本当の君を抱いている

ふじの

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 ふわあ、と欠伸をした。退屈だ……。 
 あまり陽の当たらないこの地下で、とくにやることも無い。大概は身体を動かしてみたり、仮眠をとってみたり。
 最近では、部屋の中にどんどんと衣類や家具などが増えたおかげで、非常に心地好くなっている。しかし暇を潰せるようなものは無いので、時間を持て余してしまう。そうだな、ボードゲームや本があると嬉しい。今度伝えようかな、と思ったところで、また我に返った。
 そうだった、あの人は……ここ一ヶ月来ていないんだった。

「……元気だといいんだけど」

 ぼそりと呟いても、誰も聞いていない。ここは薄暗く、寂れて誰もいない地下室だ。初めてここに連れてこられてから、随分日が経った。最初はこんなものか、と孤独なんて感じても居なかったのに、あんなに通ってくれていたあの人が来なくなったせいで、俺の孤独感は増してしまう。
 俺はどさり、とラグの上に寝転ぶと、瞼を閉じてその人を思い描いた。


 その人は、名をマウリと名乗った。
 常に分厚い外套を頭から被っているその人は、明らかに特権階級の人間だと思う。俺もかつては、金や権力をある程度持っていた事もあるので分かるのだ。マウリの着ている服は常に一級品だし、彼の指先は誰かに手入れされているように綺麗だ。貴族か王族か、そこまでは分からないにしろ、並大抵の金持ちではなさそうだった。
 でも正直なところ、どうでもいい。俺は昔から金にも地位にも全く興味がなく、のんびりと暮らし、好きな剣を振れればどこで暮らしてもいいような人間だ。

 だからこそ、毎度厄介なことに巻き込まれる。
 剣技だけは卓越していた俺なので、祖国では瞬く間に騎士団の中で昇進した。しかしそれをよく思わない連中も多いのだ。特に俺みたいな、大した家の生まれでもない人間の下につくなんて、許せないという奴もいる。しかし俺はそういう人の恨みだとか、政治や画策だとかそういうことに疎かった。
 気がつけば部下と他の騎士団に騙され、横領や暴行の罪を着せられていた。処刑されるかという所で、俺を買ってくれていた国王陛下がどうにか国外に逃がしてくれたのだ。多分、国王陛下も俺が犯人ではないと気がついていたようだが、証拠不十分で結局俺が追放された。

 まあそこまでされても、俺は結構どうでもいいと思っていた。祖国への愛もあるが、そんなくだらない事で恨まれるなら他で剣を振ればいい。そんな思いで様々な国で護衛や討伐なんかで小銭を稼ぎつつ、流れ着いたこの国で剣闘士となることになった。
 俺は剣闘士にかなり向いていて、またしてもここでも一躍人気になったが……結局同じような事が起きた。権力者の機嫌を損ねて、娼館に売られたのだ。

 もはや、またかとしか思わない。
 俺は運がないというか、策略や人の恨みに気が付けない質のようだ。剣技だけに才能が集中してしまっている。だから運良く台頭するも、また運悪く転落するのだ。
 そうしてやってきたここで、囚人のように暮らして一生を追えるのか、とも思っていた。相当に筋肉質なアルファである俺が男娼として客なんて取れるわけもないし、そうなれば必然的に飯も食えなくて餓死する。こんな人生の終わり方もあるのか、ともはや苦笑いしかできない中で、客としてやってきたのが……マウリだった。

 マウリ、と名乗る男は、明らかなアルファの貴族だった。俺よりはふた周り程度小さいものの、普通に比べたら相当ガタイは良い。高価そうな服に、手入れされた指先と爪。僅かに見える口元は綺麗な唇をしているし、艶やかで切れてもいない。この国の男らしいやや褐色肌も肌荒れはひとつも無いし、その上俺のこの暮らしのために大金を叩いてくれる。
 店へ払う代金の他、食べ物から服から何から何までくれるだけでなく、知らない会社名義の小切手までくれた。俺が彼にした事と言えば、ただ抱き締めた……それだけなのに。
 アルファは、アルファと恋愛的に結ばれる事はほぼ無い。基本的にアルファはオメガに惹かれる生き物だし、かくいう俺も祖国ではオメガの男か女性としか付き合った事も無い。

 だから、最初は不思議だった。思い詰めたような雰囲気で、俺みたいな見るからにでかいアルファの男に抱きしめて欲しい……というアルファが居ることに。
 しかもマウリは、俺に抱きしめられて縋り付くように泣いた。そこにはどんな理由があって、何がそんなに彼を追い詰めて居るのかは分からない。それから度々通ってくれるマウリに、それとなく聞いたことはある。

