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第二章
42
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「……。」
「……。」
死相漂うメイカたちがここにたどり着いたのは私たちが到着してから一週間後だった。
予定よりも早く着いた私たちも相当だと思うが、向こうも向こうだと思える。
「大丈夫ですか?」
「ああ。」
「……凄いな。」
「ええ、尊敬します。」
「本当に。」
急に態度を改めてくる面々に私は顔を引きつらせて思わずメイヤとメイカを見る。
「あー…。」
「……。」
訳を知っていそうなメイカは視線を泳がせる。
そして、それを苛立った目で見つめるメイヤ。
「……。」
メイカは目線で件の少女を見る。
それだけで、私たちは何となく悟った。
「絶対にまた、こいつに押し付ける気だろう。」
「……。」
彼の呟きに何人かはそっと目を逸らした。
子育て中の主婦仲間の会話の中にあったような気がする。
確か、一日だけ子どもを夫に預けただけなのにげんなりとなって、そんでもって、次の日にはその大変さを忘れていつも通り。
『前』のメイヤはそんな事はなかった。
子育てには真剣に向き合ってくれて、私が疲れていると分かるとすぐにベッドに寝かせるほどだった。
本当に私には勿体ないほどよくできた旦那様だった。
「もし、また、こいつに押し付けるような真似をしたら……。」
分かっているよな、とは言葉には出さない。
だけど、目でしっかりとくぎを刺しているメイヤは流石だ。
「は、はい。」
「了解。」
「分かった。」
メイヤの恐ろしさが伝わったのか彼らは大人しく頷いている。
「まあ、当然だろうな。」
メイカはその一部始終を見てどこか遠い目をしている。
「取り敢えず、休憩とするか。」
「……。」
まだ、休むのかと若干メイヤが目を細める。
「メイ…カ。」
ずっと慣れていた名前が口から出そうになり、慌てて言い換える。
「……。」
メイヤには分かったのか、彼の体が若干震えていた。
いっその事笑うのなら声に出してくれた方が私としてはそちらの方がいいのだが、かといってメイヤが声を上げて笑うと、それはそれで、目立つので何とも言えない気持ちになる。
一見通常モードのメイヤは私を見るが、目元がまだ笑っている。
「メイカ。」
「何だ。」
「少しくらい休みを入れた方がいいわ、これから先休めるかどうかわからないもの。」
「……確かに、そうかもしれないな。」
この先の地図を思い出したのか、メイヤは神妙に頷いた。
この先、休めるような街はない。
そして、あったとしても、そこは敵陣だ。
少数だから一気に抜けるか、遠回りをするかだ。
だけど、長居は出来ない。
一泊するのも命がけになるかもしれない。
「だったら、ここで休む必要がある。」
「でしょ。」
納得したメイヤに私は目を細める。
「……でも、お前の心情的には良いのか?」
「……。」
やっぱり、メイヤは優しい。
私の心を心配してくれている。
本当は急ぎたい。
彼女を救いたい手遅れになる前に。
早く、早くとはやる気持ちがある。でも、それを必死で押さえつけているのだ。
でも、私以上に急ぎたい人がいる。
私はスッと視線をメイカに向ける。
無表情で動いている彼。
心の奥底では何を考えているか分からない。
でも、彼はメイヤでもあるのだから、何となく予想は出来る。
私と同じか、それ以上に急ぎたいと思っているだろう。
「……ルナ。」
「なっ!」
いつの間にか近寄られ、耳元で囁かれた言葉に私がギョッとなる。
「どうした?」
分かっているのに涼しい顔をして聞いてくる彼に私はムッとする。
「何でもありません。」
「ふーん。」
また近づかれる前に私はスッと体を彼から離す。
それでも、彼は近付こうとするが、私が一睨みすると、彼は肩をすぼめた。
「悪かった。」
「……。」
本当に悪いと思っているのだろうか。
その目は絶対に悪いとは思っていない。
「……もう。」
「もういいのか?」
「分かってて言っているの?」
ジトリと私が睨むが彼には効果がないようだった。
「さあな。」
「本当に意地悪ね。」
「お前の気がそらせれるんなら意地悪にでも、道化にもなるさ。」
「……。」
ああ、やっぱりワザとだった。
「本当に…。」
「ん?」
優しい瞳に私は肩の力を抜く。
「人間だ、間違いを犯す。」
「……。」
「どれだけの記憶が募っても、間違いが無くなるって事はないんだ。」
その言葉は重かった、当然だろう、彼は私とは違いすべての記憶を保有し、その感情をしっかりと覚えているたのだから。
それはどれだけしんどかったのだろうか、私には想像もつかない。
彼は本当に強いと思う。
私には絶対に無理だ。
どこかで狂うだろう。
救いたい命が救えなくて。
いつもその手から零れ落ちる。
死にたくて、死にたくて。
でも、又生まれ変わって。
そして、生まれ変わってもその命は救うことが出来ずに、また手から零れ落ちる。
それが三回、それはきっと地獄だろう。
呪いと言ってもいいほどのそれはどれだけ彼を蝕んだだろう。
それでも、彼は選んだ。私を――。
苦痛を感じても。
絶望しても。
それでも、彼は選んだのだ。
たった一つの私と言う命を生き延びさせる事を、いずれ死せる命だとしても、目を背けずに延命させる為に。
それが彼の愛だった。
ふと、思う。
そんな彼をもとにした、あの子は大丈夫だろうか?
