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第二章
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アルファードに見つけてもらった私だったが、すぐに他の人と合流する事はなかった。
「ねぇ、行かなくてもいいの?」
「その足で戻ったところでお前は絶対無茶をするだろう。」
「……。」
否定はできない。
「ほらな。」
私の表情を読み取ったアルファードはそう言った。
「だったらちゃんと足のケガが治ってからでいいだろう。」
「でも、それだと時間がかかってしまう。」
「……。」
今もミナはきっと辛い思いをしている。
「……。」
「一日だけだ。」
「えっ。」
「後一日休んで、そしたら俺に負ぶわれて移動すると約束するのなら行こう。」
「それは…。」
「大丈夫だ。」
「それはどういう意味なの?」
「ほら。」
そう言うとアルファードは地図を取り出し私に見せる。
「ここが今俺たちがいる地点。」
そう言うと彼の指がある一点を指す。
「そして、ここがあいつらと合流する場所。」
「えっ、待って。」
アルファードは私たちが目指していた街よりも先を指さしていた。
「どうしてそこなの?他の人は知らないでしょ?」
「メイカとやり取りをしているからな。」
「いつの間に…。」
「王族専用の連絡手段がある、それのお陰だ。」
「……。」
そんなのがあったなんて知らなかった。
「緊急時用だから多用はしないけどな。」
「そうなんだね。」
「ああ。」
「……。」
「それにしても、ここからだとだいぶあるんじゃないかな?」
「だが…。」
そう言うとアルファードは指を滑らせる。
「こういけば人目に付かない。」
「……。」
あまりの事に私は目を剥く。
「ちょっと待って、そのまま突っ切るつもりなの?」
「ああ。」
「ああって。」
平然としている彼に私は頭を掻き乱したくなる。
「無理よ。」
「大丈夫だこのくらいなら。」
「………。」
その自信は一体どこから来ているのだろうか。
私は洩れそうになるため息をぐっと堪える。
「確かに近いかもしれないけど、それは無理だと思う。」
「何でだ?」
本当に不思議そうな顔をしている彼に私は顔を顰める。
「私のこの足では無理よ。」
「……。」
私の言葉に彼は何故か額を押さえ項垂れる。
「ああ、お前はそういう奴だったな。」
「……。」
何故彼は仕方ない奴だという雰囲気を発しているのだろう。
そうなりたいのはこちらの方なのに。
「お前の足の調子が悪いのは分かっている、それなのに、俺が無理をさせると思うか?」
「……それは思わないけど…。」
彼が過保護なのは本当に昔から知っている。
「だろう。」
「そうだとしたら、どうやって行くの?」
「お前を背負っていく。」
「……。」
脳が処理をしたくないのか、彼の言葉が理解できなかった。
「………うん、馬鹿?」
「何でそうなる。」
「だって、私を背負って山とか川を越えるというの?」
「ああ。」
平然と答える彼に私は頭を抱える。
「本気なの?」
「勿論だ。」
彼の目を見れば本気だった。
「…私重いわよ。」
「重くないから大丈夫だ。」
「……。」
さらりと言う彼に私は言葉が出ない。
だけど、遠回りで行けば、メイカたちに合流できない。
つまりは私には選択肢なんてないのだ。
「無理は絶対にしないでね。」
「勿論だ。」
「……。」
私は色々言うのを諦めてアルファードにもたれ掛かる。
「疲れたら絶対に休んでね。」
「分かっている。」
「……本当に無理はしないで。」
「……。」
彼はまるで壊れ物を扱うかのように私の頭を撫でる。
優しくて、暖かい手。
この手に何度助けてもらっただろう。
傷つけて。
だけど、彼はそれを全て許容してくれて。
本当に私にはもったいない人だ。
「……。」
いつの間にか彼のぬくもりに安心したのか私は寝ていた。
次に目を覚ました時には夕暮れだったので、私は一体何時間眠ってしまったんだろう。
色々あり得なさ過ぎて泣きそうだ。
優しいというか、私に甘い彼はただただ笑ってゆっくり休めてよかったな、と言うのだ。
本当に彼は私に甘い。
でも、その甘さも私には嬉しいのだから、本当に手に負えない。
「ほら、ちゃんと食って、休めよ。」
