妹プロIFストーリー 柚希END

白石マサル

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第27話

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 今日は夏休み最終日だ。
 みんなとは海へ一泊旅行して以来集まっていない。
 新島先輩とは部活の時に顔を合わせたりもするけど、休憩の合間に世間話をするくらいだ。
 水瀬先輩はというと、宿題に追われてゲッソリとしていた。

「よし。宿題のチェック完了、と」 

 既に終わらせておいたプリント類に目を通し終えた私は、ふと隣の部屋に視線を向ける。 

「最近、アニメ一緒に見てないなぁ」

 お兄ちゃんは隣の部屋に篭って1人作業をしている。
 私の勧めで始めたインスタの初期登録をやってるみたいだ。 

 ボーっとしてるとテーブルに置いてあったスマホが鳴った。
 沙月ちゃんからのLINEだ。

〈宿題多すぎて死んじゃいそう!!〉

 という文章と一緒に憤慨したクマのスタンプが送られてきた。
 しっかりしてそうで普段はお茶目なんだよなぁ、沙月ちゃんって。
 少し微笑ましく思いながら返事を返す。

〈大丈夫? 頑張って!〉
〈ありがと!〉

 返事を確認してスマホを置くと、今度は一枚の写真が送られてきた。
 姉妹のツーショット写真だ。
 プリントとノートが広げられたテーブルを挟んで、家着姿の2人が笑顔で写っていた。 

〈わからないとこはお姉ちゃんに教えてもらってるwww〉
〈そっか。友華さんがいれば安心だね!〉 
〈うん♪〉

 海の花火大会での一件以来、2人は一層仲の良い姉妹になった。
 以前は他人の事なんてと思っていたのに、今では自分の事のように嬉しく思う。
 感慨にふけっていると、また沙月ちゃんから

〈柚希ちゃんも友也さんと頑張ってね~〉

 と不意打ち気味にLINEが飛んできた。
 同時に旅館の裏庭での出来事を思い出し顔が熱くなってきた。
 私はどう返信していいか迷った挙句、

〈うん〉
 
 とだけ送った。
 ため息交じりにその場で仰向けになる。
 旅館での記憶が蘇ってきた。   

 私はあの夜、月明りの下でお兄ちゃんに告白した。
 不意にというか、流れで思わず言っちゃった感じだけど。 

「うぁ~どうしてあんな事しちゃったんだ私は~」

 その場で頭を抱えて悶え転げた。

 今でも自分の気持ちに変わりはない。
 でもどうしても不安は拭えない。
 だって私達は血の繋がった兄妹なんだから。


 コンコンッ


 ていうか、お兄ちゃんにはちゃんと伝わってないような。
 私はちゃんと伝えたのに、『はい』『いいえ』じゃなくて『柚希は最高の妹』とか言って。
 まぁそれも悪い気はしないけど……じゃなくって!


 コンコンコンッ


 あーもう、なんだかムカムカしてきた。


 コンコン……ガチャ

「柚希~居るか? ちょっとインスタで訊きたい事が――」 
「もう! お兄ちゃんが全部悪いんだから!」

 思った事を叫んだところで、お兄ちゃんが顔を覗かせている事に気が付いた。

「柚希……」
「あ、ごめ……いたの?」 
 
 お兄ちゃんはドアを閉じると神妙な面持ちで正面に座った。
 
「あぁ、確かに考えなしだったな。俺が悪かった」
「そんな! お兄ちゃん、そんなつもりじゃ……」

 どうしよう。
 また思わぬタイミングで変な雰囲気になっちゃった。

「柚希の言ってる事もわかるんだ。俺のためを思って言ってくれたんだって」
「お兄ちゃん……」

 もしかして、告白の答えが聞けるかも。
 期待と動揺で心臓の鼓動が早くなるのを感じた。

「確かに、もっと早く始めるべきだった」
「え?」

 なんの事?
 私が少し混乱していると、お兄ちゃんはスマホの画面を見せてきた。

「ようやく設定終わったんだよ。インスタ」
「話って、イ、インスタ……?」
「いやぁ、柚希が『わからない箇所があったら訊いていい』って言ってくれて助かったよ。プロフィールって何を書けばいいんだ?」

