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プロローグ
プロローグ
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春の陽気に包まれ、私はこの魔術学院に入学いたしました。
暖かな陽気とは裏腹に私の心は落ち込んでいたりします。
私には「前世」の記憶があります、いえ、厳密に言えば、私は今世では「イザベラ」という名前で生まれましたが、本来の誕生とは異なっていますね。
まず、私たちは「均衡者」と呼ばれる存在です。
「均衡者」とはその世界、場合によってはその地域を管理する「神」の「駒」として、その世界を見守る存在。
世界を見守ると言っても、本来ならば四六時中見張っているという訳ではないのですが、イレギュラーが発生した場合や、イレギュラーが発生しそうな場合などは私たち「均衡者」が転生してその世界を見守ります。
その時は「均衡者」の一存でその世界に介入する事は出来ますが、基本的には傍観者でいる事が多いですね。
実際に先輩であるかたからお話を聞く限りは傍観している方が多いのですが、偶に暴走する人がいる為、私たちが介入するそうです。
因みに私たちは今回初めての使命なので、物凄く緊張していたのですが、もう十五年も生きていればそう緊張していても無駄だと悟りました。
いえ、違いますね、この世界に生きるという事はなじまなくてはなりませんので、今の家庭になれるように努力していたので意外にあっという間だったりします。
そして、最近になって余裕が生まれて来たので、寂しいという感情が私の中で生まれてしまったのです。
気づかれているかもしれませんが、私は一人この世界に降り立った訳ではありません。
「前世」で連れ添った彼もまた「均衡者」としてやってきているはずなのに、今だ再会していないので、それが不安となり、今私は落ち込んでいるのです。
「……ふぅ…。」
溜息を一つ零した時、ざわりと、周りが騒がしくなりました。
「……?」
一応言っておきますが、私が溜息を吐いたくらいでは周りはざわめきませんよ、つまりは別の要因がある訳で…。
「おい、貴様、この方がどな方かと分かっての狼藉か。」
「えっ、えっ?」
厳しい声音の次に聞こえたのは鈴を転がしたような可憐な声で、私はああ、ここはそう言えば、乙女ゲームの世界だったと思い出す。いえ、正しく言えば乙女ゲームの世界と類似した世界という方が正しいですね。
「前世」の私はそういうゲームやらライトノベルとかが普通にある時代だったので、そういうものをしなかった私でも色んな情報があった。
それに仲の良かった友達も「貴女って本当に乙女ゲームとかライトノベルのヒロインみたいだよね」と言われた。
当時の私は否定の言葉を言っていたが、今思い返せば、否定はできなかったかも、と思わなくはない。
だってーー。
フッと私は周りが自分を見ている事に気づく。
「……。」
そして、周りはまるで、問題が起こっている場所に導くように私に対して道を開け始める。
「……。」
額を押さえたくなるが、私はぐっとそれを堪える。
これも、自分が生まれた場所の影響だろう。そう自分に言い聞かせて、導かれるまま足を進める。
開かれた視界の先には三人の男子生徒と一人の女子生徒がいた。
女子生徒は転んだのかいまだに地面に座り込んでおり、それを冷ややかな目で見ている二人の男子生徒と無表情の真ん中の青年。
ドキ
心臓が跳ね上がった。
金色の髪が風で靡く。
緩慢な動作で、青年はこちらを見る。
そして、ハッとしたような顔になり、何かを呟く。
――ルナ
「嗚呼……メイヤ?」
口元に手を当てる。
涙がひとりでに零れ落ちる。
彼は眉を寄せ、私に近づく。
その時女子生徒は何を思ったのか、彼の手を掴む。
ゾワリと私の空気が動く。
触れるな。
その人に。
その人は私のものっ!
