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第二章 別れ
夢
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「はあああ‼」
シェーンが何匹もヴォルフたちを倒していく。
負けじと、僕もヴォルフたちに向かって魔法放って倒していく。
「サンダー」
僕たちの前にヴォルフの山が出来上がる。
「やりますね。でもまだまだ残っていますよ。どうしますか。」
「はあ、どれだけいるのよ。」
倒しても倒しても、出てくる。これじゃ拉致が明かない。
疲れてきたのかシェーンはヴォルフに囲まれている。
「シェーン‼」
「大丈夫よ。自分でなんとかする。あんたも自分のことだけ考えて。」
僕もいつの間にかヴォルフに囲まれてしまっていた。
僕もシェーンもヴォルフに押し潰されていた。
「やっと、静かになりましたか。
そこでディグニ様が起きるまで大人しくしていてください。」
情けない。これじゃツァールに顔向けできないよ。
動け!動けよ!動いてくれよ・・・
「ルチェ・ソラーレ」
ヴォルフたちの隙間から眩い光が漏れてくる。
力が入るようになり、ヴォルフたちを払いのける。
そして、ヴォルフの山に魔法を放つ。
「サンダー‼はあ、はあ。」
辺りを見回すと、シェーンも抜け出していてその近くにはペルがいた。
「ペル!」
「間に合ってよかったです。」
ペルが来て安心してしまった。それがまずかった。
最大の失敗。油断が招いたこと。
タドが攻撃してこないそう過信してしまっていたんだ。
タッタッタッタッ
「スー・ランス」
ドンッ
僕の視界がプツンと切れた。
――――――――――――――――――
僕は目を開けた。
「ビス様、大丈夫ですか?」ゴフッ
何か温かいものが顔にかかる。
「ペル、ペル⁉しっかりしてよ‼」
シェーンがなにか叫んでいる。なんだ、何が起きている。
辺りを見渡す。何が起きているかわからない。
僕だけが別世界にいるような感覚。周りがモヤで包まれている。
「ビス、お願い、ペルを、ペルを治して‼・・・ビス⁉ねぇ、ビス‼」パシーン‼
音で、痛みで、目の前の光景がはっきりしてくる。
いつもやられていた行為が僕を現実に戻した。
僕の目の前に穴の開いたペルが倒れていた。僕は慌てて手を翳す。
「ヒール」
徐々に傷口が塞がっていく。
「ビス、様、大丈夫ですか。怪我は、ないですか。」
「ないよ。ペルが守ってくれたから。ペルの傷絶対治すから安心して。」
「もう、無駄、です。わた、しは、たすか、りませ、ん。」
「そんなこと言わないで、絶対助けるから。」
ペルが体を起こして、僕の目を見つめてくる。
「シェーン、様を、絶対に、守ってく、ださい。約束してください‼」
「うん。わかった。わかったから。絶対守るから。」
傷が塞がったのに、心臓の鼓動が弱くなっていく。
「シェーン、様。今まで、ありがとう、ございました。」
「そんな言い方しないでよ。もう終わりみたいな言い方。
ねぇ、ビス。ペルは。ペルは大丈夫よね?」
「うるさい‼今やってるよ‼」
シェーンに八つ当たりしてしまった。
「最後のお願いです。二人とも、仲良くしてください。」
ペルの鼓動は止まった。そうだ、あの魔法だ。一か八かやってやる。
「アナスタシス・フルム」
ペルの体が光に包まれる。一瞬ペルの体が動いた。
ただ、それだけだった。
失敗だった。当たり前だ。どんな魔法かも、
生き返ることがどういうことかもわからずに使ったのだから。
それからはヒールを使った無駄だと分かっていても。
「ヒール」
「ヒール」
「ヒール」
「もう、止めて。ビス。」
「何言ってるんだよ、シェーン。
ほら、ペルの心臓が動いているよ。ペルは生き返るんだ。」
パシーン‼
シェーンに頬を叩かれた。
「現実を見なさい‼ペルは死んだの‼」
僕は現実に戻される。もう、ペルは起きることはない。
そう実感すると、自然と涙が流れる。
