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第二章
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「アルファード。」
「何だ?」
「……………。」
彼の名を呼んだのはいいが、私の頭の中がぐしゃぐしゃとなっている所為でうまく言葉を紡ぐことが出来なかった。
「……イザベラ。」
「……。」
名前を呼ばれ、足を止めると。
ふらりと温かい腕に抱きしめられる。
「大丈夫だ。」
「……。」
「色々あると思う、お前は一人じゃないんだからな。」
「ありがとう。」
きっと私は不安を彼にぶつけたかったのだろう、だけど、それが怖くて、情けなくて、どうしようもなかったから、私はこれ以上言葉を出せなかったのだろう。
だけど、長い間側に居てくれる彼はそれを理解してくれていた。
それはきっと自分よりも分かっているのだろう。
「……うん、アルファード、もう大丈夫だよ。」
そう言って彼の胸を押す。
「……。」
彼はジッと私の顔を覗き込み、そして、ため息を一つ零して私から離れた。
「無理はするなよ。」
「ええ。」
私が本当に大丈夫だと分かったのか、彼はあっさりと私から離れる。
「急がないとね。」
「ああ。」
「……ねー、アルファード。」
「何だ?」
「先輩たちが出てくるなんて厄介な件なのかしら?」
「どうだろうな。」
「……何故、私たちじゃなかったのかな?」
「こっちで手一杯だと思ったんだろう。」
「……未熟と言う事ね。」
「仕方ないだろう、俺たちはこれが初めてだし、それに、先輩たちと違って経験も色々と浅いんだからな。」
「それでも他の人よりは色々な事を経験しているつもりだったけど。」
「それでもだ。」
「……。」
「俺たちは生きる事だけに必死すぎて、一歩引いてみる事は出来なかった。」
「……。」
「まあ、今もばっちり巻き込まれてしまっているがな。」
自嘲する彼に私は首を振る。
「仕方ないわ、この状況では巻き込まれるしかなかった。」
「ああ。」
「もし、一歩引いた場所で見るのならば私たちは死んだふりをしなければいけないでしょう?」
「……。」
「本当に厄介なポジションにいるのかな?」
「文句を言いたくても言う相手はいないな。」
「ええ。」
「本当に厄介な役目を負ったものだ。」
「後悔している?」
「してない。」
私の言葉に彼はまっすぐに言う。
「あのまま行けば、俺は次は廃人として生まれていただろう、それくらい魂が擦切っていた。」
「……。」
「だから、俺たちは同期よりもずっと遅く初任務が来たんだからな。」
「分かっていたんだ。」
「分からない方がおかしいだろう?」
微苦笑を浮かべる彼に私は何とも言えない気持ちなる。
「そう俯くなよ。」
私は彼の顔が見れず、いつの間にか俯いていた。
彼はその温かい手を私の頭に置いている。
「「メイヤ」…。」
「ん?」
「どうして貴方はそこまで私の側に居てくれるの?」
「…………。」
前世の時によく質問をしていたが、結局答えを貰えなかった問いだった。
彼の脳裏にはどの光景が浮かんでいるのだろう。
優しい笑みが痛い。
「お前が俺の汚れた手を握ってくれたその日から俺は、俺の命はお前に上げたいと思った。
それが無理だったら、側に居たいと思った。
寿命が違うのなら、それに近づけたいと思うほどにな。」
「………あっ。」
始めてもらった答えに私は胸を突かれる。
それはもうはじめからじゃないか。
初めて会ったのは「ミナ」と「メイカ」の時。
私自身の年齢は忘れたが、孤児となった幼いメイカに手を指し伸ばしたのが私たちの始まりだった。
その所為で彼は普通の人ではなくなってしまった。
私の所為で巻き込まれたのに、何でそんなに嬉しそうな顔が出来るのかいまだに理解できない。
でも、そのお陰で私たちは一緒になる事が出来たのは事実だった。
あそこの分岐点で私たちの道は決まってしまった。
「そんな顔をさせたくないから黙っていたのにな。」
「何で今なの?」
「どうせ、俺たちの人生はずっと続いていく、それならいい加減答えを言ってもいい気がしたからな。」
「……早くに行ってくれればいいのに。」
「言えば、お前は俺の前から去ろうとしただろう?」
「それは…。」
「せっかく捕まえられたのに、逃げられたくなかったからな。」
「………何で今は言うの?」
「それはお前が逃げられないからだよ。」
私は捕まってはいけない相手に捕まってしまったのかもしれない。
だけど。
それはもう遅かった。
私は染まってしまったのかもしれない。
彼と同じ色に。
だって、それは嫌だとは思わないのだもの。
「ええ、確かに逃げられないわね。」
「だろう。」
「逆に言えば、貴方だって私から逃れられないのよ?」
「それは願ったりかなったりだな。」
「もう。」
全く堪えていない彼に私は口ではそう言うが、心は満たされる。
「さて、これ以上遅くなれば文句を言われるな。」
