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第四章 不変
隠れていた想い
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金属音だけが辺りに鳴り響く。というかその音しか耳に入ってこないのだ。三人の様子を確認したくてもできないのだ。
「ほう、少しはやるようになったようですね。」
「お前に褒められても嬉しくない‼」
「そんなこと言わないでくださいよ。寂しいじゃないですか。」
本当に寂しく感じているように見えたが、それは一瞬で元に戻る。あれを見る前は何も思っていないのだと思ったかもしれない。ただ、あれだけ感情が表に出てきたところを見てしまっては、本当なのかどうかわからなくなってしまっていた。
「それにしても、なんで魔法を使わないんですか?」
そんなことをタドが唐突に聞いてきた。特段理由はない。そのはずだった。
「別に理由なんてない。お前が剣を使っているから、剣を使っているだけだ。」
だが、その言葉にタドは納得が言ってないようで、首を振る。そして預言者の如く言葉を投げかけてくる。
「本当にそうですか?じゃあ、私が魔法を使ったら、魔法を使うんですか?・・・そんなことしませんよね。ビスあなたは、私が剣を使おうが、魔法を使おうが、他の武器を使おうがあなたは決して魔法は使わないでしょう。」
そこには俺に魔法を使わせない何かが存在していることを仄めかしていた。だが、俺はまだ気づかない。いや、気付きたくなかった。
「何が言いたい?」
「わかっているでしょう、あなたは。」
タドは溜息交じりに言う。ここまで言われても俺は意地でも考えない。ただ、それを許してもらえそうにないようだ。
「“無力”だとわかるのが怖いですか?それとも、“異質”だとわかるのが怖いですか?」
無意識に思考を巡らせてしまった。投げかけられた二つの言葉。たった二文字。だから、考えてしまった、そしてわかってしまったのだ。その言葉にいろいろなものが詰まっている。それは、ここにいる人、そして俺自身さえも信じていないことを示していた。もうどうしようもないものだとわかっていても抵抗したい。その選択肢は一つのみ。それがタドの思惑通りだとしても、俺はそれを選択した。
「サンダー‼」
「おっと。こんな近距離で放つなんて危ないですね。・・・でも、やっと決心がつきましたか。」
「うるせー‼別にお前に言われたから使ったわけじゃない。俺はこれが最善だと思ったから選択したんだ。」
タドの思惑への唯一の抵抗。そう言葉にしたところで、先に言葉を言われてしまった時点でそれが無力に近い言葉に成り下がっていることは明らかだった。それでも、そうせざるを得なかったのだ。この場で無言は一番力がないものだから。
「はははっ。そうでしたか。それは失敬。」
それを分かり切っているかのような笑い。この手の平の上で踊らされている感覚は、いつになっても反発したくなる。・・・でも、もういいや。
「”モストルヴェノス”」
光と音が同時に見え鳴ったことだろう。それは瞬きの瞬間に終わり見ることもできず、聞くこともできない。その代わり、辺りのいろいろなものが焼け焦げたにおいが鼻を刺すように刺激し、警報のような振動が鼓膜を破らんばかりに刺激してくる。その現状に俺はジッと一点のみ凝視している。そこには、思惑が外れ、目的が達成できなかったことを物語る姿があった。
「アハハハ‼いいですよ、非常にいい。・・・ただ、まだ何か足りないようですね。現に私はまだこの場に立っている。」
「なぜだ!?」
「ん?簡単なことですよ。魔法があたる瞬間に回復魔法をかけたまでです。」
簡単なことがあるか。回復魔法は本来傷の状態を見て使うもの。それを傷ができる前に予想して魔法をかけただって。じょうきをいっしている。
「なんで驚いた声を出しているんです、あなたもこちら側ですよ。それは自身でわかっていると思いますが。・・・予定変更です。ビスあなたにはまだ藻掻いてもらいます。”エシクル”」
体が動かない、声も出ない。タドが何か魔法を唱えた瞬間体が急に重くなったのだ。何とかタドの方を向くとモルテの目の前まで迫っていた。やめてくれ、やめてくれよ。
