119 / 171
第四章 不変
隠れていた想い
しおりを挟む
金属音だけが辺りに鳴り響く。というかその音しか耳に入ってこないのだ。三人の様子を確認したくてもできないのだ。
「ほう、少しはやるようになったようですね。」
「お前に褒められても嬉しくない‼」
「そんなこと言わないでくださいよ。寂しいじゃないですか。」
本当に寂しく感じているように見えたが、それは一瞬で元に戻る。あれを見る前は何も思っていないのだと思ったかもしれない。ただ、あれだけ感情が表に出てきたところを見てしまっては、本当なのかどうかわからなくなってしまっていた。
「それにしても、なんで魔法を使わないんですか?」
そんなことをタドが唐突に聞いてきた。特段理由はない。そのはずだった。
「別に理由なんてない。お前が剣を使っているから、剣を使っているだけだ。」
だが、その言葉にタドは納得が言ってないようで、首を振る。そして預言者の如く言葉を投げかけてくる。
「本当にそうですか?じゃあ、私が魔法を使ったら、魔法を使うんですか?・・・そんなことしませんよね。ビスあなたは、私が剣を使おうが、魔法を使おうが、他の武器を使おうがあなたは決して魔法は使わないでしょう。」
そこには俺に魔法を使わせない何かが存在していることを仄めかしていた。だが、俺はまだ気づかない。いや、気付きたくなかった。
「何が言いたい?」
「わかっているでしょう、あなたは。」
タドは溜息交じりに言う。ここまで言われても俺は意地でも考えない。ただ、それを許してもらえそうにないようだ。
「“無力”だとわかるのが怖いですか?それとも、“異質”だとわかるのが怖いですか?」
無意識に思考を巡らせてしまった。投げかけられた二つの言葉。たった二文字。だから、考えてしまった、そしてわかってしまったのだ。その言葉にいろいろなものが詰まっている。それは、ここにいる人、そして俺自身さえも信じていないことを示していた。もうどうしようもないものだとわかっていても抵抗したい。その選択肢は一つのみ。それがタドの思惑通りだとしても、俺はそれを選択した。
「サンダー‼」
「おっと。こんな近距離で放つなんて危ないですね。・・・でも、やっと決心がつきましたか。」
「うるせー‼別にお前に言われたから使ったわけじゃない。俺はこれが最善だと思ったから選択したんだ。」
タドの思惑への唯一の抵抗。そう言葉にしたところで、先に言葉を言われてしまった時点でそれが無力に近い言葉に成り下がっていることは明らかだった。それでも、そうせざるを得なかったのだ。この場で無言は一番力がないものだから。
「はははっ。そうでしたか。それは失敬。」
それを分かり切っているかのような笑い。この手の平の上で踊らされている感覚は、いつになっても反発したくなる。・・・でも、もういいや。
「”モストルヴェノス”」
光と音が同時に見え鳴ったことだろう。それは瞬きの瞬間に終わり見ることもできず、聞くこともできない。その代わり、辺りのいろいろなものが焼け焦げたにおいが鼻を刺すように刺激し、警報のような振動が鼓膜を破らんばかりに刺激してくる。その現状に俺はジッと一点のみ凝視している。そこには、思惑が外れ、目的が達成できなかったことを物語る姿があった。
「アハハハ‼いいですよ、非常にいい。・・・ただ、まだ何か足りないようですね。現に私はまだこの場に立っている。」
「なぜだ!?」
「ん?簡単なことですよ。魔法があたる瞬間に回復魔法をかけたまでです。」
簡単なことがあるか。回復魔法は本来傷の状態を見て使うもの。それを傷ができる前に予想して魔法をかけただって。じょうきをいっしている。
「なんで驚いた声を出しているんです、あなたもこちら側ですよ。それは自身でわかっていると思いますが。・・・予定変更です。ビスあなたにはまだ藻掻いてもらいます。”エシクル”」
体が動かない、声も出ない。タドが何か魔法を唱えた瞬間体が急に重くなったのだ。何とかタドの方を向くとモルテの目の前まで迫っていた。やめてくれ、やめてくれよ。
「君ちょっと私と話しましょう。」
そのあと、タドとモルテの会話が俺の耳に届くことはなかった。
「ほう、少しはやるようになったようですね。」
「お前に褒められても嬉しくない‼」
「そんなこと言わないでくださいよ。寂しいじゃないですか。」
本当に寂しく感じているように見えたが、それは一瞬で元に戻る。あれを見る前は何も思っていないのだと思ったかもしれない。ただ、あれだけ感情が表に出てきたところを見てしまっては、本当なのかどうかわからなくなってしまっていた。
