16 / 16
第一章 『少年の革新》
第一章14 『技の披露』
しおりを挟む開始、という学院長の声を合図で、立ち続けていたコウたち受験生は、試験会場に向かって歩き出した。
あの後も学院長からの説明は続いていて、コウたちは試験会場の説明などをされていた。
聞くとどうやら、受験生が多いということもあって、色々と工夫をしているようだ。
要約すると、技の披露から実技試験の順に受ける人と、実技試験から技の披露の順に受ける人の2パターンあるらしい。
ちなみにコウは前者のパターンだったため、先に技の披露を行う。
*
おそらく体育館だと思われる試験会場の中、大勢の受験生たちが列に並んでいた。
列のその先では、一つ目の試験である『技の披露』が行われている。
かくいうコウも、既にかなりの時間待ち続けていて、もう少しで試験を受けることが出来そうだ。
辺りを見渡すと、たまたま近くにいた人と話をしてる人や、我慢強くただ待ち続けている人など、色々な様子が見てとれる。
「次の受験生、どうぞ!」
「……はい!」
若干そわそわしながら待っていると、ついにコウの番が来た。
コウは歯切れよく返事してから、椅子に座っている審査員の前に立ち、試験を始めようとする。
「受験番号124番のコウです!宜しくお願いします‼︎」
「はい。それでは、貴方が見せてくれる技の名前を教えて下さい」
コウが受験番号と名前を告げると、審査員から技の名前を言うように催促される。
コウは一呼吸置いてから、技の名前を告げた。
「――今から俺がするのは、〝八岐大蛇〟という技です」
コウは、技の名前を告げると同時に剣を鞘から抜き出し、片手で剣を握り締めて正眼の構えをとった。
瞬間――俺の身体には紫色に輝く鮮やかな剣気が纏われる。
コウはスゥーと息を深く吸い込み、瞼をゆっくり閉じた。
意識が剣技を繰り出すことだけに集中するのを感じながら、コウはここぞというタイミングで目をかっと開く。
「〝八岐大蛇〟……‼︎」
――『八岐大蛇』は八連撃技だ。
八つの首をもつ大蛇を模倣した剣気が、コウが剣を振るのと同時にコウの剣に纏い付く。
まず一撃目。コウは右斜め上から剣を振り下ろした。
素早く噛み付く大蛇を思わせる剣戟を繰り出すと同時に、八つある大蛇の首のうち一つが噛み付く。
鋭い斬撃を繰り出すと同時に、大蛇のような剣気も噛み付くため、威力は倍増だ。
二撃目、三撃目、四撃目と、コウはその後も鋭い剣戟を繰り出し続ける。
もし仮に敵がいたのなら、防ぐことすら出来ないくらいに、コウは様々な角度から斬りかかるようにした。
一匹、そしてまた一匹と、剣に纏われる大蛇が入れ替わっていく。
そして、ついに八撃目ときた時に、コウの纏う雰囲気がガラッと変わった。
最後の八撃目に向けて、コウは精一杯の剣力――剣気を込める。
「ふっ」という、剣を振りかぶる時の小さな息の音と共に、コウの剣は八つ全ての大蛇を纏う。
八つもある大蛇が全て合わさった、まさに渾身の一撃。
力強く、それでいて鋭い斬撃を、コウは真正面に向かって真上から繰り出した。
空気を斬る剣の音が辺りに響く。また、それと同時に風が生み出され、審査員や他の受験生のもとへと行き届いた。
審査員も他の受験生も何かを感じたようで、「おぉ」という歓声を僅かに上げている。
側から俺の技を見ていた人からすると、八連撃の技が繰り出されていたのは、僅か数秒の出来事だったのだ。
ひとまずコウは、それほどまでに短い時間でも、こうして人を魅了できたということに満足しておいた。
「……ありがとうございました。 では、次の受験生はどうぞ!」
少し遅れて合図がかかり、コウの一つ目の試験がたった今終わった。
剣を鞘に納めたコウは、その場を離れて次の試験会場へと向かう。
次は、試験官との実技試験だ。この試験では、油断も慢心も許されない。
今一度、コウは気を締めることにした。
1
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
同じ話が2話続いてますよー。