転生夫婦~乙女ゲーム編~

弥生 桜香

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第一章

45 《メイカ》

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 オレの腕の中でもがく子猫のようなこいつにオレはくつくつと笑う。

「何を笑っているんですか。」
「いや、お前はオレの中で記憶しているどのお前とも違うんだと思ってな。」
「……絶対違う事でしょう。」

 ジトリと彼女はオレを睨む。
 まあ、実際は違うけど、だけど、心のどこかでそう思ったこともあるのも事実だ。

「……まあいいですけど、それを言うなら、貴方だってわたしの記憶しているどの貴方とも違いますけどね。」
「そうか?」
「ええ、こんなにも意地悪を前面に出す人じゃなかったです。」
「……。」

 まあ、確かに嫌われたくなくて。

 側に居たくて。

 いい子ちゃんの仮面をかぶっていた気がする。

 そして、何度も、何度も、この手から多くのものを取りこぼした。

 犠牲になるのがこの身なら問題はないと思った。

 でも、今のオレは違う自分やこいつの身を犠牲にするくらいな別の物を用意してやる。

「メイカ?」

 黙り込むオレを不思議に思ったのか、子猫のようなミナは心配そうに俺を見る。

「……。」

 絶対に守りたい。

 主がイザベラを思うように。

 オレの一番はこいつだった。

 大丈夫、オレは…。

 焦躁がオレの中でくすぶっている。

 それは昔から抱えるそれのようだった。

 強く抱きしめれば甘い匂いが鼻腔から入り込む。

 愛おしい匂い。

 それがここにあるのが嬉しいのに、何故か苦しくなった。

「あっ、イザベラ様がお帰りになられる、離して。」

 藻掻く彼女にオレは渋々離す。

「じゃあ、また。」

 振り返る事無く一陣の風を追う、彼女にオレはため息を零し、主を追いかける。


 分かっていたのかもしれない。

 ミナの一番はオレじゃない事を。

 だから、これから起こる事は必然で。

 オレはそれを否定したかったのだ、だから、甘えるように彼女に触れ合う。

 ……言葉足らずのオレたちの未来は決まっていたのかもしれない。

 はじめから…。
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