もし、ミナの身に何かあれば、彼は生きていられるだろうか?
寒気がした。
ミナと言う名前とメイカの名前にしたのは間違いだったのかもしれない。
私たちの始まりの名前、そして、メイヤにとっては呪いの始まりの名前だから。
あの時は特別な名前でいいと思ったけど、もしかしたら、彼女たちにとっては良くない名前だったかもしれない。
「……まーた、落ち込んでいるな。」
ポスリと頭を撫でられた。
「だって…。」
「ん?」
「私は余計な事をしてしまったのではないかと思って。」
「……。」
メイヤはジッと私を見たと思ったら、首を動かし、メイカを見る。
そして、口を動かすが、音は出さない。
「メイヤ?」
「行くぞ。」
「えっ?」
私はメイヤに手を引かれ、そのままその場を後にする。
私は意味が分からず、助けを求めるようにメイカを見る。
メイカは何故か疲れたような顔をして首を振っていた。
「……。」
死相漂うメイカたちがここにたどり着いたのは私たちが到着してから一週間後だった。
予定よりも早く着いた私たちも相当だと思うが、向こうも向こうだと思える。
「大丈夫ですか?」
「ああ。」
「……凄いな。」
「ええ、尊敬します。」
「本当に。」
急に態度を改めてくる面々に私は顔を引きつらせて思わずメイヤとメイカを見る。
「あー…。」
「……。」
訳を知っていそうなメイカは視線を泳がせる。
そして、それを苛立った目で見つめるメイヤ。
「……。」
メイカは目線で件の少女を見る。
それだけで、私たちは何となく悟った。
「絶対にまた、こいつに押し付ける気だろう。」
「……。」
彼の呟きに何人かはそっと目を逸らした。
子育て中の主婦仲間の会話の中にあったような気がする。
確か、一日だけ子どもを夫に預けただけなのにげんなりとなって、そんでもって、次の日にはその大変さを忘れていつも通り。
『前』のメイヤはそんな事はなかった。
子育てには真剣に向き合ってくれて、私が疲れていると分かるとすぐにベッドに寝かせるほどだった。
本当に私には勿体ないほどよくできた旦那様だった。
「もし、また、こいつに押し付けるような真似をしたら……。」
分かっているよな、とは言葉には出さない。
だけど、目でしっかりとくぎを刺しているメイヤは流石だ。
「は、はい。」
「了解。」
「分かった。」
メイヤの恐ろしさが伝わったのか彼らは大人しく頷いている。
「まあ、当然だろうな。」
メイカはその一部始終を見てどこか遠い目をしている。
「取り敢えず、休憩とするか。」
「……。」
まだ、休むのかと若干メイヤが目を細める。
「メイ…カ。」
ずっと慣れていた名前が口から出そうになり、慌てて言い換える。
「……。」
メイヤには分かったのか、彼の体が若干震えていた。
いっその事笑うのなら声に出してくれた方が私としてはそちらの方がいいのだが、かといってメイヤが声を上げて笑うと、それはそれで、目立つので何とも言えない気持ちになる。
一見通常モードのメイヤは私を見るが、目元がまだ笑っている。
「メイカ。」
「何だ。」
「少しくらい休みを入れた方がいいわ、これから先休めるかどうかわからないもの。」
「……確かに、そうかもしれないな。」
この先の地図を思い出したのか、メイヤは神妙に頷いた。
この先、休めるような街はない。
そして、あったとしても、そこは敵陣だ。
少数だから一気に抜けるか、遠回りをするかだ。
だけど、長居は出来ない。
一泊するのも命がけになるかもしれない。
「だったら、ここで休む必要がある。」
「でしょ。」
納得したメイヤに私は目を細める。