バタバタと倒れるような音がするが、私の耳には入るがそれが何なのか理解していない。
理解しているのは目に映る光景のみ。
彼は鬱陶しそうに女生徒を払いのけ、彼女が触れた手袋を脱ぎ捨て、そのまま女生徒を無視して私に近づく。
「やっと会えたな。」
「……。」
綺麗な緑色の双眸が私の凍てついていた心をドロドロに融かす。
添えられるように私の頬を包み込む暖かな手に私は思わずすり寄った。
その時、轟くような悲鳴が上がっていたのだが、再会を喜ぶ私たちの耳には一切届いていなかった。
暖かな陽気とは裏腹に私の心は落ち込んでいたりします。
私には「前世」の記憶があります、いえ、厳密に言えば、私は今世では「イザベラ」という名前で生まれましたが、本来の誕生とは異なっていますね。
まず、私たちは「均衡者」と呼ばれる存在です。
「均衡者」とはその世界、場合によってはその地域を管理する「神」の「駒」として、その世界を見守る存在。
世界を見守ると言っても、本来ならば四六時中見張っているという訳ではないのですが、イレギュラーが発生した場合や、イレギュラーが発生しそうな場合などは私たち「均衡者」が転生してその世界を見守ります。
その時は「均衡者」の一存でその世界に介入する事は出来ますが、基本的には傍観者でいる事が多いですね。
実際に先輩であるかたからお話を聞く限りは傍観している方が多いのですが、偶に暴走する人がいる為、私たちが介入するそうです。
因みに私たちは今回初めての使命なので、物凄く緊張していたのですが、もう十五年も生きていればそう緊張していても無駄だと悟りました。
いえ、違いますね、この世界に生きるという事はなじまなくてはなりませんので、今の家庭になれるように努力していたので意外にあっという間だったりします。
そして、最近になって余裕が生まれて来たので、寂しいという感情が私の中で生まれてしまったのです。
気づかれているかもしれませんが、私は一人この世界に降り立った訳ではありません。
「前世」で連れ添った彼もまた「均衡者」としてやってきているはずなのに、今だ再会していないので、それが不安となり、今私は落ち込んでいるのです。
「……ふぅ…。」
溜息を一つ零した時、ざわりと、周りが騒がしくなりました。
「……?」
一応言っておきますが、私が溜息を吐いたくらいでは周りはざわめきませんよ、つまりは別の要因がある訳で…。
「おい、貴様、この方がどな方かと分かっての狼藉か。」
「えっ、えっ?」
厳しい声音の次に聞こえたのは鈴を転がしたような可憐な声で、私はああ、ここはそう言えば、乙女ゲームの世界だったと思い出す。いえ、正しく言えば乙女ゲームの世界と類似した世界という方が正しいですね。
「前世」の私はそういうゲームやらライトノベルとかが普通にある時代だったので、そういうものをしなかった私でも色んな情報があった。
それに仲の良かった友達も「貴女って本当に乙女ゲームとかライトノベルのヒロインみたいだよね」と言われた。
当時の私は否定の言葉を言っていたが、今思い返せば、否定はできなかったかも、と思わなくはない。
だってーー。
フッと私は周りが自分を見ている事に気づく。
「……。」
そして、周りはまるで、問題が起こっている場所に導くように私に対して道を開け始める。
「……。」
額を押さえたくなるが、私はぐっとそれを堪える。
これも、自分が生まれた場所の影響だろう。そう自分に言い聞かせて、導かれるまま足を進める。
開かれた視界の先には三人の男子生徒と一人の女子生徒がいた。
女子生徒は転んだのかいまだに地面に座り込んでおり、それを冷ややかな目で見ている二人の男子生徒と無表情の真ん中の青年。
ドキ
心臓が跳ね上がった。
金色の髪が風で靡く。
緩慢な動作で、青年はこちらを見る。
そして、ハッとしたような顔になり、何かを呟く。
――ルナ
「嗚呼……メイヤ?」
口元に手を当てる。
涙がひとりでに零れ落ちる。
彼は眉を寄せ、私に近づく。
その時女子生徒は何を思ったのか、彼の手を掴む。
ゾワリと私の空気が動く。
触れるな。
その人に。
その人は私のものっ!
バタバタと倒れるような音がするが、私の耳には入るがそれが何なのか理解していない。
理解しているのは目に映る光景のみ。
彼は鬱陶しそうに女生徒を払いのけ、彼女が触れた手袋を脱ぎ捨て、そのまま女生徒を無視して私に近づく。
「やっと会えたな。」
「……。」
綺麗な緑色の双眸が私の凍てついていた心をドロドロに融かす。
添えられるように私の頬を包み込む暖かな手に私は思わずすり寄った。
その時、轟くような悲鳴が上がっていたのだが、再会を喜ぶ私たちの耳には一切届いていなかった。
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