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リュークとミュリエル
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ミュリエルはジリアーニ学園の卒業式を迎えていた。学園では最高優秀者が最後の演説を行うことになっている。ミュリエルは壇上に立ち、目下に広がるたくさんの生徒を見下ろした。卒業生たちはみな制服を着用した上にマントを羽織り、頭にジリアーニ学園のシンボルである鷲の模様の刺繡のついたベレー帽をかぶっている。
ミュリエルはそつのない文言の演説をしたあと最後に挨拶をしようと口を開いたとき、突然彼女の後方に人影が現れた。人体転移は王国の最高レベルの魔力を操るものでさえ、おいそれとできない術だ。
生徒たちだけでなく、教授たちからもどよめきが聞こえる。その人体転移の術だけでも驚かされることだというのに、そこに現れた人物は伝説の紅の王の姿のままに神々しい紅の髪と目を輝かせながらミュリエルの隣に立っている。
その人物が右手を天高くにかざすと、そのざわめきが一瞬で止まった。静寂が辺りを支配する。リュークがその獣のように鋭い目をして、壇下の人々を見回すと大きな声で叫びだした。
「お前ら、これからジリアーニ学園を卒業して、王国の為に尽くすんだろう!俺はこれからこの大陸すべての王国をブルテイン王国の名に変えるつもりだ!もうユーミア王国は既に取ったが、ステイン王国も昨日墜ちた。次はミデルバ帝国を墜とす!俺についてくる気はあるのか!!」
突然のニュースに驚いたその場にいた生徒たちは、一瞬息を飲んで突然現れた紅の王の容貌をした男を見つめていたが、中の一人が大声を上げた瞬間、渦が巻き起こるかのようにその声は段々と大きくなってきた。
「紅の王!!オレもついていく!ブルテイン王国を最大最強にするんだ!!!」
「暁の王!!万歳!」
その声を聞いて猟奇的な笑みを浮かべたリュークは、そのまま指を少し傾けた。怒った顔で何かを言おうとして口を開いたミュリエルの体がピクンと跳ねた。そのままミュリエルの唇を奪って、彼女の体を抱えたままリュークはその場から転移した。
転移した先はブルテイン王国の王城の一室だった。その部屋はミュリエルには見覚えがあった。あのダンスパーティーの日から、時々リュークはミュリエルの部屋に現れては、彼女をこの部屋に連れ込んでいた。
「んんんっーーー!!うひゃあ・・・あんっ!」
ミュリエルは息を荒くしながら目の前で笑っているリュークに反撃をした。
「もう!!どうしてあんな場所に来るのよ!!」
「ああ、レイモンドやルイスにお前は俺のもんだと覚えさせておこうかと思ってな。またお前ルイスに告白されていたろう」
だ・・・誰かあれを見ていたのか?!影なのか!!
「でも、ちゃんと断ったでしょう!!」
「いや、お前は自分が俺のものだとは言わなかった。だからお仕置きだ」
そういってもう一度あの魔法を使う。それと同時にミュリエルの口から切ない吐息がこぼれる。もうこうやって何度イかされたかわからない。恐らくリュークはあの時の事をかなり根に持っているのだろう。
なんて粘着質のやつなんだ!!
ミュリエルは心の中で毒づいた。そうして目の前の美しい獣を見る。この獣はいまだにミュリエルだけに懐いている様だ。こうやって戦闘の合間にミュリエルを連れてきては、彼女を抱く。
「わたし王帝魔術騎士になるわよ。これだけは譲れないからね」
ミュリエルはリュークにベットの上で服を脱がされながらもいう。
「ああ、勝手にするがいい。でもお前知っているか?王帝魔術騎士のトップは誰だ?」
「王帝魔術騎士団長に決まっているじゃない」
何だか嫌な予感がしてきた。
「じゃあその王帝魔術騎士団長の上はだれだ?」
「ブルテイン王国の国王よ。でもリューク、あなた国王じゃないでしょう?」
「いや、昨日調印を済ませた。だから晴れて俺はこのブルテイン王国の王だ。お前が王帝魔術騎士になるというならば、俺がお前のボスになるという事だ。俺の命令には逆らえないし、戦闘でも隣で戦うようにしよう。お前と一緒に戦う日がくるのは楽しみだな」
そんなばかな!!
