「‥君に気安く話しかけられたくないな。」初恋の人に使用人と間違えられて、塩対応されちゃいました。

みるみる

文字の大きさ
1 / 39

エリーゼの家族

 
「ミシェル、ロレーヌ、お前達またドレスや宝石を買ったのか。」

 ルモンド侯爵家の当主カシューはそう言うと、綺麗に着飾った妻と娘を前にして長いため息をつきました。

「ごめんなさい、あなた。だって‥この宝石とドレスを身につけて美しくなった私をあなたに見せたかったの。」

「‥お父様、私もそうなの。ごめんなさい。」

 美しい妻と娘にそう言って抱きつかれると、カシューはまんざらでもない様子で彼女達を抱き返しました。

「ああ、責めてるわけではないんだ。気にしなくていいんだよ、妻や娘がいつも綺麗でいてくれた方が私も嬉しいからな。」

 そう言って、鼻の下を伸ばして妻ミシェルの腰を抱き寄せました。

「嬉しい!あなた、今晩はたっぷりご奉仕させて頂きますわ。」

 妻ミシェルがカシューの耳元で囁きました。

 ゴクリ、

 カシューの喉がなりました。


 この時、そんな三人の親子の様子を遠巻きに見ていた人物がいました。

 カシューのもう一人の娘エリーゼです。

 彼女は彼の最初の妻の一人娘でした。

 カシューが外交先の国でエリーゼの母を見初めて、半ば強引にこの国に連れて来て結婚し産まれたのがエリーゼなのでした。

 エリーゼの母は、慣れない外国の暮らしと夫との毎晩の激しい営みのせいで日に日に衰弱していき、エリーゼを産むとすぐに亡くなってしまったのです。

 そんな独り身のカシューを慰める為に親戚がよこした再婚相手がミシェルでした。ミシェルには二人の子供がいましたが、子供がいるとは思えないほどの若さと豊満な胸が魅力的な女性だったので、女好きのカシューはすぐに彼女に惹かれていきました。

 ミシェルは親戚のまた遠い知り合いの未亡人という‥怪しい身の上でしたが、カシューはそんな事はどうでも良いようで‥すぐに彼女と再婚し、彼女の二人の連れ子のロレーヌとその弟ガルーナを養子に迎えました。

 ミシェルの連れてきた娘ロレーヌは、エリーゼと一つ違いの16歳の地味な見た目の女の子でした。

 ですが彼女は母親譲りの豊満な胸の色気を武器にして、すぐに屋敷の男性使用人達を魅了してしまいました。

 ミシェルの連れてきたロレーヌの弟ガルーナの方は‥派手な振る舞いの母親と姉とは違い、暗くて大人しい15歳の男の子でした。

 ですが、一見大人しく見える彼も実は一癖ある男でした。エリーゼの事をいつもニヤニヤしながら見ていました。そして、すれ違いざまに彼女の胸やお尻を触ってくる嫌らしい男の子だったのです。

 エリーゼは、そんないやらしい父親や義母と妹、弟にうんざりしていましたが、彼らに対してそんな事を思う権利が自分にはない事をよく知っていました。

 何故ならエリーゼ自身も16歳で社交会へ出る様になってから色々とやらかして、今は屋敷の邸内に監禁状態になっていたからです。しかも使用人の格好をさせられてちゃっかり働かせれてもいたのです。

