時を止めるって聖女の能力にしてもチートすぎるんじゃないんでしょうか?

南 玲子

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サクラ 能力実験をする

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今日は、アルと久しぶりに会えることになった。


普段は騎士隊長の力を使って、私やアイシス様と同じ日に休暇をとれるように、裏から手を回していたようだが、今日はどうしても出席しなければならない騎士団会議があるそうで、本当に半泣きになりながら訓練場を出て行った。

本当にあの人、大丈夫なんだろうか。大体3ヶ月近くこの訓練場でいるけれど、あの方訓練なんてする必要がないくらい、むっちゃ強い。本当に強い。

ユーリス様が負けたところなど、見たことがない。
騎士様というからには、魔獣と戦ったりなにかするものじゃないのか。


等と心配しながら、アルとの待ち合わせ場所に向かう。
待ち合わせ時間よりだいぶ早く到着したはずなのに、そこにもうアルが居た。今日は馬に乗ってきたらしい。
私を見て、分かりにくい無表情のままだけど、その口角が少し持ち上がる。
こういうのツンデレって言うんだっけか??
なんか違うような気もするが、とにかく嬉しそうなので良しとした。

アルに後ろから抱きかかえられるような感じで、馬の前部に乗る。
あまり抱つかれると、女だということがばれそうなので、極力もたれかからないように腹筋に力をこめる。
その様子が気に食わなかったのか、ほとんど羽交い絞めのような体勢で馬に乗るはめになった。

「苦しっ。アルやめてってば。ほらあの通りすがりの人、絶対BLだって勘違いしたよ!!」

猛烈に抗議する。

「BL?何のことだ? オレは気にならない」

腕の力を弱める気はさらさらないらしい。
私は羞恥心にもだえながら、なんとか目的地までたどりついた。
そこは王都の端の見晴らしのいい小高い丘から、少し森にはいったところにある小さな家だった。そのすぐ傍には細い川が流れていて、あまり人の立ち寄らなさそうな隠れた場所にある。

「ここは、オレのじいさんから貰った家だ。ここなら人も来ない。能力の実験にはもってこいだろう」

少し乱暴な手つきで私の腰に手を回し、馬から下ろしてくれながら言った。

「うわぁ。結構広いんだね!お風呂もあるよ!」

「あんまり騒ぐと、埃が舞うぞ」

扉を開けたとたん、感動して舞い上がっていた私は、舞い上がる埃にむせ返った。
もっと早く言ってくれ。とばかりにアルを睨む。
アルはそんな私に構わず、今日の実験の内容を記した紙を私に突きつけた。

早速、時間を止める。


お茶の子さいさい。ふふん。
やっぱりアルだけは動けるようだ。

「外に出て、馬の時間を動かしてみろ」

「はいはい。でもこれ僕も一度、犬で試してことがある実験だから、結果は分かっているよ。僕が念じながら触れれば動き出すし、また止まるように念じながら触れれば止まる」

そういいながら、得意そうに馬を動かして、また動きを止めさせる。

「すごいな。実際自分の目で見ると驚くな」

アルが感嘆の言葉をもらす。
褒め言葉に、ますます調子に乗る。

「普通に触れれば、体勢を変えさせることもできるし、時が停止しているから重さも関係がないみたいでどんなに重いものでも動かせる。それにほらこんなこともできるんだよ」

と、川の水をすくって思いきり上に向かって放りなげた。
私の手から離れた水は小さい粒状になって空中に広がり、とたんに宙に浮いたまま停止した。
水の粒に光が当ってきらきら光っている。
その幻想的な景色に、思わず笑みがこぼれる。

「影が・・・。無い」

突然アルが呟いた。

「え?」
アルの見つめる方向に視線を移すと、確かに馬の影はあるのに私たちの影が無かった。
馬の時間を動かしてみると馬の影が消え、止めると影が戻った。
時間を停止した世界にあって、その影響を受けていないものは、影を失うらしい。
新しい発見だった。

それからも私たちは一緒に、様々な実験をした。
魔法全般に言えることだが、その魔術をかけた術者の時間が動いていない限り、魔法は時を止めた中では効力は無かった。
他の人や動物では、私が念じて手触れることによって時間を止めたり動かしたりできるが、アルだけは例外のようだ。

最後に長時間、時間を止めてみる。
アルは魔力と同じように、能力を使いすぎるとその力が枯渇するのではと、思っていたらしいが、私はぴんぴんしていた。

長時間、時を止めている間、私たちは久しぶりの会話を楽しんだ。ひとしきり話した後、無言になって二人で川の縁の芝生に横になる。
アルが突然私の目を見つめながらいう。

「ユーリスっていうやつのことを話すとき、お前はすごく楽しそうだ」

「だってユーリス様はすごいんだよ。あの年で騎士団隊長になった人は、初めてなんだって。騎士様の隊服を着ているところなんか、もう格好良すぎて身震いがしたよ。僕に気がついて話しかけてくるまでは、本当に凛々しい騎士隊長だったんだけどね。ああ見えて、脱いだら筋肉もすごくて、僕なんか片手で担がれたこともあるんだ」

「裸を・・・見たのか・・・?」

へ・・・変なところにくらいついてくるなあ。

「そりゃ、訓練場で働いているんだから、僕だけじゃなくて皆見てるよ。誤解されそうな言い方しないで欲しいな」

「オレだって筋肉はあるし、お前くらい片手で担げる」

そういって突然シャツを脱ごうとするアルを、慌てて止めた。

「ちょ、ちょ、何する気?!!僕、別に筋肉フェチじゃないから!!ユーリス様を好きで尊敬しているだけだから・・・!!」

もうすでにシャツの前をはだけているアルに、覆いかぶさるようにして阻止する。
アルの動きが突然止まって、切なそうな瞳で消え入りそうな声で呟いた。

「そいつが好きなのか・・・?」

「うん。好きだよ・・・・。あっ、もしかして誤解しているかもしれないけど、僕は男の人を性の対象にみる趣味はないから!!田舎で子沢山が、人生の目標だから!!そういう意味の好きじゃ、ないからね!」

誤解されていそうなので、完璧に否定しておく。やばいやばいこの人、私のことそういう人種だと思ってたのかな?

するといつもの無表情の中に、絶望感が一瞬見て取れたかと思ったら、搾り出すように言葉をつむいだ。

「男の人は対象外か・・・」

なんだろうこの空気。いたたまれない・・・。

「アルのことも、僕、好きだよ。目つきが悪くて無表情で顔が怖いけど、よく見てると嬉しいときと怒ったときは分かるようになったし・・・。言葉数も少ないけど、優しいことは良く分かる」

「・・・オレは怖いのか?」

「違う違う。褒めているんだから、そこはありがとうでいいんだよ。それにこの能力を知っている人が僕以外にいるだけで、なんか安心する」

私は、握りこぶしを作って力説した。
アルはそれでなんとか納得してくれたらしい。

実験を終えた私達は、いまだ日が高い中を再び同じ道を通って、馬で私を待ち合わせた場所に送ってくれると、次会える日を連絡するとだけ言って別れた。
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