転生夫婦～乙女ゲーム編～

第一章

２３ 《ミナ》

　私はあの方の、イザベラ様の影であり、写身（うつしみ）。

　私は作られた存在、だから、私は何か欠けている気がした。

　でも、そうじゃないと分かったのは偶然だった。

　私が何か欠けていると思っている感情はイザベラ様の中にもあって、その時、彼女はある人の名前を呼ぶ。

　その時、私の心もズクリと痛む。

　私にはあの方の記憶がある。

　でも、私にあるのは記憶のみで感情はなかった、まるで、本や映画を見ているようなそんな感情移入とでもいうのに近いと思う。

　だから、私は影だから欠けている訳ではないのかと理解するようにはなった。

　しかし、それは間違いだと理解してしまった。

　あの方は、出会った。

　最愛の半身であり。

　運命の伴侶に。

　私にはそんな相手はいない。

　だって、私は偽物で、紛い物だから。

　胸がジクジクと痛むけれども、私はそれでも、良かった。

　欠けたものを補うようにあの方に尽くせばいいのだから。

　でも、それは…、私の意地だった。

「…初めましてだな…名前は何て言うんだ？」

　そうあの人に尋ねられた瞬間、私の世界は輝きだした。

　異端だった私はもう一人じゃない。

　だって、私にはあの人がいてくれる。

　大切で。

　大好きで。

　………もし、殺されるのなら、壊されるのなら、貴方の手で殺されたい、壊されたい。

　愛する。

　愛する。

　まだ、名もなき貴方。

　どうか、私という人形があの方を傷つける時は遠慮せず、一思いにやってくださいね？