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生活が安定してきた
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あれから1ヶ月が過ぎた。
私は、異世界に来てから初めて充実した生活を送っていた。
無事給金を受け取って、ふたたび魔法美容院に行き、髪と目を染め直してもらった。
騎士団の訓練施設は途方も無く広くて、有事にも備えてあるので部屋数はいっぱいあった。
なので世話係といった、底辺のものにさえ個室が与えられた。
仕事といえば剣を拾うことだけで、その仕事には直ぐに慣れた。
もともと優れた動体視力と、小さいころからの訓練で鍛えた体の俊敏さで、石や岩などを軽く避けながら、ほいさほいさと自分の仕事をこなしていく。
先日など騎士様総勢13人での訓練にも、なんなく対応していた。
その純朴な働きぶりと、生来持ち合わせたひたむきさに心打たれた平均年齢40歳の騎士様達は、まるで自分の子供のようにクラマを扱い始めた。
結局チート能力なんて無くても、全然生活するには問題ないのよねえ。この仕事って私にとってもいい訓練になるし。
一石二鳥。うふふ。
食堂のアンおばさんは優しいし、おいしいご飯を作ってくれる。
ここにいれば服も支給だから、お金を使うこともないし、ここで何年かお金をためて落ち着いたころに王都をでて、普通の女の子として生活していきたいなあ。
私も自分の家族が欲しい。
先日、騎士様が奥様と子供の写真を見せてくれて、でれっとした顔をしていた。
それを見て胸がきゅうっと痛んだ。この世界に、誰も頼れる人がいないことがこんなに心細いとは思わなかった。
自立して結婚して、子供が欲しい。
それが私の望みだった。
クラマが困ればここで親しくなった、アンやカイ、ユーリス様をはじめ、他の騎士様方も助けてくれるであろう。
でもそれとは全然違う。もっと強い強固な絆が欲しかった。
17歳の桜が願う夢にしては、あまりにも切な過ぎる夢だった。
最近の私には、生活が安定したこともあって、趣味というものができた。読書である。
王城に近いところに庶民に解放された図書館があるのだ。
本を借りるとお金がかかるが、図書館で読むぶんには無料と聞いて、直ぐ飛びついた。
訓練場から図書館まで歩いて1時間ほど。乗合馬車を使えば15分ほどで着くが、できるだけ早くお金をためたいので、迷わず歩いていくことに決めた。
仕事が休みの日には必ず、お弁当を持って図書館へ歩いて行き、一日中本を読んで過ごした後に、また徒歩で訓練場まで戻る。
本によってたくさんの、この世界の情報を得ることができた。
聖女として神殿にいたときにも本は読んだが、その情報はとても偏ったものだということに、後で気がついた。
神官達によって、聖女には彼らに都合のいい情報しか与えられていなかったのだ。
新しいことを知るのは、とても楽しかった。なんといっても魔法のある世界。元いた世界とは、似たようで異なる発展の仕方をたどっているようだ。
魔力が存在することによって、日本でいうところの文明の利器なるものは発展しなかったらしい。動力にはすべて魔石が使われている。
魔石は魔力の無いものにとっては生活必需品で、魔力があるものであっても、魔力の温存のために普段は魔石を使うらしい。
馬車や料理の火、洗濯、掃除、お風呂。生活のあらゆるところに魔石が使用されている。しかし魔石は魔獣の住む森の中でしか取れない上に、だんだんその数も減ってきているらしい。
しかも魔石がどうやってできたのかは、未だに解明されていない謎。
ってことは魔石が無くなったらどうするつもりなんだよ!こんなに魔石に頼りきりになってて、いまさら魔石無しで生活なんてできないでしょう!!