「よくある話だ。家同士の利益だとか、望まない結婚だとか。私が弱いだけで」

 俺の腕の中で寂しそうに言うマウリは、苦しみながらも諦めている様子だった。それを見て、何となく俺たちは似ているなあと思った。どちらも自分じゃどうにもならない運命を受け入れている。しかし決定的に違うのは、俺はそこそこ楽観主義で、運が悪い時があってもその後どうにかなる、ならなくてもまあ死ぬだけだと思っているところだが、マウリは思い詰めてしまうというところだ。だったら、俺がそのマウリの辛さを受け取ればいいなと思った。俺は良くも悪くも鈍感だ。だったら彼の感受性の豊かさや苦しみを受け取って、和らげてあげたいと思う。
 アルファの男に対して、そう思うこと自体俺も驚いていた。俺は生粋のアルファだし、アルファの……ましてや男に対して、不安を和らげてあげたいだとか、守ってあげたいと思った事は一度もない。
 それでもマウリは特別だ。彼は多分繊細な人で、そして……。

「可愛いんだよな……マウリ」

 そうだ。可愛いのだ、彼は。
 顔も見えないし、素性も分からない。でも俺の腕の中で必死に泣くのを堪えていたり、羞恥心から黙ってしまうのも可愛い。

 俺は閉じていた目を開いて、自分の手を天井にかざした。
 極め付きは、最後にマウリがここにやってきた時……手を繋いだのが決定打だ。

「…………手を繋いでも、良いだろうか」

 そう彼が要求するから、俺はにべもなくそれを受け入れた。指を絡ませるように握れば、途端にマウリの体温が上がったのが抱き締める服越しに分かる。唇は震え、羞恥心から微かに覗く首元も赤くなっている。
 元からマウリの繊細さや純真さには惹かれるものがあったが、これには俺の心が撃ち抜かれた。
 なんだこれ……可愛すぎるだろ。
 今どき、手を繋ぐだけでこうなる人なんて見たことがない。オメガも性に奔放な人も増えているし、ましてやアルファの男でここまで純粋な人は居ないと思う。望まない結婚、と言っていたから既婚者なのかもしれないと思うが、この様子だと身体の関係を持たない白い結婚なのかもしれない。

 可愛いし、その心が綺麗だなと思った。
 苦しくて辛くても、多分表では弱音を吐けないんだろう。だから俺みたいなよく分からない男の元に通って、それでいて抱き締めて、手を繋ぐだけでこれほどに恥ずかしくなっている。
 顔が見たいなと思った。マウリはどんな顔をして、どんな髪色なのか。俺に抱き締められて、手を繋いで、どんな表情をしているのか。きっと顔を赤くしているんだろうと思えば、外套を剥ぎ取ってしまいたかった。むしろそのまま彼を丸ごと……身体ごと暴いてしまいたいとすら思えて、今更になって頭を抱えた。

 相手はアルファの男で、しかも多分既婚者だ。その上身分が高そうだし、何一つこの恋が叶いそうな要素が無い。せめて俺が祖国の騎士団長の地位が戻れば。そして馬と剣があれば。そして更には彼が望めばの話だが、俺が攫ってもいい。
 マウリはここでの生活が辛くて、俺はどこに行っても構わない人種だ。だったら国から追われるかもしれないが、どこか遠くに逃げて二人で暮らしたっていい。そう思うと、いかに俺が彼に入れ込んでしまっているか明らかすぎて、笑えた。

 マウリも多分、俺のことをそんなに嫌いじゃないと思う。むしろアルファに抱き締めて貰いたくてここに通うくらいだから、きっと普通とは違う嗜好なのかもしれない。俺みたいなアルファが好きだとしたら、好都合だ。アルファはアルファと恋愛的には結ばれない、という価値観がなさそうな田舎に引っ込んで、二人で毎日抱擁する。そんな世界を想像して、やはりここから出ない事には話が進まなそうだなと思った。
 だからといって、ここから出られる方法がない。鍵が三重にかかった鉄格子と、高い天井の窓だけ。壁も床も固い石材で、唯一出られるとすれば……マウリが来ていて、鍵を持っている時だけだ。

 しかし、マウリを犯罪者にはできない。俺が逃亡したら、今度は彼がここの権力者に何をされるか分からない。例えマウリが貴族だろうと、態々危ない橋を渡らせたくはない。
 それだけは絶対に、俺が許せない。



 そうして悶々とする中、日々は過ぎていった。次にいつマウリは来るんだろうか?と指折り数えて待っていたが、あの手を繋いだ日を境に、ぱったりと来なくなってしまった。
 何か忙しいのかもしれないと思い待っていたが、気が付けば一ヶ月以上経とうとしていた。
 マウリと会った日はまだ肌寒いくらいの季節だったのに、今やすっかり厳しい寒さの季節になった。貰っていたあたたかそうな服や布をくるめば問題は無いが、彼の体温が恋しいと思う。こういう寒い日こそ、抱き締めあいたい。

