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北斗サイド

お昼は何にしよう

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 現実逃避をしたくても腹は減る。

「北斗は何食べるの?」

 俺の癒しが首を傾げて聞く。

「甘くないもん。」
「…うーん、何がある?」

 彼女が食べれないのにこうして真剣にパンフレットを見る姿は本当に可愛いな。

「飲食は三年生に偏ってるんだね。」
「ああ、というか、一、二年は展示か、舞台のどちらか、三年はさらに飲食が出店できる屋台からな。」
「へー、って、喫茶とかはないの?」
「衛生上の問題とか色々あって、一つの種類に絞らせてもらっている、それに予算とかがあるからな、お金だって無限にはない。」
「へー。」

 その所為で色々大変だったんだがな…。
 せっかくスピカと楽しんでいるのに、遠い目をしそうになる。
 駄目だ、もったいない。
 せっかくの平和な時間なんだ。
 楽しまないと損だろう。

「あっ、甘いものが多いね。」

 ……。
 スピカに指摘されパンフレットを見る。
 ベビーカステラに、クレープ、タピオカ、綿菓子、りんご飴。
 確かに。
 許可するときは気づかなかったが、偏っているな。
 まともに食事と言えそうなのは…。

「かろうじてカレーとタコせんか。」
「タコせんはお腹にたまらないよ。」
「だよな。」

 そりゃそうだ。
 そうなると、腹にたまるのは…カレーか。

「……あっ、先生たちの出し物で、炊き込みご飯とかから揚げとかもあるよ?」
「あー、あっちは駄目だ。」
「何で?」
「クオリティが高くて毎年行列が出来てるんだよ。」

 混んでなかったら行きたかったな。

「…マジか。」
「ああ、それならカレーだな。」

 時間もあまりないし、食えるのなら何でもいいや。

「…北斗って何が好きなの?」
「藪から棒に何だよ。」

 ヘラリと笑うスピカ。
 一体何を考えているんだ?

「だって、よくよく考えたら結構側にいるのに、北斗の好きな料理とか知らないなーと思ってさ。」

 そう言うものか、まあ、こいつの好みを完全に把握はしていないが。
 多分こいつは。

「お前は甘いもんすきだよな。」
「勿論、甘いのは正義でしょ。」
「……。」

 胸を張るスピカ。
 だけど。
 果物とかの甘みとかは美味いと思うけど。
 生クリームとかはな…。
 どうやら俺のは頬を膨らませる。考えが顔に出ていたのか、スピカは頬を膨らませる。

「美味しいのに。」
「へいへい。」
「って、そうじゃない、北斗の好きなものを聞いているんだってば。」
「俺のね…。」

 ……スピカになら言ってもいいかもしれない。
 いいかもしれないが…。
 どうする、適当に答えるか。
 本当の好物を言うか。
 ……。

「笑わないか?」
「何で?」
「……絶対に笑うなよ。」
「う、うん。」

 俺はスピカに念を押す。

「ナス田楽。」
「……。」

 ぽかんとするスピカ。
 だから、あまり言いたくなかったんだ。
 でも、たいていは笑われ、似合わないとか言われる。
 だけど、スピかはぽかんとするだけで、笑おうとはしない。

「…笑わないのか?」
「えっと、どこに笑う要素があるの?」

 首を傾げるスピカは普通だった。

「小学校の頃に笑われた。」
「……。」

 そう、小学校の時に好きな食べ物を聞かれた時、馬鹿正直に好きなモノ言った。
 すると、たいていは笑われる。
 それか失笑か。
 何だそれ、とかも言われたな。
 そして、最後には変と言われる。

「確かに小学生が言うと違和感だけど、別に好きなものはしょうがないよ、てっきり変な食べ物の掛け算だったらどうしようかと思った。」
「例えば。」
「いかの塩辛とシチュー。」
「……。」

 こいつは何と言うものを上げるんだ。
 いかの塩辛と…。
 シチュー…。
 想像してしまった。

「いや、例えだからね。」
「……そうだとしても、本当に変なものをいうな。」
「しょうがないでしょ、パッと出てきたのがそれだったんだから。」
「それでもだ。」
「もういいよ、というか、急がないとカレー売り切れになるんじゃない?」

 無理やり話を変えるスピカ。
 まあ、確かに数は限られているから可能性はあるだろうな。
 それじゃ。

「行くか。」
「うん。」

 スピカは頷き、俺たちはカレーをやっているクラスに足を向けた。
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