒーを飲んでいる後ろ姿がとても様になっている。

 新聞も読み終わって、私が別の部屋を掃除している間に師匠は皿を洗浄機にかけていた。
地味にさりげなく家事やるあたり、更によくわからない人に拍車をかけている。

ーーこれが、世の中の女性にはギャップという形で伝わるのか。




そして10時3分前。

 スマホの電源を入れた瞬間に電話がかかってきている。
黒電話に音を設定しているから、うるさい。

 師匠は私が電話対応している間、すぐ近くでパソコンをカチカチ。
何しているかわからない。

 そして、10時より前にかかってきている電話を切って、10時になった瞬間からかかってきた電話に出る。

「お電話ありがとうございます。天斗事務所相談窓口です」
「……」

ーーはい、出ましたよ。無言電話。


かなり電話がかかってくるのだが、まず9割はいたずら電話である。3割は無言電話で、3割は本当に出たよ、爆笑。2割はワン切り、残り1割は何故か怒鳴られる。
 本当の相談に当たれるのは1割だけ。
いたずらは即切る。
 ただ稀に、いたずら電話にも幽霊的なやばいやつを電話口から感じることもあり、いたずら目的でかけてきたのに本当に相談になったこともあった。

 それから、5連ちゃんでいたずら電話。

「師匠いたずらまた多いです」

 言っている間にもいたずら電話。

 すると師匠がSNSに、いたずら電話をかけてきた人に業務妨害で裁判するぞって投稿をしてくれる。

 こんな感じで、SNSに警告をして更に執拗にかけてくる人は全てログをとっている。
 師匠が。
 師匠は暇なのだろうか。余りに余ったお金があるからなのだろうか。
 こんないたずら電話で、裁判なんて冗談でしょうとやってみろ!と言って中には更にかけてくる人がいる。
 実際に師匠は弁護士を立てて裁判までやってしまう。冗談ではないのです。すでに過去にも数名やってる人がいる。
 その度にちょっとした騒ぎになるのだが、いつの間にか情報は廃れていたずら電話という大した罪の意識もないアホが電話をかけてくる。
 そして、痛い目みる。
 警告後、謝っても遅く賠償金をむしり取る。

 そしてやっとのこと、まともな相談っぽい電話に当たった。


「最近、肩が凝って。病院行っても、整体行ってもダメなのよね。家もなんかずっとジメジメしてて……」
「そうですか……」


 私は机の上にある、札を師匠に見せる。
“なし“と書かれた青の札を。

 そして師匠はその札をみて、○か✖️か要相談、3つあるうちの1つの札を出してくる。

 この電話は、私の修行の意味合いもある。
 電話口から、霊力を感じ取る。小さな別の声を聞きとったり、雰囲気やノイズを感じ取らなければならない。
 師匠くらいになると、電話口にしっかり出なくてもわかるんだとか。
 カメラ越しでも霊はわかり、テレビに映っている光景も師匠は全然別の物に見えると言っていた。

 それを感じ取り、感覚を研ぎ澄ます修行なのだ。私の持ち札、幽霊の仕業の場合赤の“あり“、関係無い場合は“なし“。可能性はあるけど断言出来ないのが“要相談“。
 師匠と答え合わせをしながら、1時間半電話対応をする。

 今回の“なし“は“○“の札が上がったので、正解。全問正解すると、次回のバイトの際にお菓子が貰える。

ーー子どもか。

 でも高級菓子の場合が5回に1回くらいであるので、結構真剣に頑張る。

「幽霊的なことではないと思いますよ。運動をお勧めします。ご心配なら神社に行かれたり、パワースポットなど清められた場所に行くことをお勧めします。では、失礼いたします」

 幽霊関係で無い時アドバイスをしてすぐに切る。

 切った瞬間にまた電話がかかってくる。
決まり文句を言ったら、今回は幽霊の仕業な気がする電話だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...