 俺……嫌われたかな。
 それか、飽きられたか。
 あの最後の様子からして、それは無さそうに思う。しかもどうやらマウリは俺の男娼としての代金をかなりの金額払って行ったらしい。すっかり客が居ないにも関わらず、それなりに良い食事が毎日届けられる。客がつかない男娼は食事抜きの筈なので、マウリが払っているとしか考えられなかった。
 ただ、ここには来られない事情があるのかもしれないとは思う。マウリは多く語らなかったものの、複雑な環境に身を置いて居そうだったからだ。

 そうしてまた寒い夜の日、地下の階段を降りてくる足音が聞こえた。食事か掃除か?と思い顔を上げると、そこには久しぶりの会いたい人の影があった。

「マウリ!」
「……ミカ」

 灯りを手に、いつもの分厚い外套を着たマウリが現れた。俺はあまりにも嬉しくて、思わず鉄格子に駆け寄る。
 いつものように鍵を開けて入ってきたその人を、俺は立ったまま抱き締めた。普段は余裕ぶって彼が腕の中に来るのを待っているが、そんな余裕も無い。ぎゅうと抱き締めれば、彼もそっと俺の身体に腕を回した。

「ずっと来ないから心配していた。何かあったのか?」
「色々とやるべき事があって、遅くなってしまった。申し訳無い」

 彼が、徐にすり、と俺の首元に顔を寄せた。
 俺は脳が沸騰するかと思った。この腕の中の人が愛おしくて、爆発しそうだ。
 ああ、やっぱり好きだな。
 アルファとか男とか、そういう事はどうでもいい。ただこの純粋で真面目で、繊細な人の傍に居てやりたい。そう思った。

 暫く抱き合ったままだったが、このままずっと立っていても仕方がない。とりあえず俺は体を離し、いつものようにベッドに腰掛けて彼を座らせ、再び抱き締めた。
 ずっとこうしていたいなと思いながら、彼の頭を外套ごしに撫でていると、マウリが何やら思い詰めたように口を開いた。

「ミカ。……ここから出たいか?」
「…………なに?」

 急に言われたことにびっくりして、俺は腕の力を緩めた。マウリは懐から何らいくつかの紙を取り出した。

「君を貶めた騎士団の部下と、他の騎士団長の所業については証拠が手に入った。既にシルスターンの国王陛下には届けているので、主犯たちは処刑されるだろう。これはその証拠の写しだ」
「!」
「ミカ……いや、ミカエル。シルスターンに戻るといい。騎士団長に返り咲けるばかりか、今回のこともあって、そちらの国王陛下はミカエルに栄誉爵位を授けるとの事だ」

 驚きすぎて、声も出なかった。俺は祖国のことはマウリに何一つ話していないのに、どうして祖国のことや俺の本名まで知っているのか。
 マウリはまるで祈るようにそっと俺の手を取ると、更に続けた。

「勝手にミカの事を詮索した事は謝る。しかし、私なら助けられると思った。ここから出してやれるし、祖国にも帰れるのではないかと」
「マウリ。あなたは一体……」
「私は……ステファノ・マウリ・レアンドロという。ただの貴族のいち領主だが、この国の位としては高く、王族くらいしか私に命令する事は出来ない」

 マウリ、いや、ステファノは、そっとその被っていた外套を外した。
 薄い金褐色の髪色の美丈夫がそこにはいた。鼻は高く唇は薄めで、整った顔立ちのアルファだ。しかしそれよりも印象的だったのは、その瞳だった。
 髪色と同じ薄い色の瞳は、天窓の月の光を浴びてきらきらとしている。子供の頃に見た山の鉱石のようで、美しかった。そして頑なに顔を見せなかったのに、今見せたということは……ステファノは覚悟があって、正体を明かすことにしたんだと悟ってしまった。
 彼は多分、これを最後に俺と会うことはないと考えている。

「シルスターンに帰るまでの資金は、この館のに付けてある馬車の運転手が持っているから安心してくれ。それに以前渡した小切手も、中央の銀行で換金するといい」
「そんな、何から何まで……ありがとうと言うべきだろうな、マウリ……いや、レアンドロ様?と呼んだ方がいいか」
「やめてくれ、君からそんな風に呼ばれたくない」

 泣きそうに歪んだ彼の顔にも、俺は申し訳ないがときめいた。やっぱりどんな顔でも、どんな表情でもマウリは可愛い。
 可愛いが、もう二度と会うことは無いと決めていそうな彼が恨めしい。ここを出たらずっと二人で居られたらいい。そう妄想したのに、叶いそうもない。しかも彼は、この国では王族に次ぐような身分らしい。それでは俺じゃあ太刀打ちできないか……と一瞬思ったが、俺は考え直す。

 俺は、運も悪いが良い時もある。どん底に落ちていたかと思えば台頭できるし、そして何より精神的にはかなり強い。ここを出て地位をもう一度確約出来たら、彼と一緒にいるためにどうにかする。
 俺のためにひっそりと色々画策してくれた人との未来を信じて、俺は決意した。
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