「君ちょっと私と話しましょう。」
そのあと、タドとモルテの会話が俺の耳に届くことはなかった。
「ほう、少しはやるようになったようですね。」
「お前に褒められても嬉しくない‼」
「そんなこと言わないでくださいよ。寂しいじゃないですか。」
本当に寂しく感じているように見えたが、それは一瞬で元に戻る。あれを見る前は何も思っていないのだと思ったかもしれない。ただ、あれだけ感情が表に出てきたところを見てしまっては、本当なのかどうかわからなくなってしまっていた。
「それにしても、なんで魔法を使わないんですか?」
そんなことをタドが唐突に聞いてきた。特段理由はない。そのはずだった。
「別に理由なんてない。お前が剣を使っているから、剣を使っているだけだ。」
だが、その言葉にタドは納得が言ってないようで、首を振る。そして預言者の如く言葉を投げかけてくる。
「本当にそうですか?じゃあ、私が魔法を使ったら、魔法を使うんですか?・・・そんなことしませんよね。ビスあなたは、私が剣を使おうが、魔法を使おうが、他の武器を使おうがあなたは決して魔法は使わないでしょう。」
そこには俺に魔法を使わせない何かが存在していることを仄めかしていた。だが、俺はまだ気づかない。いや、気付きたくなかった。
「何が言いたい?」
「わかっているでしょう、あなたは。」
タドは溜息交じりに言う。ここまで言われても俺は意地でも考えない。ただ、それを許してもらえそうにないようだ。
「“無力”だとわかるのが怖いですか?それとも、“異質”だとわかるのが怖いですか?」
無意識に思考を巡らせてしまった。投げかけられた二つの言葉。たった二文字。だから、考えてしまった、そしてわかってしまったのだ。その言葉にいろいろなものが詰まっている。それは、ここにいる人、そして俺自身さえも信じていないことを示していた。もうどうしようもないものだとわかっていても抵抗したい。その選択肢は一つのみ。それがタドの思惑通りだとしても、俺はそれを選択した。
「サンダー‼」
「おっと。こんな近距離で放つなんて危ないですね。・・・でも、やっと決心がつきましたか。」
「うるせー‼別にお前に言われたから使ったわけじゃない。俺はこれが最善だと思ったから選択したんだ。」
タドの思惑への唯一の抵抗。そう言葉にしたところで、先に言葉を言われてしまった時点でそれが無力に近い言葉に成り下がっていることは明らかだった。それでも、そうせざるを得なかったのだ。この場で無言は一番力がないものだから。
「はははっ。そうでしたか。それは失敬。」
それを分かり切っているかのような笑い。この手の平の上で踊らされている感覚は、いつになっても反発したくなる。・・・でも、もういいや。
「”モストルヴェノス”」
光と音が同時に見え鳴ったことだろう。それは瞬きの瞬間に終わり見ることもできず、聞くこともできない。その代わり、辺りのいろいろなものが焼け焦げたにおいが鼻を刺すように刺激し、警報のような振動が鼓膜を破らんばかりに刺激してくる。その現状に俺はジッと一点のみ凝視している。そこには、思惑が外れ、目的が達成できなかったことを物語る姿があった。
「アハハハ‼いいですよ、非常にいい。・・・ただ、まだ何か足りないようですね。現に私はまだこの場に立っている。」
「なぜだ!?」
「ん?簡単なことですよ。魔法があたる瞬間に回復魔法をかけたまでです。」
簡単なことがあるか。回復魔法は本来傷の状態を見て使うもの。それを傷ができる前に予想して魔法をかけただって。じょうきをいっしている。
「なんで驚いた声を出しているんです、あなたもこちら側ですよ。それは自身でわかっていると思いますが。・・・予定変更です。ビスあなたにはまだ藻掻いてもらいます。”エシクル”」
体が動かない、声も出ない。タドが何か魔法を唱えた瞬間体が急に重くなったのだ。何とかタドの方を向くとモルテの目の前まで迫っていた。やめてくれ、やめてくれよ。
「君ちょっと私と話しましょう。」
そのあと、タドとモルテの会話が俺の耳に届くことはなかった。
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