 やっぱりこういう展開か。
 ちょっと期待して損した。
 はぁ。
 
「ん? ため息なんかついてどうしたんだ?」
「ううん、何でもない。それで?」
「実はここまで書いてみたんだけど……」 

 相談に乗った後、お兄ちゃんは自室に戻っていった。
 最近は会議もしなくなったし、久しぶりにこっちの部屋に来てくれて嬉しかったかも。

 暫くするとまたスマホのバイブ音が鳴った。
 今度は誰だろう。 

 画面には【柏木菜々】の文字が表示されていた。
 面倒と思いながらも応答する。

「もしもし菜々。どうしたの?」
「どうしたの~? じゃないっつーの! お兄さんと合わせてくれる約束は!?」

 やばい、忘れてた。

「ごめんごめん。お兄ちゃんと中々日程合わなくてさ」
「は? 何で佐藤が日程気にすんの?」
「妹なんだし当然でしょ。もしかして2人きりで会うつもりだったの?」
「え~! 最初から2人きりとか~そんなのハズくて死んじゃう~!」

 菜々は勝手に照れて悶えている。
 だったら最初から訊かないでほしいと思った。
 
「ね~、とりあえずお兄さんの連絡先だけ教えてよ」
「ムリ。本人から直接聞いて」
「ならいつ会わせてくれんのさ!」

 話が堂々巡りになってしまった。
 さすがにもう引き延ばしは無理か。

「わかったよ。じゃあ今度の日曜はどう?」
「全ッ然オッケー!」
「わかった。お兄ちゃんに聞いてまた連絡するから待ってて」
「待つ待つ! うはー! 楽しみ~」

 3人で会う約束をすると菜々は満足した様子で通話を切った。
 
 少し気は乗らないけど、これはいい機会かもしれない。
 菜々は所謂ギャルでお兄ちゃんが今まで関わってきた事のないタイプだ。
 リア充になる為の訓練だと思えばお兄ちゃんにとってもいい経験になる。

 そんな理由で誘うとお兄ちゃんは納得した様子で予定を空けてくれた。
 


 始業式の朝。
 私はお兄ちゃんと同じ車両に乗っている。
 一学期が終わる少し前から、家を出るタイミングが同じ時は一緒に通学するようになっていた。
 
 他愛もない話をしながら、駅の改札を出るとめぐと鉢合わせた。

「おはよ、めぐ」
「ゆず~おはよう。友也先輩もおはようございます~」
「あぁ、おはよう」
 
 この3人で顔を合わせるのもテニス大会以来かぁ。
 めぐ、ちょっと前はお兄ちゃんの顔見ただけで照れてたのに。
 めぐの爽やかな笑顔を見て、私も自然と笑顔になる。

 3人で話しながら歩いていると、急にめぐが大きな声を出した。

「あ!」
「どうしたの? めぐ」

 めぐは私達の数歩後ろで突然固まってしまった。
 そして慌てた様子で時間を確認すると

「私、日直当番だったの忘れてたよ! ごめんなさい友也先輩、失礼します!」

 と言って大振りに頭を下げてから走り去ってしまった。

「相変わらずめぐは真面目だな」
「ちょっと抜けてるとこあるけどね。あ、そういえばインスタはどう?」
「結構慣れてきたよ。ほら、フォロワーもこんなに」

 そう言ってお兄ちゃんはスマホを見せてきた。

「ちゃんと頑張ってるじゃん。あ、この人私も知ってるよ!」
「へぇ、奇遇だな。そうそう、この写真なんか面白いぞ」
 
 そんな他愛もない話をしながら2人で学校に向かった。
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