最後に見たペルの目には二つの光が強く強く輝いていた。
シェーンが何匹もヴォルフたちを倒していく。
負けじと、僕もヴォルフたちに向かって魔法放って倒していく。
「サンダー」
僕たちの前にヴォルフの山が出来上がる。
「やりますね。でもまだまだ残っていますよ。どうしますか。」
「はあ、どれだけいるのよ。」
倒しても倒しても、出てくる。これじゃ拉致が明かない。
疲れてきたのかシェーンはヴォルフに囲まれている。
「シェーン‼」
「大丈夫よ。自分でなんとかする。あんたも自分のことだけ考えて。」
僕もいつの間にかヴォルフに囲まれてしまっていた。
僕もシェーンもヴォルフに押し潰されていた。
「やっと、静かになりましたか。
そこでディグニ様が起きるまで大人しくしていてください。」
情けない。これじゃツァールに顔向けできないよ。
動け!動けよ!動いてくれよ・・・
「ルチェ・ソラーレ」
ヴォルフたちの隙間から眩い光が漏れてくる。
力が入るようになり、ヴォルフたちを払いのける。
そして、ヴォルフの山に魔法を放つ。
「サンダー‼はあ、はあ。」
辺りを見回すと、シェーンも抜け出していてその近くにはペルがいた。
「ペル!」
「間に合ってよかったです。」
ペルが来て安心してしまった。それがまずかった。
最大の失敗。油断が招いたこと。
タドが攻撃してこないそう過信してしまっていたんだ。
タッタッタッタッ
「スー・ランス」
ドンッ
僕の視界がプツンと切れた。
――――――――――――――――――
僕は目を開けた。
「ビス様、大丈夫ですか?」ゴフッ
何か温かいものが顔にかかる。
「ペル、ペル⁉しっかりしてよ‼」
シェーンがなにか叫んでいる。なんだ、何が起きている。
辺りを見渡す。何が起きているかわからない。
僕だけが別世界にいるような感覚。周りがモヤで包まれている。
「ビス、お願い、ペルを、ペルを治して‼・・・ビス⁉ねぇ、ビス‼」パシーン‼
音で、痛みで、目の前の光景がはっきりしてくる。
いつもやられていた行為が僕を現実に戻した。
僕の目の前に穴の開いたペルが倒れていた。僕は慌てて手を翳す。
「ヒール」
徐々に傷口が塞がっていく。
「ビス、様、大丈夫ですか。怪我は、ないですか。」
「ないよ。ペルが守ってくれたから。ペルの傷絶対治すから安心して。」
「もう、無駄、です。わた、しは、たすか、りませ、ん。」
「そんなこと言わないで、絶対助けるから。」
ペルが体を起こして、僕の目を見つめてくる。
「シェーン、様を、絶対に、守ってく、ださい。約束してください‼」
「うん。わかった。わかったから。絶対守るから。」
傷が塞がったのに、心臓の鼓動が弱くなっていく。
「シェーン、様。今まで、ありがとう、ございました。」
「そんな言い方しないでよ。もう終わりみたいな言い方。
ねぇ、ビス。ペルは。ペルは大丈夫よね?」
「うるさい‼今やってるよ‼」
シェーンに八つ当たりしてしまった。
「最後のお願いです。二人とも、仲良くしてください。」
ペルの鼓動は止まった。そうだ、あの魔法だ。一か八かやってやる。
「アナスタシス・フルム」
ペルの体が光に包まれる。一瞬ペルの体が動いた。
ただ、それだけだった。
失敗だった。当たり前だ。どんな魔法かも、
生き返ることがどういうことかもわからずに使ったのだから。
それからはヒールを使った無駄だと分かっていても。
「ヒール」
「ヒール」
「ヒール」
「もう、止めて。ビス。」
「何言ってるんだよ、シェーン。
ほら、ペルの心臓が動いているよ。ペルは生き返るんだ。」
パシーン‼
シェーンに頬を叩かれた。
「現実を見なさい‼ペルは死んだの‼」
僕は現実に戻される。もう、ペルは起きることはない。
そう実感すると、自然と涙が流れる。
最後に見たペルの目には二つの光が強く強く輝いていた。
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