妹プロIFストーリー 柚希END

白石マサル

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第13話

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「ふぅ、御馳走さま。今日も美味しかったよ」
「お粗末様」

 昨日と同じように私が食器を洗っていると、お兄ちゃんが冷蔵庫を覗いていた。

「食材これしか残ってないのか。明日俺が買ってくるよ」
「いいよ、私が買ってくるから」
「でも重いだろ。何買ってくればいいか教えてくれれば大丈夫だから」
「そう? じゃあ、鳥と豚のひき肉と、キャベツ・レタス・バルサミコ酢……」
「……やっぱ二人で行こうか。荷物持ちは任せてくれ」

 結局二人で買い物に行く事になった。


 次の日の夕方、私とお兄ちゃんはスーパーに向かって並んで歩いている。

「こうして二人で買い物するのも久しぶりだね」
「……そうだな」
「どうしたの? 浮かない顔して」
「あの時みたいに知り合いに見られたらどうしようと思って……」

 私がまだ中学の頃、二人で買い出しに行った事があった。
 その時にギャルグループの柏木奈々に目撃された事が切っ掛けで私達が兄妹という事がバレた。
 きっとお兄ちゃんはまだその事を気にしているのだろう。

「大丈夫だよ。あんな偶然そうそう起きないって」
「そ、そうかなぁ」
「それに、今のお兄ちゃんなら見て貰いたい位だよ」

 と笑顔で答える。
 するとお兄ちゃんも
「そうだよな。俺ももう少し自信持たなきゃな」

 安心した表情で優しく笑い返してくる。

 
 スーパーに着き、お兄ちゃんはカートを押し、私は食材を品定めする。
 精肉コーナーに差しかかた時に、醤油を切らしている事を思い出した。

「そういえばお醤油も買わなきゃ」
「だったら俺が取ってくるよ」
「大丈夫? ソースと間違わない?」
「幾らなんでもそれは分かるって」
「じゃあお願い」
「了解」

 と言ってお兄ちゃんは私にカートを預け、何故か惣菜コーナーに向かって行った。
 そっちに醤油は売ってないよお兄ちゃん……。

 お肉を選んでいると、後ろから声を掛けられた。

「あっれ~、柚希じゃね~。何してんの?」

 聞き覚えのある声に振り向くと、そこには柏木菜々かしわぎななが立っていた。
 中学の頃に比べ、髪も明るくなってピアスの数も増えていた。
 
「スーパーなんだから買い出しに決まってるじゃん。バカなの?」
「ハァ~、相ッ変わらずアンタムカつくわ~。人が折角声掛けてやったのにさ~」
「そんな事頼んでないんだけど。で、何の用?」
「いや~、と仲良くやってんのか気になってさ~」

 とヘラヘラと笑いながら言ってくる。
 そんな態度に一瞬腹立たしさを感じるが、私は余裕の笑みで

「なんだ、そんな事? お兄ちゃんとは仲良くやってるよ」

 と答えると、丁度お兄ちゃんがお醤油を抱えて戻ってきた。

「悪い悪い、醤油探すのに手間取っちまった」
「そんな事だろうと思ったよ。だって醤油コーナーとは反対に歩いて行ったからね」
「なんだよ~。早く言ってくれよ~」
「私が教える前に行っちゃったんでしょ」

