私モブ(幽霊)だよねっ!

弥生 桜香

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北斗サイド

スピカと言う少女

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 俺の知っているスピカは普通の女の子だった。
 弱くて。
 優しくて。
 だけど、強かった。
 何で惹かれたのか分からないけど、多分あの目が好きなのだと思う。

 柔らかく微笑む時。
 意地悪を言った時に涙目になる時。
 怒りに燃える時。
 どこか悲し気に、消えそうな時。
 目が離せない存在だったのははじめからだけど、引かれたのは多分徐々にだろう。

 大切な存在だった。
 いつまでも側に居たいと願った。
 だけど、それもタイムリミットがあった。
 一瞬の幸せを願うか。
 可能性は低いけど、長く側に居るか。
 どちらを選んでも別れが付いてくる。

 姉からの指摘があって、ようやく重い腰を上げた。
 本当に最後のギリギリになってしまったのは申し訳ないと思う、だけど、そう簡単に手放せなかったんだ。
 姉からは中途半端に突き放すなと言われていた、もし、中途半端にしてしまったら、彼女はさ迷って、二度と会えないと言っていた。
 だから、俺ができる限り頑張った。
 頑張ったんだ…。

 後悔はしているのかもしれない。
 もっと違うように出来たのではないのか。
 もっと、もっと。
 でも、もう終わってしまったんだ。

 目を閉じれば彼女の涙を溜めるその目を思い出す。
 泣かせたくなかったな。
 拭いたかったな。
 でも、俺にはその資格はないんだ。

 姉貴からもらった資料は大したものは書かれていなかった。
 あいつの素上も何も。
 ただ、渡されたのは分厚い小説だった。
 最初は目が点になった。
 なんだこれ、と思って思わずゴミ箱に捨てようかと考えたが、あの姉の事だからきっと何か意味があるのだと判断し、目を通した。

 あれは小説…いや、ゲームの台本みたいなものだな。
 分岐点までしっかり書いてくれていた。
 一つのルートはスピカを失うルート。
 もう一つはスピカの生存ルート。
 後はあり得ないけど、俺がスピカ以外と結ばれるバットエンド。

 途中で破り捨てたくなったがぐっとそれを抑え込んだ。
 読み終わった後、端が破れそうなほどヨレていた事はまあ、許容範囲内だろう。
 すぐさま姉貴に電話した。
 非常識だと怒られたが、まあ、仕方ない事だろう。
 何せ俺自身の時間が取れるのは夜か早朝しかない。
 そうなると、必然的に非常識な時間帯になってしまうのだ。
 まあ、文句をかなり言われてから、姉貴は一言。

『遅い』

 それは俺の行動なのか。
 それとも、まだその時の心が決まってない事なのか。
 そこから、姉は俺の言葉を待った。
 ポツポツとその時の俺は心の内を話した。
 正直夜中のテンションだったので内容ははっきりとは覚えていない。
 それでも、姉貴の分かりずらい発破に対する文句。
 スピカが本当に消えてしまうかの疑問。
 他にも色々。
 姉貴はよく耐えたと思う。
 多分俺は何度も同じ質問をしたところもあるだろう、それは姉貴が答えられないラインだと今だったら分かるところ。
 でも、あの時、頭が回らなかった時は気づかなかった俺の中の重要な事。
 質問方法を変え、どうにか引きづり出したのは、結局先ほど読んだシナリオもどきの事だけだった。
 そして、タイムリミットはクリスマスのあの日だった。

 姉貴からはメールで何度もスピカを殺す気なのかという文面が来ていた。
 分かっていた。
 分かっていたけど、結局踏み出せなかった。
 無事なのか、そうじゃないのか、分からない。
 姉貴からあれから何の連絡も来なかった。
 だから、俺はスピカが死んでいないと確信していた。
 もし、あいつが完全に消えてしまったのなら、姉貴は俺に言うだろう。
 姉貴はそういう人間だ。

 事実を見せ。
 前を無理やり向かせる。
 だけど、可能性があるのなら自分で探させ、そして、それを高見でクスクス笑いながら見ているのだ。
 だから、俺はスピカが多分生きているのだと確信していた。
 引継ぎとかの忙しい時期と被ってしまって正直大変だけど、それでも、彼女につながる情報を自分の手で探し出した。
 そして、そんな時、厄介な奴が俺に衝突してきたのだった…。
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