今世ではのんびりしたいのですが…無理ですか…

弥生 桜香

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第三章

《弟 8》

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 ソクドは付添の人を連れ、図書館に来ていた。
 本来ならば五歳という縛りがあるのだが、付添の人がいるという条件下で特別に許可をもらったのだった。
 ソクドはキョロキョロと顔を動かしていると、右端で金色の綺麗な髪が見えた。

「……。」

 ソクドはそちらの方を見れば、緑色の綺麗な瞳の少女がソクドに手招きをしていた。
 ソクドは付添の人を見て、彼らが自分から目を離しているのを確認し、こっそりと少女の元に向かう。
 しかし、ソクドがたどり着いた時には少女はいなくなっていた。
 ソクドはまた顔を動かしていると、今度は金色の髪で青い目を持った少女が先ほどの少女と同じように自分に手招きをしていた。
 ソクドは駆け足でそちらに向かって走るが、また、少女がいなくなる。

「……。」

 そして、ソクドはまた顔を動かすと、今度はカルムが腕を組んでこちらを見ていた。
 ソクドはまた駆け出し、カルムの方に行けば、彼は逃げずにソクドを待っていた。

「…こっちに来い。」

 そう言うと、カルムは歩きなれているのか、本棚の間をすり抜けていく。
 ソクドはまるで迷路のような空間に迷いそうになるけれども、案内人であるカルムを目印にしっかりと追いかける。
 そして、たどり着いたのは緑の多い、広場だった。

「ここは?」

 疑問を抱いていたソクドだったが、奥の方にいる黒髪の少女に気づき、光が差したかのように顔を明るくさせる。

「お姉様っ!」

 大きな樹の下のベンチに腰掛け本を読んでいる少女が自分の姉だと気づいたソクドはまるで飼い主を見つけた犬のように駆け出した。

「……。」

 呼ばれたセイラは顔をゆっくりと顔上げ、顔(かんばせ)をほころばせる。
 セイラの元にたどり着いたソクドは息が上がっていたがその顔は喜びによって輝いていた。

「お姉様、おはようございますっ!」
「おはよう、ソクド。」

 汗によって張り付いた髪をそっとはがし、セイラは微笑んだ。

「カルム、ミナ、レラ、ありがとう。」
「いいえ、大したことはありません。」
「そうですよ、こんな事お茶の子さいさいです。」
「当たり前の事だろう。」

 いつの間にかセイラたちの周りにはカルムと先ほどソクドに手招きをしていた金色の髪の少女たちがいた。

「ソクド、この人たちは私の大切な人たちよ。」
「ぼくよりも?」
「……。」

 拗ねたように言うソクドにセイラは苦笑しながら彼の髪を梳く。

「私は貴方も、皆も等しく大切なのよ。」
「分かんない…。」
「ええ、分からなくてもいいの。」

 セイラは笑みを浮かべながらソクド、カルム、双子を見る。

「誰が何と言おうと、あなたたちは私の大切な人たちなのだから。」

 ソクドは凛としてそう言う姉を誇らしく思いながら、彼女の温かな手に甘えるようにすり寄った。
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