今世ではのんびりしたいのですが…無理ですか…

弥生 桜香

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第三章

《使役獣 6》

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「来てください、青龍、朱雀、白虎、玄武、麒麟。」

 セイラは人気の少ない森の中で彼らを呼ぶ。
 すると、彼らは何もない場所から姿を見せた。

「よく来てくださいました。」

 セイラはニッコリと微笑む。

「名前が決まりました。」
「まず、青龍、あなたの名前は東風(こち)。」

 青龍は長い首(こうべ)を垂らす。

「よろしくね。」
「次は、朱雀、あなたは朱花(しゅか)。」

 朱雀はそっと頭をセイラの手に擦り付ける。

「ありがとう。」
「白虎、あなたは白磁(はくじ)。」

 白虎はすりすりとセイラの足元にじゃれつく。

「ふふふ、よろしくね。」
「玄武、あなたは、北星(ほくせい)」

 身じろぎしない玄武にセイラは不安になる。

「もしかして、気に入らなかった?」

 セイラの言葉に他の東風や朱花、白磁は必死で首を振っている。

「一応気に入ってくれたのかな?」

 そう聞けば、他の子たちが首を縦に振ってくれた。
 セイラはどうやら反応が鈍いだけで、ちゃんと気に入ってくれたのだと悟る。

「よかった。」

 セイラが微笑んだ事で四神と麒麟はホッとした。

「最後になっちゃったけど、麒麟、あなたは黄昏(たそがれ)。」

 麒麟は膝を折る。

「ありがとう。」

 セイラはやっとやり切ったと天を仰いでいると、それを見守っていた三人が駆け寄ってくる。

「セイラ様、お疲れ様です。」
「ありがとう、ミラ。」
「大丈夫か?」
「うん、緊張して喉乾いちゃった。」
「セイラ様、水です。」
「ありがとう、レラ。」

 セイラはレラから水を受け取り、それを飲む。
 水が体に染み渡るような気がして、セイラはホッと息を吐く。

「みんなこれからよろしくね。」

 セイラは四神と麒麟、ひとり、ひとりに触れて、魔力を与える。
 セイラは自分と彼らが見えない糸でつながった感覚がした。

「これで…。」

 セイラは言葉を紡ごうとしたが、とたん、手の甲に熱を感じて思わず左手で押さえる。

「セイラ?」
「セイラ様?」
「セイラ様?」

 セイラの不自然な態度に三人は表情を曇らす。

「何でも――っ!」

 何でもない、そう言おうとしたセイラだったが、まるで、右の手の甲に何千という熱せられた針が刺さるような痛みにセイラは膝をつく。

「セイラっ!」
「――っ!」
「セイラ様っ!」

 カルムとレラは慌ててセイラに近寄るが、ミラだけが顔を青くさせて立ち尽くす。

「どうした。」
「痛むのですかっ!」
「……。」

 セイラは脂汗を流しながら必死で笑みを作る。

「大丈夫、よ。」
「嘘を吐くな。」
「全然大丈夫には見えません。」
「……。」

 セイラは心配する二人に苦笑し、一人立ち尽くすミラを心配する。

「ミラ。」

 セイラがミラの名前を呼べば彼女は弾かれたように顔を上げた。

「セイラ様。」

 まるで迷子のような顔をしているミラにセイラはニッコリと微笑む。

「大丈夫、大丈夫よ。」
「ですが…。」

 今にも泣きそうなミラにセイラは呼吸を整える。

「痛みが引いてきたわ、本当に大丈夫なのよ。」
「……。」

 三人はただそれを見守る事しか出来なかった。
 そして、セイラの手の甲の痛みが完全に引いたころには、彼女の手の甲には不思議紋様が浮かんでいた。
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