「そうだ、結婚式は来週にしておいたぞ。お前はブルテイン王国の王妃になるんだ。喜べ。これでボロジュネール子爵家は未来永劫安泰の上に、ギュンターの未来も約束されたな。毎日イモのスープで過ごさなくて済むぞ」
ミュリエルは頭を抱えた。一体どこで間違ったのだろう。いや、ミュリエルは間違ってはいないはずだ。唯一ミスを犯したといえば、こんな狂犬に懐かれたことだけだ。餌を上げたわけでもないのに、どうしてここまでリュークが自分に執着するのか不思議に思う。
ミュリエルは自分の体の上で微笑むその美しい顔を見てため息をついた。
諦めよう。この獣に捕まった以上、逃れることはできないのだから。それに自分だってこの不安定な狂犬をおそらく愛しているのだろう。その証拠に彼と過ごす夜は悪くない。というか最近はいつ迎えに来てくれるのか楽しみに待っているくらいだ。
リュークが自身の頭をミュリエルの胸に押し付ける。そうして目を閉じてつぶやいた。
「俺の心が不健康だなんてもう言わせるつもりはないぞ。ミュリエル、お前はずっと俺の傍にいればいい。永遠にな・・」
これがプロポーズのつもりだとしたら笑わせるわ。本当に不器用な男なのね。
そう思いながらその流れるような赤い髪を指で撫でて、やさしく顎を乗せた。
「大好きよ、私のリューク」
ミュリエルはそつのない文言の演説をしたあと最後に挨拶をしようと口を開いたとき、突然彼女の後方に人影が現れた。人体転移は王国の最高レベルの魔力を操るものでさえ、おいそれとできない術だ。
生徒たちだけでなく、教授たちからもどよめきが聞こえる。その人体転移の術だけでも驚かされることだというのに、そこに現れた人物は伝説の紅の王の姿のままに神々しい紅の髪と目を輝かせながらミュリエルの隣に立っている。
その人物が右手を天高くにかざすと、そのざわめきが一瞬で止まった。静寂が辺りを支配する。リュークがその獣のように鋭い目をして、壇下の人々を見回すと大きな声で叫びだした。
「お前ら、これからジリアーニ学園を卒業して、王国の為に尽くすんだろう!俺はこれからこの大陸すべての王国をブルテイン王国の名に変えるつもりだ!もうユーミア王国は既に取ったが、ステイン王国も昨日墜ちた。次はミデルバ帝国を墜とす!俺についてくる気はあるのか!!」
突然のニュースに驚いたその場にいた生徒たちは、一瞬息を飲んで突然現れた紅の王の容貌をした男を見つめていたが、中の一人が大声を上げた瞬間、渦が巻き起こるかのようにその声は段々と大きくなってきた。
「紅の王!!オレもついていく!ブルテイン王国を最大最強にするんだ!!!」
「暁の王!!万歳!」
その声を聞いて猟奇的な笑みを浮かべたリュークは、そのまま指を少し傾けた。怒った顔で何かを言おうとして口を開いたミュリエルの体がピクンと跳ねた。そのままミュリエルの唇を奪って、彼女の体を抱えたままリュークはその場から転移した。
転移した先はブルテイン王国の王城の一室だった。その部屋はミュリエルには見覚えがあった。あのダンスパーティーの日から、時々リュークはミュリエルの部屋に現れては、彼女をこの部屋に連れ込んでいた。
「んんんっーーー!!うひゃあ・・・あんっ!」
ミュリエルは息を荒くしながら目の前で笑っているリュークに反撃をした。
「もう!!どうしてあんな場所に来るのよ!!」
「ああ、レイモンドやルイスにお前は俺のもんだと覚えさせておこうかと思ってな。またお前ルイスに告白されていたろう」
だ・・・誰かあれを見ていたのか?!影なのか!!
「でも、ちゃんと断ったでしょう!!」
「いや、お前は自分が俺のものだとは言わなかった。だからお仕置きだ」
そういってもう一度あの魔法を使う。それと同時にミュリエルの口から切ない吐息がこぼれる。もうこうやって何度イかされたかわからない。恐らくリュークはあの時の事をかなり根に持っているのだろう。
なんて粘着質のやつなんだ!!
ミュリエルは心の中で毒づいた。そうして目の前の美しい獣を見る。この獣はいまだにミュリエルだけに懐いている様だ。こうやって戦闘の合間にミュリエルを連れてきては、彼女を抱く。
「わたし王帝魔術騎士になるわよ。これだけは譲れないからね」
ミュリエルはリュークにベットの上で服を脱がされながらもいう。
「ああ、勝手にするがいい。でもお前知っているか?王帝魔術騎士のトップは誰だ?」
「王帝魔術騎士団長に決まっているじゃない」
何だか嫌な予感がしてきた。
「じゃあその王帝魔術騎士団長の上はだれだ?」
「ブルテイン王国の国王よ。でもリューク、あなた国王じゃないでしょう?」
「いや、昨日調印を済ませた。だから晴れて俺はこのブルテイン王国の王だ。お前が王帝魔術騎士になるというならば、俺がお前のボスになるという事だ。俺の命令には逆らえないし、戦闘でも隣で戦うようにしよう。お前と一緒に戦う日がくるのは楽しみだな」
そんなばかな!!
「そうだ、結婚式は来週にしておいたぞ。お前はブルテイン王国の王妃になるんだ。喜べ。これでボロジュネール子爵家は未来永劫安泰の上に、ギュンターの未来も約束されたな。毎日イモのスープで過ごさなくて済むぞ」
ミュリエルは頭を抱えた。一体どこで間違ったのだろう。いや、ミュリエルは間違ってはいないはずだ。唯一ミスを犯したといえば、こんな狂犬に懐かれたことだけだ。餌を上げたわけでもないのに、どうしてここまでリュークが自分に執着するのか不思議に思う。
ミュリエルは自分の体の上で微笑むその美しい顔を見てため息をついた。
諦めよう。この獣に捕まった以上、逃れることはできないのだから。それに自分だってこの不安定な狂犬をおそらく愛しているのだろう。その証拠に彼と過ごす夜は悪くない。というか最近はいつ迎えに来てくれるのか楽しみに待っているくらいだ。
リュークが自身の頭をミュリエルの胸に押し付ける。そうして目を閉じてつぶやいた。
「俺の心が不健康だなんてもう言わせるつもりはないぞ。ミュリエル、お前はずっと俺の傍にいればいい。永遠にな・・」
これがプロポーズのつもりだとしたら笑わせるわ。本当に不器用な男なのね。
そう思いながらその流れるような赤い髪を指で撫でて、やさしく顎を乗せた。
「大好きよ、私のリューク」
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えっおもしろい!
どうかどうか、続きを書いてくれると嬉しいです…!
南先生
ミュリエルとリュークの連載の
続き是非みたいです!
お願いします