転生夫婦～乙女ゲーム編～

第一章

５３

　人気がなくなり、私は口を開く事にした。

「何で、貴方があそこにいたの？」
「……。」
「答えてくれてもいいじゃない。」

　無言で進む彼に私は頬を膨らませる。
　どうやら、到着するまで口を開く気がないらしい。
　ミナは戸惑うように目の前の彼を見ている。
　それもそうだろう、彼女の知る人と彼は同じであって、違う空気を纏っているのだから。
　他の人から見れば私たちも同じようなものかもしれない、そう思うと面白かった。

「ミナ、大丈夫？」
「はい、でも、あの人は…。」
「多分、部屋に着いたらネタ晴らしをしてくれるし、してくれなくても、私がするわ。」
「……分かりました。」

　いまだに戸惑っているミナだったけれども、それ以上言う事はなかった。

　本当にこの子は優しい娘だ。

　私と違って純粋で。

　可愛らしい。

　そんな事を思っていると、ジトリと睨む彼がいた。

「何かしら？」
「卑屈な事を考えなくても、貴女は純粋で可愛らしい。」
「…………。」
「メイカ？」

　キョトンと目を見開く私。

　訝しむミナ。

　彼はそれを無視して進む。

　ふふふ、できれば貴方の口調でそれを言って欲しいけど、それをお願いするのももう少し先になるのかしら。

　私たちは彼の後についていき、そして、一つの部屋の前にやってくる。

　彼が扉を開け、そして、中に入ると、そこには漆黒の燕尾服を着たメイカがいた。