「それにしても、なんで魔法を使わないんですか?」
そんなことをタドが唐突に聞いてきた。特段理由はない。そのはずだった。
「別に理由なんてない。お前が剣を使っているから、剣を使っているだけだ。」
だが、その言葉にタドは納得が言ってないようで、首を振る。そして預言者の如く言葉を投げかけてくる。
「本当にそうですか?じゃあ、私が魔法を使ったら、魔法を使うんですか?・・・そんなことしませんよね。ビスあなたは、私が剣を使おうが、魔法を使おうが、他の武器を使おうがあなたは決して魔法は使わないでしょう。」
そこには俺に魔法を使わせない何かが存在していることを仄めかしていた。だが、俺はまだ気づかない。いや、気付きたくなかった。
「何が言いたい?」
「わかっているでしょう、あなたは。」
タドは溜息交じりに言う。ここまで言われても俺は意地でも考えない。ただ、それを許してもらえそうにないようだ。
「“無力”だとわかるのが怖いですか?それとも、“異質”だとわかるのが怖いですか?」
無意識に思考を巡らせてしまった。投げかけられた二つの言葉。たった二文字。だから、考えてしまった、そしてわかってしまったのだ。その言葉にいろいろなものが詰まっている。それは、ここにいる人、そして俺自身さえも信じていないことを示していた。もうどうしようもないものだとわかっていても抵抗したい。その選択肢は一つのみ。それがタドの思惑通りだとしても、俺はそれを選択した。
「サンダー‼」
「おっと。こんな近距離で放つなんて危ないですね。・・・でも、やっと決心がつきましたか。」
「うるせー‼別にお前に言われたから使ったわけじゃない。俺はこれが最善だと思ったから選択したんだ。」
タドの思惑への唯一の抵抗。そう言葉にしたところで、先に言葉を言われてしまった時点でそれが無力に近い言葉に成り下がっていることは明らかだった。それでも、そうせざるを得なかったのだ。この場で無言は一番力がないものだから。
「はははっ。そうでしたか。それは失敬。」
それを分かり切っているかのような笑い。この手の平の上で踊らされている感覚は、いつになっても反発したくなる。・・・でも、もういいや。
「”モストルヴェノス”」
光と音が同時に見え鳴ったことだろう。それは瞬きの瞬間に終わり見ることもできず、聞くこともできない。その代わり、辺りのいろいろなものが焼け焦げたにおいが鼻を刺すように刺激し、警報のような振動が鼓膜を破らんばかりに刺激してくる。その現状に俺はジッと一点のみ凝視している。そこには、思惑が外れ、目的が達成できなかったことを物語る姿があった。
「アハハハ‼いいですよ、非常にいい。・・・ただ、まだ何か足りないようですね。現に私はまだこの場に立っている。」
「なぜだ!?」
「ん?簡単なことですよ。魔法があたる瞬間に回復魔法をかけたまでです。」
簡単なことがあるか。回復魔法は本来傷の状態を見て使うもの。それを傷ができる前に予想して魔法をかけただって。じょうきをいっしている。
「なんで驚いた声を出しているんです、あなたもこちら側ですよ。それは自身でわかっていると思いますが。・・・予定変更です。ビスあなたにはまだ藻掻いてもらいます。”エシクル”」
体が動かない、声も出ない。タドが何か魔法を唱えた瞬間体が急に重くなったのだ。何とかタドの方を向くとモルテの目の前まで迫っていた。やめてくれ、やめてくれよ。
「君ちょっと私と話しましょう。」
そのあと、タドとモルテの会話が俺の耳に届くことはなかった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
悪役令嬢、休職致します
碧井 汐桜香
ファンタジー
そのキツい目つきと高飛車な言動から悪役令嬢として中傷されるサーシャ・ツンドール公爵令嬢。王太子殿下の婚約者候補として、他の婚約者候補の妨害をするように父に言われて、実行しているのも一因だろう。
しかし、ある日突然身体が動かなくなり、母のいる領地で療養することに。
作中、主人公が精神を病む描写があります。ご注意ください。
作品内に登場する医療行為や病気、治療などは創作です。作者は医療従事者ではありません。実際の症状や治療に関する判断は、必ず医師など専門家にご相談ください。
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる