《 ベータ編 》時を止めるって聖女の能力にしてもチートすぎるんじゃないんでしょうか?

南 玲子

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アイシスの悪い予感

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王城で大勢の客人がパーティーに興じている間、王城の外では騎士達や近衛兵らが王城の警備にあたっていた。魔術省から派遣された魔術者も王城の要所要所に立って、王城内外に張られた結界魔術の監視をしている。重要人物が大勢招待されている為、普段の警備よりも何倍も厳しい警備体制が敷かれている。

「そんなところで何をしているんだ?アイシス」

アイシスは王城の中央部の一番高い位置にあるテラスで、夜会用のくすんだ赤色のドレスを着たまま佇んでいる。

「あら、ヘル騎士様。見回りですか?ご苦労様ですわね。わたくしパートナーのキアヌス様が今夜は警備でお忙しいので、ここで休んでいるだけですわ。ヘル騎士様は、いつもの方はご一緒じゃないのですか?」

アイシスは相変わらずの美貌を、惜しげもなく振りまきながら艶っぽく話す。ヘル騎士はそんなアイシスの色気には微塵も興味を示さずに、クールな顔で言う。

「いったい誰のことなのかな?」

ヘル騎士様が冷静な口調で静かに聞くが、その裏には警戒心が見え隠れしている。

「あら、とぼけなくてもよろしくてよ。わたくしは知っていましたとだけ言っておきましょうか・・。うふふふ」

アイシスの妖艶な微笑みに何かを気付いたらしく、突然張り詰めていた気を緩めると、苦笑しながら言った。

「ああ、ジリアーニ学園か。覚えているよ、君はその頃から優秀だと有名だったからな。でもよく気が付いたな。ユーリスのアホなんぞ、未だに気が付いてないみたいだ」

「わたくしは元からそういったことの勘は優れているの・・・だからかしら、何だか今夜は嫌な予感がしますわ」

アイシスは夜空に浮かぶ二つの月を見上げた。今夜は二つの月が揃って満月の珍しい日だ。赤い方の月が妖しげな光を放っている。

「勘・・・か。それならば私もさっきから妙な胸騒ぎがする」

そう言って二人は共に、夜空を見上げてしばらくそのままでいた。今夜が最後に見る月になるだろうということを、二人はこの時まだ知らなかった。


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