「おい、痴女!お前‥今日の夜も覚悟しておけよ。」

 義理の弟のガルーナがそう言ってエリーゼのドレスの裾に手を入れて太ももを撫でてきました。

 一瞬で体中に鳥肌が立ったエリーゼは、その手を払いのけるといそいで部屋へ戻りました。

「‥なに?今日の夜も‥ってどういう事?私ガルーナと何かあった?」

 エリーゼはガルーナの言った言葉が引っかかり、どうしようもなく不安になりました。

「‥私何かやらかしてしまった?」


 エリーゼは一生懸命に記憶をたどりますが、何も思い出せません。

 何故ならエリーゼは夢遊病という病気を患っていたからです。

 それに‥そもそも何故彼女が痴女と呼ばれる様になったのかと言うと‥

 彼女が実は‥異性に対してエロいハプニングを発動させてしまうという「ラッキースケベ」体質の持ち主だったからなのです。

 彼女は、成人して初めて参加する夜会でその体質を覚醒させてしまい、うっかり近くにいた男性の股間を公衆の面前で鷲掴みにしてしまう失態を犯してしまったのです。

 エリーゼの近くにいた男性‥それは人見知りしがちなエリーゼに優しく話しかけてきてくれた‥ゴディバル公爵家のグスタフ卿でした。

 彼はエリーゼにとって会った瞬間に惹かれた初恋の男性でしたが、彼自身は違ったようです。

 そのハプニングの日以降、彼はエリーゼの事を避ける様になりました。エリーゼの謝罪も全く受け入れてくれませんでした。

 エリーゼはその日から激しい中傷の的になったり、彼からも避けられ続けていたので、社交会を避けたい気持ちでいました。

 ですので、エリーゼにとって今の監禁状態は逆に救いでもあったのです。

 ですが‥監禁生活を送るようになって以降エリーゼに夢遊病のような症状が現れはじめたようなのです。

 屋敷で夜中にエリーゼを見たという使用人が相次いだのです。

 庭をフラフラ歩いたり、屋敷のキッチンで食べ物を漁っていた現場も見られていたというのです。

 そんなエリーゼが夢遊病のせいで、とうとうガルーナと深い仲にでもなったというのでしょうか。

 エリーゼはとても不快な気持ちになり、激しく落ち込みました。

あなたにおすすめの小説

警察官は今日も宴会ではっちゃける

饕餮
恋愛
居酒屋に勤める私に降りかかった災難。普段はとても真面目なのに、酔うと変態になる警察官に絡まれることだった。 そんな彼に告白されて――。 居酒屋の店員と捜査一課の警察官の、とある日常を切り取った恋になるかも知れない(?)お話。 ★下品な言葉が出てきます。苦手な方はご注意ください。 ★この物語はフィクションです。実在の団体及び登場人物とは一切関係ありません。

好きな人が嬢を身請けするのが辛くて逃げたら捕まりました~黒服の私は執着騎士に囲われる~

こじまき
恋愛
騎士が集う高級酒場「夜香楼」で女性黒服として働くソフィアは、客である寡黙な騎士ゼインに恋していた。けれど彼が指名するのはいつも人気花嬢イサナで、身請けも近いと予想されていた。 ソフィアは、叶わない想いにと嫉妬に耐えきれず、衝動的に店を去る。 もう二度と会うことはないはずだったのに、身請けした嬢と幸せに暮らしているはずの彼が追ってきて―― 「お前への愛は焼き印のように刻まれていて、もう消えない」 ――失恋したと思い込んで逃げた黒服が、執着系騎士様に捕まって囲われる話。 ※小説家になろうにも投稿しています

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。

〖完結〗旦那様が私を殺そうとしました。

藍川みいな
恋愛
私は今、この世でたった一人の愛する旦那様に殺されそうになっている。いや……もう私は殺されるだろう。 どうして、こんなことになってしまったんだろう……。 私はただ、旦那様を愛していただけなのに……。 そして私は旦那様の手で、首を絞められ意識を手放した…… はずだった。 目を覚ますと、何故か15歳の姿に戻っていた。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全11話で完結になります。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

愛を知った私は、もう二度と跪きません

阿里
恋愛
泥だらけのドレス、冷え切った食事、終わりのない書類仕事。 家族のために尽くしてきたエカテリーナに返されたのは、あまりにも残酷な追放宣告だった。 「呪われた男にでも喰われてこい」 そう笑って送り出した彼らは知らなかった。辺境伯ゼノスが、誰よりも強く、美しく、そして執着心が強い男だということを。 彼の手によって「価値ある女」へと生まれ変わったエカテリーナ。 その輝きに目が眩み、後悔して這いつくばる元家族たち。 「エカテリーナ様、どうかお助けを!」 かつて私を虐げた人たちの悲鳴を聞きながら、私は最愛の夫の腕の中で、静かに微笑む。

『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた

歩人
ファンタジー
侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。

気に入った人を片っ端から『私のモノ』と宣言する料理人を雇ってしまった

ぜんだ 夕里
恋愛
辺境の領主フィリップは慢性的な人手不足に悩んでいた。料理長が腰を抜かして引退し、塩水スープしか食べられない地獄に限界を迎えていたある日、「私、料理ができます!」と一人の少女が現れる。それは、気に入ったものは全て「私のモノ!」と宣言する困った食いしん坊エリーだった。