転生夫婦~乙女ゲーム編~

弥生 桜香

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第一章

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 豪華絢爛な場所に私は通される。
 そして、そこには見覚えのある顔がちらほらあった。
 私はその場で膝をつく。

「面を上げろ。」

 その声に私はゆっくりと顔を上げる。

 上げた先にはこの国の王。

 そして、妃、王子たち、自分の母、父、姉、兄、弟、アルファードの腹心となる人たちと、異質な存在が一人。

「お前はアルファードの妃となる娘をやすやすと魔族に奪われたそうだな。」
「……。」
「父上、別にいいじゃありませんか、どうせ、大したことがない娘なのですから、捨て置いても。」

 第一王子の言葉に殺気が七つ。

「そうもいかん。」

 王は殺気を受けているためか、先ほどよりも勢いがない。

「娘、その名誉を挽回する気はないか。」
「あります。」
「そうか、ならば、光の使い手である、こちらの令嬢と共に魔王を倒し、必ずや彼の令嬢を連れ戻せ。」
「畏まりました。」

 うまくいきすぎる話に私は怪訝に思う。
 そして、この場にいる人だって異常だった。
 こんなに少ないのはおかしい。
 なのに、その事を不思議と思わない人が多すぎる。
 彼は能面のような顔をしているけれども、きっと内心では煮えたぎっている事だろう。

「この旅の奪還の使者は数名で行われる。
 実子のアルファード、オルディウス家のヒース、ボラリスク家のダグラス、ファラウス家のツェリベ、ホリアムット男爵令嬢、そして、アルファードの侍従のメイカと、そなただ。」

 あまりにもありえない事に私は思わず父を見た。
 父は表情を変えていないが、その心中は一体何を思っているのか。
 その時、隣に立つ母を見れば、思わず弓を取り出しそうになった。
 にこやかに微笑んでいる母だったが、それはあくまでも仮面であり、隠しきれない怒り、憤り、不満、様々な感情があふれていた。

 ああ、この国は終わるかもしれない。

 そう思うほど母の怒りはすさまじいものだった。
 きっと、父が母の手綱を握っているから今で済んでいるのだろう。
 そして、母を刺激しないために、このように異様な光景が誕生したのだろう。
 他の知らない貴族が好き勝手に言えば、きっと刃傷沙汰になるだろう。

 血まみれの王座。

 笑えない。

 きっとこれは父の苦肉の策だったのだろう、そして、他の父の理解を得た人が他の帰属を押さえているのだろう。
 本当に不甲斐ない娘で申し訳なく思う。

「でしたら、一度ミナは家に帰させていただけますよね?」

 もう我慢の限界だったのか、母がそう口火を切った。
 誰かが何かを言おうとするが、母の殺気に押し黙らされる。
 母は私の腕を掴み、あっという間に扉の所まで連れて居く。

「それではごきげんよう。」

 母はニッコリと妖艶な笑みを浮かべ、この場を去った。
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