ヒレイスト物語

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第三章 変化

仲直り

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宿に着くと雰囲気が少し変わっていた。まあ、お客さんもそこそこ入っているし、当然と言えば当然か。視線を動かすと忙しそうに働くリベの姿があり、視線が合った。


「ああ、やっと帰ってきた。ちょっと今忙しいからあとでね。ご飯は食べた?」


「いえ、まだです。」


「・・・じゃあ、ビスの部屋に二人で待ってて。手が空いたら持って行くから。」


リベなりの気遣いだろう。モルテに視線をやると俯いている。決意はしたもののまだ気まずいか。


「ありがとうございます。ほら、行くぞモルテ。」


俺はそういってモルテの返事を待たずに足を進める。何も言わずについてくるだろう。部屋に向かう途中横目に見えたリベの表情は安堵とも哀情とも取れるものだった。


「おーい。注文頼むよ。」


「あ、はーい。只今。」



部屋に着き扉を開けると人の気配がする。奥へ進むとそこにはベルがベッドに座って待っていた。


「あ、ビスお兄ちゃん、モルテお兄ちゃんもお帰り。ベル一人で寂しかったんだよ。」


「ごめんな。ベル。」


ベルを抱きかかえる。


「ううん。謝らなくていいよ。そんなことより、あそぼ。」


「うん?ああ、いいぞ。・・・その前にちょっといいかな?」


ベルを下ろすと不思議そうに首を傾げている。俺はベルから離れ扉へと向かう。モルテとすれ違う途中肩を叩き部屋から出る。大丈夫だとは思いつつも一応ここで扉のところで待機していた。

いっそ怖いもの見たさにハウの様子でも見に行こうとも思ったが、リベがベルをここに移していたのだ。近づかない方がいいだろう。おそらくこっちの方は次いでだと思う。謝るのは一日経ったあとでもいいのだから。モルテの様子を見てベルと合わせていいと判断したのだ。リベには気を使わせ過ぎで申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


部屋を出た直後は物音すらしなかった。しばらくして話し声がかすかに聞こえてくる。そしてまた静寂。何かの叩く音が聞こえると思ったら、ワンワン泣く声が聞こえてきた。一瞬入ろうか迷ったがその必要もないと判断した。なぜなら、泣く声が二つ聞こえてきたのだから。



俺はどのタイミングで入ればいいか迷っていた。泣き声も治まり、笑い声も少々聞こえてくる。ただ、俺にはそういう経験をしたことがないからタイミングがわからなかったのだ。慣れないことはやらない方がいいなと思ってしまう。


そんなことを考えると、階段を上がってくる音がする。もし、他の客だったら気まずい。いっそ部屋に入ってしまおうかと思った瞬間その音の主が顔を覗かせた。
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