「そうね。」
「それじゃ、行こう。」
彼は私の手を握り、歩みを速めた。
「何だ?」
「……………。」
彼の名を呼んだのはいいが、私の頭の中がぐしゃぐしゃとなっている所為でうまく言葉を紡ぐことが出来なかった。
「……イザベラ。」
「……。」
名前を呼ばれ、足を止めると。
ふらりと温かい腕に抱きしめられる。
「大丈夫だ。」
「……。」
「色々あると思う、お前は一人じゃないんだからな。」
「ありがとう。」
きっと私は不安を彼にぶつけたかったのだろう、だけど、それが怖くて、情けなくて、どうしようもなかったから、私はこれ以上言葉を出せなかったのだろう。
だけど、長い間側に居てくれる彼はそれを理解してくれていた。
それはきっと自分よりも分かっているのだろう。
「……うん、アルファード、もう大丈夫だよ。」
そう言って彼の胸を押す。
「……。」
彼はジッと私の顔を覗き込み、そして、ため息を一つ零して私から離れた。
「無理はするなよ。」
「ええ。」
私が本当に大丈夫だと分かったのか、彼はあっさりと私から離れる。
「急がないとね。」
「ああ。」
「……ねー、アルファード。」
「何だ?」
「先輩たちが出てくるなんて厄介な件なのかしら?」
「どうだろうな。」
「……何故、私たちじゃなかったのかな?」
「こっちで手一杯だと思ったんだろう。」
「……未熟と言う事ね。」
「仕方ないだろう、俺たちはこれが初めてだし、それに、先輩たちと違って経験も色々と浅いんだからな。」
「それでも他の人よりは色々な事を経験しているつもりだったけど。」
「それでもだ。」
「……。」
「俺たちは生きる事だけに必死すぎて、一歩引いてみる事は出来なかった。」
「……。」
「まあ、今もばっちり巻き込まれてしまっているがな。」
自嘲する彼に私は首を振る。
「仕方ないわ、この状況では巻き込まれるしかなかった。」
「ああ。」
「もし、一歩引いた場所で見るのならば私たちは死んだふりをしなければいけないでしょう?」
「……。」
「本当に厄介なポジションにいるのかな?」
「文句を言いたくても言う相手はいないな。」
「ええ。」
「本当に厄介な役目を負ったものだ。」
「後悔している?」
「してない。」
私の言葉に彼はまっすぐに言う。
「あのまま行けば、俺は次は廃人として生まれていただろう、それくらい魂が擦切っていた。」
「……。」
「だから、俺たちは同期よりもずっと遅く初任務が来たんだからな。」
「分かっていたんだ。」
「分からない方がおかしいだろう?」
微苦笑を浮かべる彼に私は何とも言えない気持ちなる。
「そう俯くなよ。」
私は彼の顔が見れず、いつの間にか俯いていた。
彼はその温かい手を私の頭に置いている。
「「メイヤ」…。」
「ん?」
「どうして貴方はそこまで私の側に居てくれるの?」
「…………。」
前世の時によく質問をしていたが、結局答えを貰えなかった問いだった。
彼の脳裏にはどの光景が浮かんでいるのだろう。
優しい笑みが痛い。
「お前が俺の汚れた手を握ってくれたその日から俺は、俺の命はお前に上げたいと思った。
それが無理だったら、側に居たいと思った。
寿命が違うのなら、それに近づけたいと思うほどにな。」
「………あっ。」
始めてもらった答えに私は胸を突かれる。
それはもうはじめからじゃないか。
初めて会ったのは「ミナ」と「メイカ」の時。
私自身の年齢は忘れたが、孤児となった幼いメイカに手を指し伸ばしたのが私たちの始まりだった。
その所為で彼は普通の人ではなくなってしまった。
私の所為で巻き込まれたのに、何でそんなに嬉しそうな顔が出来るのかいまだに理解できない。
でも、そのお陰で私たちは一緒になる事が出来たのは事実だった。
あそこの分岐点で私たちの道は決まってしまった。
「そんな顔をさせたくないから黙っていたのにな。」
「何で今なの?」
「どうせ、俺たちの人生はずっと続いていく、それならいい加減答えを言ってもいい気がしたからな。」
「……早くに行ってくれればいいのに。」
「言えば、お前は俺の前から去ろうとしただろう?」
「それは…。」
「せっかく捕まえられたのに、逃げられたくなかったからな。」
「………何で今は言うの?」
「それはお前が逃げられないからだよ。」
私は捕まってはいけない相手に捕まってしまったのかもしれない。
だけど。
それはもう遅かった。
私は染まってしまったのかもしれない。
彼と同じ色に。
だって、それは嫌だとは思わないのだもの。
「ええ、確かに逃げられないわね。」
「だろう。」
「逆に言えば、貴方だって私から逃れられないのよ?」
「それは願ったりかなったりだな。」
「もう。」
全く堪えていない彼に私は口ではそう言うが、心は満たされる。
「さて、これ以上遅くなれば文句を言われるな。」
「そうね。」
「それじゃ、行こう。」
彼は私の手を握り、歩みを速めた。
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