ヒレイスト物語

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第二章 別れ

完璧

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ディグニは一度距離を置いていた。

「そうでしたか、どうやらあなたを過大評価していたのかもしれませんね。
 やっぱりあなたには死んでもらいます。
 とはいってもこのままでは適いませんから。」


 フィロはポケットから徐に何かを取り出した。


 それを首元に持って行く。


「これで私は完璧な存在になれる。」


 何かを首元に打ち込み、しばらくして苦しみ出した。


「ぐああああああああっ‼」


 しばらく、フィロの奇声が響き渡った。


 落ち着いたのかフィロは顔をあげる。おぞましい顔に変化していた。
 それに身体も筋肉質になったような。


「ふっははははは。これで私は完璧になれた。」


「それが完璧だって⁉化け物の間違いじゃないか。フィロ様よぉ。」


「これが感じられないなんて、なんて哀れなんだ。あなたは完璧にはなれない。」


 そういうと、フィロは手を向けてくる。


「ドゥンケル・ルント」


 真っ黒い球がディグニに向かっていく。
 ディグニは双剣で防ごうとしていたが、
 なにを思ったのか地面を蹴りだして飛びのいた。


「残念。もう少しで消滅していたのに。」


 黒い球が向かった方向に視線やると壁が球の形になくなっていた。
 壊れたというよりは消滅したといったほうが正しいと思う。震えが止まらない。


「ははっ。間一髪。」


 ディグニもそちらの方を向いて冷や汗をかいていた。



 フィロがさっきの魔法を撃って、ディグニが交わす。
 それを何回か繰り返していた。


「はあ、キリがないですね。もういいです。これでみんな終わりです。」


 両手を上に向け力を溜めている。さっきよりも大きい黒い球ができている。
 まるでブラックホールみたいなものが出来上がっていた。


「あれはまずい‼」


 ディグニはフィロに向かっていく。


 キンっ‼


「無駄ですよ。」


 フィロは防御壁を張っていたらしい。


「それにもうできました。さようなら。」


「ドゥンケル・ルント」



 僕は死ぬことを覚悟した。


 周りが煙に包まれている。どうやら死ぬことは免れたみたい。


「どうなっている⁉この私が失敗しただと⁉」


 フィロが何やら騒いでいる。


「違う。誰かが邪魔したのだ。人間では消せるわけがない。
 だとすると、お前か。ペルフェット‼」


 フィロの敵意がペルフェットに向く。


「私ではありませんよ。フィロ様あなたは失敗したんです。
 魔法をあまり甘く見ないでください。」


 いつの間にかツァールを隅において立っていた。
 ツァールの治療が終わったみたいだ。
「黙れ。お前が何かしたんだ。そうでなければおかしい。
 お前を先に殺してやる。はっ。」


「ドゥンケル・ルント」


「ほらな、出たではないか。」


「ええ、そうですね。ただ、それだけです。ホーリー・ルント。」


 ペルは簡単に消して見せた。


「あなたは薄っぺらいんですよ。
 そうやって何も極めようとしない。この魔法のように。」


「ぐぬぬぬっ。黙れ。黙れ、黙れ。シェーンのお付きの分際で私を愚弄するか。」


「そういう風に人を見下す。
 あなたは永遠にシェーン様に敵いませんよ。というかここにいる誰にも。
 それにシェーン様を侮辱したこと決して許しません。」


 見たことないものすごく冷たい視線をフィロに向けていた。
 向けられていない僕でもわかる。完全にペルは切れている。
 ただ、視線を向けられているフィロはそれを意に介さなかった。


「何をいっている。あの震えているしかできないやつに俺が敵わないだって。

 笑わせるな。」


 その隙を見てディグニがフィロに切りかかる。


「おりゃあ。」


「無駄だと言っているでしょう‼」


 ディグニは吹き飛ばされてしまう。


「っ‼」


「ディグニ‼」


 思わず声が出た。


「なんでこんなにゴミムシが湧いて出てくるんだ。
 汚らわしい。まとめて消えろ‼」


 フィロはまた両腕をあげた。
 しかしうまくできていないみたいだ。黒い球が大きくならない。


「なぜだ?なぜできない⁉」


 そして崩れ落ちた。


「あ、足が動かない、だと。」


「魔力を使いすぎたのでしょう。その代償ですよ。」


「そ、そんなことあるわけない。この私が。」


 ディグニが頭から血を垂らしながらフィロにゆっくり近づいていく。


「もう諦めてください。フィロ様。」


「おい、止めろ、こっちに来るな。」


 足を引きずって後ずさる。ドンっとフィロがペルにぶつかる。


「わ、悪かった、だからな。許してくれ。」


「さっきも言ったはずです。許しませんと。」


 ペルは思いっきりフィロを蹴飛ばした。フィロはディグニの前に転がる。


「や、止めろ。私は王族だぞ。
 それを殺してただで済むと思っているのか。なあ、ディグニ、思い直せ。」


 ディグニは双剣を構える。


「王族?化け物の間違いでは?」


 剣を振り下ろした。


「ちょっと待って‼」


 叫び声にディグニの剣が寸でのところで止まった。


「シェーン様?」


 声の主はシェーンだった。
 あんなに震えた声を聞いたことがなかったから気づかなかった。


 シェーンはゆっくり、ゆっくりフィロに近づいていく。


「おう、シェーン。助けてくれるのか。」


 シェーンはフィロの前についた。


「勘違いしないで。私はあなたをひっぱたくためにここに来たの。」


 バチィィィィン


 フィロは頬をひっぱ叩かれていた。


「シェーン。貴様ぁぁぁ‼何をしたかわかっているのか。兄を叩いたのだぞ。」


「私あなたみたいな人知らないは。あなたが悪いのよ。
 何度も何度も、話そうとしたのに真剣に取り合ってくれなかった。
 私はあなたと話したかった。理解されなくてもいい。
 それだけだったのに。もう終わりよ。」


 シェーンはこちらに向いた。シェーンの目から一粒の光が落ちた。


「もういいわ。やって、ディグニ。」


「本当にいいんですね?」


「ええ。早くやって。」


「悪かった、謝るから助けてくれ。
 シェーン。おい聞いているのか。シェーーーン‼」


 ドサっ


 フィロの頭が床に虚しく転がっている。





 また僕は何もできなかった。
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