彼が作ってくれた料理を口にしながら、私は色々と悔しい思いを胸に抱く。
本当に彼は私に甘い。
「ねぇ、行かなくてもいいの?」
「その足で戻ったところでお前は絶対無茶をするだろう。」
「……。」
否定はできない。
「ほらな。」
私の表情を読み取ったアルファードはそう言った。
「だったらちゃんと足のケガが治ってからでいいだろう。」
「でも、それだと時間がかかってしまう。」
「……。」
今もミナはきっと辛い思いをしている。
「……。」
「一日だけだ。」
「えっ。」
「後一日休んで、そしたら俺に負ぶわれて移動すると約束するのなら行こう。」
「それは…。」
「大丈夫だ。」
「それはどういう意味なの?」
「ほら。」
そう言うとアルファードは地図を取り出し私に見せる。
「ここが今俺たちがいる地点。」
そう言うと彼の指がある一点を指す。
「そして、ここがあいつらと合流する場所。」
「えっ、待って。」
アルファードは私たちが目指していた街よりも先を指さしていた。
「どうしてそこなの?他の人は知らないでしょ?」
「メイカとやり取りをしているからな。」
「いつの間に…。」
「王族専用の連絡手段がある、それのお陰だ。」
「……。」
そんなのがあったなんて知らなかった。
「緊急時用だから多用はしないけどな。」
「そうなんだね。」
「ああ。」
「……。」
「それにしても、ここからだとだいぶあるんじゃないかな?」
「だが…。」
そう言うとアルファードは指を滑らせる。
「こういけば人目に付かない。」
「……。」
あまりの事に私は目を剥く。
「ちょっと待って、そのまま突っ切るつもりなの?」
「ああ。」
「ああって。」
平然としている彼に私は頭を掻き乱したくなる。
「無理よ。」
「大丈夫だこのくらいなら。」
「………。」
その自信は一体どこから来ているのだろうか。
私は洩れそうになるため息をぐっと堪える。
「確かに近いかもしれないけど、それは無理だと思う。」
「何でだ?」
本当に不思議そうな顔をしている彼に私は顔を顰める。
「私のこの足では無理よ。」
「……。」
私の言葉に彼は何故か額を押さえ項垂れる。
「ああ、お前はそういう奴だったな。」
「……。」
何故彼は仕方ない奴だという雰囲気を発しているのだろう。
そうなりたいのはこちらの方なのに。
「お前の足の調子が悪いのは分かっている、それなのに、俺が無理をさせると思うか?」
「……それは思わないけど…。」
彼が過保護なのは本当に昔から知っている。
「だろう。」
「そうだとしたら、どうやって行くの?」
「お前を背負っていく。」
「……。」
脳が処理をしたくないのか、彼の言葉が理解できなかった。
「………うん、馬鹿?」
「何でそうなる。」
「だって、私を背負って山とか川を越えるというの?」
「ああ。」
平然と答える彼に私は頭を抱える。
「本気なの?」
「勿論だ。」
彼の目を見れば本気だった。
「…私重いわよ。」
「重くないから大丈夫だ。」
「……。」
さらりと言う彼に私は言葉が出ない。
だけど、遠回りで行けば、メイカたちに合流できない。
つまりは私には選択肢なんてないのだ。
「無理は絶対にしないでね。」
「勿論だ。」
「……。」
私は色々言うのを諦めてアルファードにもたれ掛かる。
「疲れたら絶対に休んでね。」
「分かっている。」
「……本当に無理はしないで。」
「……。」
彼はまるで壊れ物を扱うかのように私の頭を撫でる。
優しくて、暖かい手。
この手に何度助けてもらっただろう。
傷つけて。
だけど、彼はそれを全て許容してくれて。
本当に私にはもったいない人だ。
「……。」
いつの間にか彼のぬくもりに安心したのか私は寝ていた。
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優しいというか、私に甘い彼はただただ笑ってゆっくり休めてよかったな、と言うのだ。
本当に彼は私に甘い。
でも、その甘さも私には嬉しいのだから、本当に手に負えない。
「ほら、ちゃんと食って、休めよ。」
彼が作ってくれた料理を口にしながら、私は色々と悔しい思いを胸に抱く。
本当に彼は私に甘い。
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