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第二章
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「ああ、昨日のお客さん、本当に来てくれたんだね。」
店の準備をしていた店主に私たちはゆっくりと向かう。
「はい、お約束していた品を持ってきました、鑑定の方をお願いします。」
「分かった、それじゃ、こっちに来てくれ。」
そう言うと、店主は奥の応接室に私たちを案内してくれた。
「どうぞ、おかけください。」
「ありがとうございます。」
私は腰掛け、アルファードは私の後ろに立っている。
「そちらの旦那さんも座ってくれても大丈夫だけど。」
「いや、お構いなく。」
「……。」
苦笑している店主に私も苦笑する。
「彼頑固なのでお気になさらず。」
「……君も大変だね。」
「それも彼の魅力なので。」
「さらりと惚気られてしまったか、ははは。」
どこか引きつった笑みを浮かべる店主に私は首を傾げるが、取り敢えず、目的の品を机の上に二十五本置く。
「……この短時間で二十五本か…、もしかしなくても、君は凄腕じゃないのか?」
「私の力量がどれほどのものかは分かりませんが、師ならば同じ時間で私の五倍は作ると思うので。」
「ご、五倍…。」
まるで化け物の話を聞いたような店主に私は目を見開く。
「それほど、可笑しいのでしょうか?」
「可笑しいというか、それは本当に人なのかな…。」
「ええ、私の兄の妻なので、普通の方ですけど…。」
「……正直普通じゃないと思うよ。」
テレーゼお義姉さまは一般人の方からしたら普通の枠からかなり外れているようで、私はこの目の前に置いた薬が売れるのか嫌な汗が流れ始める。
丁寧に効果の高い薬を作る為にゆっくりと作って、三十本できたのだ、これがいつものように作っていたらと考えるだけで、恐ろしい。
間違いなく私も化け物扱いされていただろう。
「…気を取り直して、鑑定させてもらうね。」
店主は瓶をじっと見つめ、匂いを嗅いだり、一滴垂らしたりと、真剣に調べている。
そして、顔を強張らせて、鑑定器具を用意し始めた。
「あ、あの、不備でもありました。」
「いや、不備じゃなくて……、正規の値段では難しいからね。」
「えっ?」
「……。」
黙り込んでしまう店主に私は天を仰ぐ。
確実にやらかしてしまったようだ。
後ろからの彼の視線に同情が混じっているのがよく分かる。
「うん……普通のこの薬だったら二百五十くらいで買い取らせてもらうところだけど、これは普通の薬の五倍の性能だから、二千くらいで買い取らせてもらうから、五万で買い取らせてもらうね。」
「えっと、大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ、ただ、申し訳ないけれども、この瓶全てに君の名前と、申し訳ないけれども、生産ギルドに行って君のカードを作ってほしい。」
「理由をお聞きしても。」
「この薬を通常で売ってしまうと他の薬師の株がガタ落ちになってしまう、そして、無名の君がこんなものを作ってしまうと、せっかくの商品の価値が下がってしまう上に、後々君に迷惑がかかると思うから、先に手続きをした方がいいと思うよ。」
私の作った薬は一般的なものではなく高級品となり、ブランドとして名前を登録しないといけない。
ブランドと名前を登録してなければ下手をすれば、粗悪品が出回ってしまって自分の責任として罰金など色々な刑を科せられる可能性があるのかもしれない。
「でも、こちらに先にサインをしてしまったらギルドの方に何か言われませんか?」
「大丈夫だ、君にはこれをもってギルドに持っていて欲しいからね。」
そう言うと、彼はいつの間に書き上げたのか生産ギルドの紹介状が机に広げられる。
「この先、薬などを販売するのならギルドを通した方がいいだろう、そうじゃなければ、足元を見られるだろうし、君の価値が下がってしまう。」
「あの、何でそこまで。」
「わたしの兄がこの街の生産ギルドの長をやっているからね、兄からは口を酸っぱく言われているから、君のような腕利きの薬師は貴重だと分かっている。
だから、正規の手段を取って身を守ってほしいと思うんだ。」
「分かりました、この後生産ギルドに向かわせてもらいます。」
「ああ、そうしたまえ。」
「色々ありがとうございます。」
「いや、こちらも、こんなにも素晴らしい薬師の方と出会えたのは天のお導きだと思うからね。
それじゃ、用意をするから待っていてくれ。」
「……善良な人で良かったな。」
「ええ、店を見ても大丈夫だと思ったけれども、まさか、ここまで大当たりだとは思ってもみなかったわ。」
こそりとアルファードにささやかれ、私も小声で返す。
「お前の強運は知っていたが、今回も大活躍だな。」
「本当に、驚きだわ。」
私は苦笑して、自分の手を見る。
「この幸運が少しでもミナにもあればいいのだけれども。」
「……。」
「お待たせしました。」
店主が戻ってきたので、私たちのおしゃべりはここまでで終わった。
