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第二章
《学ぶ 11》
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「…………ん…。」
セイラは周りの話し声によって、意識を取り戻す。
瞼を振るわせ、ゆっくりとその双眸を見せる。
そして、それに気づいたのはカルムとミラだった。
「セイラ。」
「セイラ様っ!」
セイラはぼんやりと天井を見上げ、そこが見覚えのない場所だと感じながらも、二人がいるのなら安全だと判断して、ゆっくりと体を起こす。
「大丈夫ですか?」
ミラは優しくセイラを支える。
「ええ、大丈夫。」
「喉は乾いているか?」
「ううん、平気。」
ピッチャーを持ち上げるカルムにセイラは首を横に振った。
そして、セイラは自分たち以外に大人が二人いる事に気づく。
一人はシスター。
もう一人は牧師格好をしたご老人だった。
「お嬢さん、気分はどうかな?」
「少し、気持ち悪いですが、大丈夫です。」
ニッコリと老人は微笑んでいるが、その目が笑っていない事をセイラは知っている。
「その様子だと、分かっているようだね。」
「はい。」
セイラが固く目を瞑ると、老人はセイラの頬を打つ。
「セイラっ!」
「セイラ様っ!」
二人は悲鳴を上げるが、セイラは動ずることなく、目を開ける。
「君は死ぬつもりかっ!」
「……。」
「魔力の枯渇は侮ってはならん、親から教えてもらわなかったのかっ!」
「申し訳ございません。」
「……。」
素直に謝るセイラに毒気を抜かれたのか、老人はため息を零す。
「まあ、でも、ウノを助けてもらったのは感謝する。」
「ウノちゃんは大丈夫なんですか?」
「ああ、お嬢さんの的確な判断のお陰で後遺症もなく改善に向かっている。」
「よかった…。」
セイラは自分が考えた方法が間違っていなかった事にほっと息を吐いた。
「……良くありません。」
「そうだな。」
セイラのつぶやきに二人は異常に反応を示す。
「二人とも?」
「セイラ様が目を覚まさない間、生きた心地がしませんでした。」
「静かに眠っているお前が目を覚まさなかったらと、怖かった。」
二人は同時に同じような事を吐き出す。
「……ごめんなさい。」
セイラはあれをしても死なないと確信はしていた、だけど、二人にしたら力を使ってぶっ倒れたのだから、心配して当然だろう。
「……ふむ。」
老人は顔を顰め、そして、セイラの頭を撫でる。
「無茶をした事はよくはなかったが、よい、仲間を持ったな。」
「……はい。」
家族には恵まれなかったセイラ。
だけど、こうして無償の愛を捧げ、捧げられる人がいる事はきっと彼女にとって僥倖であったことに違いない。
うっすらとセイラの目じりに涙が浮かんだが、それ以上こぼれる事はなかった。
セイラは周りの話し声によって、意識を取り戻す。
瞼を振るわせ、ゆっくりとその双眸を見せる。
そして、それに気づいたのはカルムとミラだった。
「セイラ。」
「セイラ様っ!」
セイラはぼんやりと天井を見上げ、そこが見覚えのない場所だと感じながらも、二人がいるのなら安全だと判断して、ゆっくりと体を起こす。
「大丈夫ですか?」
ミラは優しくセイラを支える。
「ええ、大丈夫。」
「喉は乾いているか?」
「ううん、平気。」
ピッチャーを持ち上げるカルムにセイラは首を横に振った。
そして、セイラは自分たち以外に大人が二人いる事に気づく。
一人はシスター。
もう一人は牧師格好をしたご老人だった。
「お嬢さん、気分はどうかな?」
「少し、気持ち悪いですが、大丈夫です。」
ニッコリと老人は微笑んでいるが、その目が笑っていない事をセイラは知っている。
「その様子だと、分かっているようだね。」
「はい。」
セイラが固く目を瞑ると、老人はセイラの頬を打つ。
「セイラっ!」
「セイラ様っ!」
二人は悲鳴を上げるが、セイラは動ずることなく、目を開ける。
「君は死ぬつもりかっ!」
「……。」
「魔力の枯渇は侮ってはならん、親から教えてもらわなかったのかっ!」
「申し訳ございません。」
「……。」
素直に謝るセイラに毒気を抜かれたのか、老人はため息を零す。
「まあ、でも、ウノを助けてもらったのは感謝する。」
「ウノちゃんは大丈夫なんですか?」
「ああ、お嬢さんの的確な判断のお陰で後遺症もなく改善に向かっている。」
「よかった…。」
セイラは自分が考えた方法が間違っていなかった事にほっと息を吐いた。
「……良くありません。」
「そうだな。」
セイラのつぶやきに二人は異常に反応を示す。
「二人とも?」
「セイラ様が目を覚まさない間、生きた心地がしませんでした。」
「静かに眠っているお前が目を覚まさなかったらと、怖かった。」
二人は同時に同じような事を吐き出す。
「……ごめんなさい。」
セイラはあれをしても死なないと確信はしていた、だけど、二人にしたら力を使ってぶっ倒れたのだから、心配して当然だろう。
「……ふむ。」
老人は顔を顰め、そして、セイラの頭を撫でる。
「無茶をした事はよくはなかったが、よい、仲間を持ったな。」
「……はい。」
家族には恵まれなかったセイラ。
だけど、こうして無償の愛を捧げ、捧げられる人がいる事はきっと彼女にとって僥倖であったことに違いない。
うっすらとセイラの目じりに涙が浮かんだが、それ以上こぼれる事はなかった。
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