心の中で悪態をつく。
魔石の値段は、空前の品薄でうなぎのぼりで、庶民にはそろそろ手に入らないくらいの価格にまでなっているらしい。
聖女のことも調べた。
だけど情報としては何も具体的なことは書かれていなかった。
実際何をして国を助けるのかもわからない。
ただただ、聖女をあがめて称えるだけの本だった。使えない。
次に探したのは時を止める能力について。魔法関連の本には、時は魔力であっても干渉不可能だと記されていた。
どんづまりだ。魔術関連の本は片っ端から読んでみたのに、何の手がかりも無い。どうしようと思案していると、一冊の本が目に留まった。
ファンタジーの項目の中の一冊だ。
題名は「時を統べる少女」
そのまま本に導かれるように引き寄せられて、指をその上部にかけた瞬間、誰かの指があたった。
私は、異世界に来てから初めて充実した生活を送っていた。
無事給金を受け取って、ふたたび魔法美容院に行き、髪と目を染め直してもらった。
騎士団の訓練施設は途方も無く広くて、有事にも備えてあるので部屋数はいっぱいあった。
なので世話係といった、底辺のものにさえ個室が与えられた。
仕事といえば剣を拾うことだけで、その仕事には直ぐに慣れた。
もともと優れた動体視力と、小さいころからの訓練で鍛えた体の俊敏さで、石や岩などを軽く避けながら、ほいさほいさと自分の仕事をこなしていく。
先日など騎士様総勢13人での訓練にも、なんなく対応していた。
その純朴な働きぶりと、生来持ち合わせたひたむきさに心打たれた平均年齢40歳の騎士様達は、まるで自分の子供のようにクラマを扱い始めた。
結局チート能力なんて無くても、全然生活するには問題ないのよねえ。この仕事って私にとってもいい訓練になるし。
一石二鳥。うふふ。
食堂のアンおばさんは優しいし、おいしいご飯を作ってくれる。
ここにいれば服も支給だから、お金を使うこともないし、ここで何年かお金をためて落ち着いたころに王都をでて、普通の女の子として生活していきたいなあ。
私も自分の家族が欲しい。
先日、騎士様が奥様と子供の写真を見せてくれて、でれっとした顔をしていた。
それを見て胸がきゅうっと痛んだ。この世界に、誰も頼れる人がいないことがこんなに心細いとは思わなかった。
自立して結婚して、子供が欲しい。
それが私の望みだった。
クラマが困ればここで親しくなった、アンやカイ、ユーリス様をはじめ、他の騎士様方も助けてくれるであろう。
でもそれとは全然違う。もっと強い強固な絆が欲しかった。
17歳の桜が願う夢にしては、あまりにも切な過ぎる夢だった。
最近の私には、生活が安定したこともあって、趣味というものができた。読書である。
王城に近いところに庶民に解放された図書館があるのだ。
本を借りるとお金がかかるが、図書館で読むぶんには無料と聞いて、直ぐ飛びついた。
訓練場から図書館まで歩いて1時間ほど。乗合馬車を使えば15分ほどで着くが、できるだけ早くお金をためたいので、迷わず歩いていくことに決めた。
仕事が休みの日には必ず、お弁当を持って図書館へ歩いて行き、一日中本を読んで過ごした後に、また徒歩で訓練場まで戻る。
本によってたくさんの、この世界の情報を得ることができた。
聖女として神殿にいたときにも本は読んだが、その情報はとても偏ったものだということに、後で気がついた。
神官達によって、聖女には彼らに都合のいい情報しか与えられていなかったのだ。
新しいことを知るのは、とても楽しかった。なんといっても魔法のある世界。元いた世界とは、似たようで異なる発展の仕方をたどっているようだ。
魔力が存在することによって、日本でいうところの文明の利器なるものは発展しなかったらしい。動力にはすべて魔石が使われている。
魔石は魔力の無いものにとっては生活必需品で、魔力があるものであっても、魔力の温存のために普段は魔石を使うらしい。
馬車や料理の火、洗濯、掃除、お風呂。生活のあらゆるところに魔石が使用されている。しかし魔石は魔獣の住む森の中でしか取れない上に、だんだんその数も減ってきているらしい。
しかも魔石がどうやってできたのかは、未だに解明されていない謎。
ってことは魔石が無くなったらどうするつもりなんだよ!こんなに魔石に頼りきりになってて、いまさら魔石無しで生活なんてできないでしょう!!
心の中で悪態をつく。
魔石の値段は、空前の品薄でうなぎのぼりで、庶民にはそろそろ手に入らないくらいの価格にまでなっているらしい。
聖女のことも調べた。
だけど情報としては何も具体的なことは書かれていなかった。
実際何をして国を助けるのかもわからない。
ただただ、聖女をあがめて称えるだけの本だった。使えない。
次に探したのは時を止める能力について。魔法関連の本には、時は魔力であっても干渉不可能だと記されていた。
どんづまりだ。魔術関連の本は片っ端から読んでみたのに、何の手がかりも無い。どうしようと思案していると、一冊の本が目に留まった。
ファンタジーの項目の中の一冊だ。
題名は「時を統べる少女」
そのまま本に導かれるように引き寄せられて、指をその上部にかけた瞬間、誰かの指があたった。
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