そして、宿に戻る前に私たちは生産ギルドに向かうのだった。
店の準備をしていた店主に私たちはゆっくりと向かう。
「はい、お約束していた品を持ってきました、鑑定の方をお願いします。」
「分かった、それじゃ、こっちに来てくれ。」
そう言うと、店主は奥の応接室に私たちを案内してくれた。
「どうぞ、おかけください。」
「ありがとうございます。」
私は腰掛け、アルファードは私の後ろに立っている。
「そちらの旦那さんも座ってくれても大丈夫だけど。」
「いや、お構いなく。」
「……。」
苦笑している店主に私も苦笑する。
「彼頑固なのでお気になさらず。」
「……君も大変だね。」
「それも彼の魅力なので。」
「さらりと惚気られてしまったか、ははは。」
どこか引きつった笑みを浮かべる店主に私は首を傾げるが、取り敢えず、目的の品を机の上に二十五本置く。
「……この短時間で二十五本か…、もしかしなくても、君は凄腕じゃないのか?」
「私の力量がどれほどのものかは分かりませんが、師ならば同じ時間で私の五倍は作ると思うので。」
「ご、五倍…。」
まるで化け物の話を聞いたような店主に私は目を見開く。
「それほど、可笑しいのでしょうか?」
「可笑しいというか、それは本当に人なのかな…。」
「ええ、私の兄の妻なので、普通の方ですけど…。」
「……正直普通じゃないと思うよ。」
テレーゼお義姉さまは一般人の方からしたら普通の枠からかなり外れているようで、私はこの目の前に置いた薬が売れるのか嫌な汗が流れ始める。
丁寧に効果の高い薬を作る為にゆっくりと作って、三十本できたのだ、これがいつものように作っていたらと考えるだけで、恐ろしい。
間違いなく私も化け物扱いされていただろう。
「…気を取り直して、鑑定させてもらうね。」
店主は瓶をじっと見つめ、匂いを嗅いだり、一滴垂らしたりと、真剣に調べている。
そして、顔を強張らせて、鑑定器具を用意し始めた。
「あ、あの、不備でもありました。」
「いや、不備じゃなくて……、正規の値段では難しいからね。」
「えっ?」
「……。」
黙り込んでしまう店主に私は天を仰ぐ。
確実にやらかしてしまったようだ。
後ろからの彼の視線に同情が混じっているのがよく分かる。
「うん……普通のこの薬だったら二百五十くらいで買い取らせてもらうところだけど、これは普通の薬の五倍の性能だから、二千くらいで買い取らせてもらうから、五万で買い取らせてもらうね。」
「えっと、大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ、ただ、申し訳ないけれども、この瓶全てに君の名前と、申し訳ないけれども、生産ギルドに行って君のカードを作ってほしい。」
「理由をお聞きしても。」
「この薬を通常で売ってしまうと他の薬師の株がガタ落ちになってしまう、そして、無名の君がこんなものを作ってしまうと、せっかくの商品の価値が下がってしまう上に、後々君に迷惑がかかると思うから、先に手続きをした方がいいと思うよ。」
私の作った薬は一般的なものではなく高級品となり、ブランドとして名前を登録しないといけない。
ブランドと名前を登録してなければ下手をすれば、粗悪品が出回ってしまって自分の責任として罰金など色々な刑を科せられる可能性があるのかもしれない。
「でも、こちらに先にサインをしてしまったらギルドの方に何か言われませんか?」
「大丈夫だ、君にはこれをもってギルドに持っていて欲しいからね。」
そう言うと、彼はいつの間に書き上げたのか生産ギルドの紹介状が机に広げられる。
「この先、薬などを販売するのならギルドを通した方がいいだろう、そうじゃなければ、足元を見られるだろうし、君の価値が下がってしまう。」
「あの、何でそこまで。」
「わたしの兄がこの街の生産ギルドの長をやっているからね、兄からは口を酸っぱく言われているから、君のような腕利きの薬師は貴重だと分かっている。
だから、正規の手段を取って身を守ってほしいと思うんだ。」
「分かりました、この後生産ギルドに向かわせてもらいます。」
「ああ、そうしたまえ。」
「色々ありがとうございます。」
「いや、こちらも、こんなにも素晴らしい薬師の方と出会えたのは天のお導きだと思うからね。
それじゃ、用意をするから待っていてくれ。」
「……善良な人で良かったな。」
「ええ、店を見ても大丈夫だと思ったけれども、まさか、ここまで大当たりだとは思ってもみなかったわ。」
こそりとアルファードにささやかれ、私も小声で返す。
「お前の強運は知っていたが、今回も大活躍だな。」
「本当に、驚きだわ。」
私は苦笑して、自分の手を見る。
「この幸運が少しでもミナにもあればいいのだけれども。」
「……。」
「お待たせしました。」
店主が戻ってきたので、私たちのおしゃべりはここまでで終わった。
そして、宿に戻る前に私たちは生産ギルドに向かうのだった。
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