アナスタシス・フルム

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第2章 老人との出会い

締まらない言葉

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「でも、うまく言ったみたいね。」


ディタは胸に手をあて下を向いていた。


「ああ、ディタのおかげだよ。ありがとう。」


「お役に立てたみたいで良かったわ。まあ、私は何もしていないけどね。」


ディタはこちらを見つめて、力の抜けた笑顔をこちらに向けてくる。


「そんなことない。ディタがいなければ、こんなに早くこの魔法は完成できてないよ。」


いつかは辿り着いていたと思う。ただ、それは途方もない時間を費やしてだろう。


「それなら、いいんだけど・・・もう創造力がないだなんて言えないわね。」


「ははっ。だろ。」


俺はどんな顔をしているのだろう。無意識に顔の筋肉が動いたのだ。気持ち悪い顔をしていなければいいが。


「ふふふっ。」


そんなレクスの笑い声が聞こえる。どっち⁉どっちなんだその笑いは⁉不安になってしまう。ただ、ディタやエミンは笑っていないし、軽蔑したような表情もしていないので大丈夫だっただろうと思うことにした。



だが、徐々にディタの表情が変わっていく。


「それより何で声掛けてくれなかったのよ。声を掛けてくれれば一緒に行ったのに。危なく成功するところ見逃すところだったじゃない。」


どうやら置いて行ったことに怒りを感じているらしい。


「いや、ごめん、ごめん。成功するのに時間がかかると思ってさ。長々と付き合わせるのは悪いと思って。それに後々追ってくると思ってたから。」


まあ、話かけづらかったという理由もあったがそこは省略した。ディタは口をポカンと開けている。そのあと、しばらくして溜息をついた。その時入った空気を吐き出すように。


「はあ、まあいいわ。結果としては成功するところを見られたから。・・・ただ、もう置いて行かないでね。」


「ああ、わかってるよ。」


横目にレクスがニヤニヤしているのが見て取れる。


ボカ


「ううう。ボク何も言ってないのに。」


レクスを叩いた後静寂が広がる。時間としては一瞬だったんだろう。だが体感的には長く感じられた。さっきの会話をして”なんとなく”決まったことがあったからだ。だが、それを”なんとなく”で済ましてはいけない気がした。どういう風に切り出すべきか考えていたのだ。こんな経験ないから何と言っていいかわからない。長く感じられた時間は辺りに声が広がり静寂が解かれた。ディタの声が。


「あの、ここまでいって何なんだけど、私たちってこれから一緒に旅をするってことでいいのよね?」


「あ、ああそうなんじゃないか?」


俺は慌てて返答をしたせいか変なニュアンスになってしまう。


「なんで疑問形なのよ。締まらないわね。」


「じゃあ、何て言えばいいんだよ。」


そんな強い言葉を発そうとしたわけではないのだが、どうにもできない苛立ちからか喧嘩腰になってしまった。


「何てって。・・・“ああ、一緒に旅をしよう”とか“ああ、だけど改めて言わせてくれ。一緒に旅をしてくれないか?”とか、とにかくいろいろあるでしょ‼」


あの言い方は俺を真似しているのかそれとも何かから得た知識で出たのか。どちらにしても腹の底から何かが込み上げてくる。必死に抑えようとするがダメだ。耐えられない。


「ぷっ。ははははははっ。何だよ。それ⁉」


「な、何で笑うのよ。」


笑いで涙も出てきてあまりはっきりとは見えないが。ディタの顔が真っ赤に染まっているように見えた。


「もう、エミン、ロガに乗っかりなさい‼」


「や、やめろ。」


そう言ってもエミンは追ってくる。空中にいるはずなのにドシンドシンと音が聞こえるのは気のせいだろうか。


「ロガはん。待っとおくれやす。」


俺は捕まらないよう必死に逃げる。だが、間に合わなかった。エミンに乗っかられ勢いで倒れてしまう。


「ぐっ‼」


立ち上がれない。力を入れてもびくとも動かないのだ。俺は抵抗をするのを諦めた。


「ディ、ディタ様申し訳ありませんでした。何でもしますから。許してください。」


その言葉を言ってから気づく。まずいことを言ってしまったと。ディタは不敵な笑みを浮かべていた。


「言ったわね。」


「はっははっ。さっきのはやっぱり・・・」


「取り消しはなしよ。エミン離れてあげなさい。」


「ふふふっ。残念どす。ウチはもうちょっとこうしてたかったんやけどなぁ。」


ドSですかあなたは⁉そういうもののエミンは離れてくれる。体が軽くなったようだ。俺はゆっくりと立ち上がる。起きた地面に目をやると俺の体の形に凹んでいた。乾いた笑いしか出てこない。


「はっははっ・・・」


「ロガ、あの二人を敵に回しちゃだめだよ。」


「そうだな。」




締まらない。驚くほどに。ただ、俺らしいといえば俺らしいのか。まあこれはこれでよかった気がする。改まった感じは似合わないと思う。こうして俺は正式に仲間ができた。
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