転生夫婦~乙女ゲーム編~

弥生 桜香

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第二章

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 パチパチと火が弾ける音を聞きながら、私は隠しナイフを磨いていた。
 寝息は四つ。

「……。」
「……。」

 私は顔を上げて、自分と同じように見張り番をしている彼を見る。

「お茶を淹れましょうか?」
「いや、大丈夫だ。」

 アルファードは首を横に振っていたが、その顔は険しかった。

「そんなに眉間にしわを寄せていたら取れなくなるわよ。」
「ならねぇよ。」
「もう。」

 私はため息を零す。

「何が不満なの?」
「分かっているだろう、お前。」

 私を軽く睨むアルファードに私はすまし顔をする。

「私は気にしないのに。」
「あいつらは本当に何を考えているんだ。」
「さあ?」

 私は火の中に枝を入れる。

「普通、お前の登板を除外するか、せめても一番目か、三番目かにするだろう。」
「仕方ないわよ。」
「どこがだ。」

 声を潜めながら私は彼の不満を聞く。

「あの子たちはまだ見張りの大変さを知らない子どもなのよ。」
「…だが。」
「かといって、あのお嬢さんを下手に組み込めば面倒じゃない?」
「……。」
「それに、殿下をどこかに組み込むとしたら、貴方と一緒になるでしょうね。」
「そっちの方がマシだ。」
「もう、私だって旅の一員なのだからこれくらいはさせて。」
「お前は面倒ごとばっかり背負いすぎだ。」
「そんなつもりはないわ。」
「あのクソ女の言いなりになって。」
「下手に断ると面倒だからよ。」
「そうかもしれないが。」
「ギスギスとした空気なのに、これ以上灯油をまいて火を付けたら手に負えなくなるわ。」
「……。」
「だから、もう少しの我慢だからね?」
「……もう少しってどのくらいだ。」
「この旅が終わるまで。」
「当初の予定は一月ほどだったが、このままいけば一年以上かかるぞ。」

 彼の言葉に私は苦笑する。
 確かにこのままの速度で言ったらそうなるだろう。

「大丈夫よ、この先の街で馬を借りましょう、そうすれば今回の遅れは取り戻せるはずだわ。」
「……この山越えでどのくらいかかる。」
「……。」
「普通なら二日あれば十分だが、確実二倍はかかるだろう。」
「ボラリスク様に背負ってもらいましょうか?」
「その方がよさそうだな。」
「……もうすぐ、交代の時間ね。」
「ああ、短い休憩だが、しっかりと休め。」
「ええ、分かっているわ。」

 私が微笑めば、アルファードはくしゃりと顔を歪め、私の髪を梳く。

「あまり触れないで、ちゃんと綺麗に出来ていないから。」
「お前は綺麗だ。」

 アルファードにそう言われ、今後もどんなにお風呂に入れない環境でも髪に触れてくるのだろうと理解し、水の魔術を使おうかと本気で悩む。
 綺麗にするくらいの魔力は無駄遣いにはならないだろうけど、それを知られた時のホリアムット男爵令嬢の反応が面倒だと思う。
 確実に何で自分に言わなかった。
 何で自分にしなかったとうるさいだろ。
 私は一人の時にこっそりと使おうと心に決めたのだった。
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