「……でも、お前の心情的には良いのか?」
「……。」
やっぱり、メイヤは優しい。
私の心を心配してくれている。
本当は急ぎたい。
彼女を救いたい手遅れになる前に。
早く、早くとはやる気持ちがある。でも、それを必死で押さえつけているのだ。
でも、私以上に急ぎたい人がいる。
私はスッと視線をメイカに向ける。
無表情で動いている彼。
心の奥底では何を考えているか分からない。
でも、彼はメイヤでもあるのだから、何となく予想は出来る。
私と同じか、それ以上に急ぎたいと思っているだろう。
「……ルナ。」
「なっ!」
いつの間にか近寄られ、耳元で囁かれた言葉に私がギョッとなる。
「どうした?」
分かっているのに涼しい顔をして聞いてくる彼に私はムッとする。
「何でもありません。」
「ふーん。」
また近づかれる前に私はスッと体を彼から離す。
それでも、彼は近付こうとするが、私が一睨みすると、彼は肩をすぼめた。
「悪かった。」
「……。」
本当に悪いと思っているのだろうか。
その目は絶対に悪いとは思っていない。
「……もう。」
「もういいのか?」
「分かってて言っているの?」
ジトリと私が睨むが彼には効果がないようだった。
「さあな。」
「本当に意地悪ね。」
「お前の気がそらせれるんなら意地悪にでも、道化にもなるさ。」
「……。」
ああ、やっぱりワザとだった。
「本当に…。」
「ん?」
優しい瞳に私は肩の力を抜く。
「人間だ、間違いを犯す。」
「……。」
「どれだけの記憶が募っても、間違いが無くなるって事はないんだ。」
その言葉は重かった、当然だろう、彼は私とは違いすべての記憶を保有し、その感情をしっかりと覚えているたのだから。
それはどれだけしんどかったのだろうか、私には想像もつかない。
彼は本当に強いと思う。
私には絶対に無理だ。
どこかで狂うだろう。
救いたい命が救えなくて。
いつもその手から零れ落ちる。
死にたくて、死にたくて。
でも、又生まれ変わって。
そして、生まれ変わってもその命は救うことが出来ずに、また手から零れ落ちる。
それが三回、それはきっと地獄だろう。
呪いと言ってもいいほどのそれはどれだけ彼を蝕んだだろう。
それでも、彼は選んだ。私を――。
苦痛を感じても。
絶望しても。
それでも、彼は選んだのだ。
たった一つの私と言う命を生き延びさせる事を、いずれ死せる命だとしても、目を背けずに延命させる為に。
それが彼の愛だった。
ふと、思う。
そんな彼をもとにした、あの子は大丈夫だろうか?
もし、ミナの身に何かあれば、彼は生きていられるだろうか?
寒気がした。
ミナと言う名前とメイカの名前にしたのは間違いだったのかもしれない。
私たちの始まりの名前、そして、メイヤにとっては呪いの始まりの名前だから。
あの時は特別な名前でいいと思ったけど、もしかしたら、彼女たちにとっては良くない名前だったかもしれない。
「……まーた、落ち込んでいるな。」
ポスリと頭を撫でられた。
「だって…。」
「ん?」
「私は余計な事をしてしまったのではないかと思って。」
「……。」
メイヤはジッと私を見たと思ったら、首を動かし、メイカを見る。
そして、口を動かすが、音は出さない。
「メイヤ?」
「行くぞ。」
「えっ?」
私はメイヤに手を引かれ、そのままその場を後にする。
私は意味が分からず、助けを求めるようにメイカを見る。
メイカは何故か疲れたような顔をして首を振っていた。
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