 とやり取りをしていると、菜々がキョトンとして立ち呆けていた。
 そんな菜々を見たお兄ちゃんが声を掛けた。

「柚希の友達ですか? いつも柚希がお世話になってます」
「えっ、あ、はい……」

 菜々はお兄ちゃんの全力スマイルに顔を赤くしながら、しおらしく答えた。
 すると、菜々は私の手を引き、少し離れた場所で

「ちょっと! おのイケメンと知り合いなの?」
「そうだけど」
「ねぇ~柚希~、アタシ達友達だよね~」

 と猫を被った様に言ってくる。
 それにその後に続く言葉は容易に想像できる。

「あの人紹介してよ~」
「いいよ」
「マジ! やっぱ持つべきものは親友だわ~」

 と調子のいい事を言い出した。
 どうやら本当に気づいていないらしい。

「ねぇ、ちょっとこっち来て~。この子紹介するから~」

 と言ってお兄ちゃんを呼び寄せる。
 その間、菜々は身だしなみを気にしていた。

「中学の時の同級生で、柏木菜々っていうの」
「は、はじめまして」
「はじめまして? あれ? どこかで会った事ある?」
「いえ、そんな! 会った事があればこんな素敵な人忘れたりしません!」
「はは、ありがとう。ごめんね俺の勘違いだったみたいだ」
「全ッ然大丈夫です。それより、連絡先交換してもたえませんか?」
「別に構わないけど。あっ! スマホ忘れて来たみたいだ、ごめん」
「そうですか……」
「次会う事があったら教えるよ」
「ホントですか! 約束ですよ!」
「うん、約束ね」
「えっと、高校って何処に通ってるんですか?」
「咲崎高校だよ」
「え~! 頭イイんですね! それじゃあ中居先輩とか知ってますか?」
「ああ、中居ならいつも一緒に居るよ。中居の事知ってるの?」
「中居先輩はここら辺だと有名人ですから。そういえばお名前何て言うんですか?」
「そういえばまだ自己紹介してなかったね。佐藤友也って言います」
「えッ?」

 お兄ちゃんの名前を聞いて、案の定菜々は固まってしまった。
 その姿を見て、思わず吹き出しそうになる。
 お兄ちゃんは首を傾げ私を見て来る。
 
「あ! いっけな~い、そろそろ帰らなきゃ。行こう、
「あ、ああ」
「じゃあね、柏木さん♪」

 予想通りの展開に満足した私は、お兄ちゃんの腕を引いてレジへ向かう。
 私達がその場を離れても、菜々は固まったままだった。

  

 その日の夜、ベッドでくつろいでいると、菜々から着信があった。
 恐らくお兄ちゃんの事だろうと思いながら通話に出る。

「もしもし」
「もしもし~、急にごめんね~」

 昔なら謝ってきたりしなかったのに。
 相当お兄ちゃんの事が気になってるのが分かる。

「何? 菜々から連絡なんて珍しいじゃん」
「そうだっけ~。ってかさ~、スーパーで一緒に居た男ってホントにお兄さんなの?」
「正真正銘、私のお兄ちゃんの佐藤友也だよ」
「へ、へ~。人って変わるもんだね~」
「用がないなら切るけど?」
「ちょ、ちょっと待ちなって! 用ならあるから!」

 ギャルグループのリーダーだった菜々が慌てている様子が面白い。
 それだけお兄ちゃんが魅力的に映ったのだろう。

「あんさ~、聞きたい事あんだけど~」
「だから、何?」
「お兄さん中居先輩と仲良いみたいな事言ってたけどホントなの?」
「そんな事? 中居先輩だけじゃなくて、学年のトップカーストに入ってるよ」
「ふ、ふ~ん、そうなんだ~」

 電話越しでも動揺しているのが分かる。
 
「それでさ~、お兄さんの連絡先知りたいんだけど~、もう一回会えないかな?」
「あ~、無理無理。お兄ちゃん今忙しいから」

 お兄ちゃんは夏休みのキャンプでどちらかを選ぶ。
 菜々には万に一つもチャンスは無い。
 
「柚希~? 聞いてんの~?」
「ごめんごめん。で、何か言った?」
「だから~、なんとかお兄さんともう一度合わせて欲しいの!」
「う~ん、ちょっと先になるけど、8月入ってからなら時間取れるかも」
「え? お兄さん部活でもやってるの?」
「やってないけど、中居先輩たちとキャンプにいくみたいだし、私もインターハイで忙しいから」
「全ッ然オッケー、じゃあまた連絡するからヨロシクね」
「はいはい」

 と言って通話を終えた。
 はぁ~、まさかこんな面倒臭い事になるとは。
 今はお兄ちゃんには黙っておこう。
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