「‥君に気安く話しかけられたくないな。」初恋の人に使用人と間違えられて、塩対応されちゃいました。

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グスタフ・ゴディバルside 1

 ゴディバル公爵家の長男グスタフは、幼い頃から大変人見知りで虫も殺せぬ程気の弱い少年でした。


 ゴディバル公爵家は代々王宮騎士団の団長を務めてきた家系でしたので、本来ならばグスタフも剣や乗馬、それに鉄砲の扱いなど習い始めていてもおかしくはない年頃でしたので、両親は彼のこの状況を大変懸念していました。


 そこでグスタフの父ロクシタンは、彼を厳格な祖父のいる屋敷にしばらく預けて心身共に鍛えて直して貰うことにしました。


 グスタフは、王都にいる両親と離れて祖父のいる田舎へ行く事に泣いて反対しましたが、そんな抵抗も虚しく彼は馬車に乗せられて祖父の元へと送り届けられてしまいました。


 そんなグスタフを迎えた祖父ガンディーは、おどおどした様子の彼を見るなり落胆の表情を見せながら彼に舌打ちをしました。

 グスタフは祖父のその態度に大変傷付きました。それに祖父の屋敷での待遇は孫として厚遇されるわけではなく、あくまで一騎士見習いの扱いでした。

 それでもグスタフはそのうち親が迎えに来てくれるだろう事を信じて、毎日の厳しい訓練にも耐えました。

 そして屋敷の前を通る馬車や、屋敷に手紙を届ける配達員が来るたびに期待に胸を躍らせていました。

『今日こそはきっと迎えにきてくれるよね。』

 そう信じて、鞄にはいつでも帰れるように荷物を詰めたままにしていました。

 けれども一ヶ月経っても二ヶ月たっても一年経っても‥両親は彼を迎えには来てはくれませんでした。

 グスタフは結局そのまま祖父の屋敷で何年も過ごす事となりました。自分が両親に捨てられたのだと絶望しながら‥。


 そんなグスタフの心の内など知る由もない祖父は、グスタフの長年の努力を認め彼に期待を寄せました。


「グスタフ、お前がそんなに根性のある男だとは思わなかった。正直お前はすぐに根をあげて逃げ出すかと思っていたんだ。

だが、お前はそんな弱虫じゃなかった!これからは訓練ももっとレベルを上げていこう。いやあ、大したものだ。」

 祖父はそう言ってグスタフの背中をバシンと思いっきり叩いて豪快に笑いました。グスタフはそんな祖父を冷めた表情で見つめました。


『‥もうどうでも良い。訓練のレベルを上げたいなら上げれば良い。‥それでいっその事こと僕の体が壊れてしまえばいいんだ。‥剣を握れないほどにね。』


 心の中でそう毒付いたグスタフでしたが、厳しくなった訓練で倒れたり体を壊す事はありませんでした。それどころか体力も技術も飛躍的に成長し、祖父を打ち負かすほどになってしまいました。


 こうして祖父の元で心身共に鍛え上げられてきたグスタフが王都にいる両親の元に帰ってきたのは、成人を直前に控えた頃の事でした。


 彼はようやく帰ってきた王都で成人の儀を無事に済ませると、成人した若者達が集う夜会へと参加させられました。


 彼はただでさえ人見知りなのに、まわりにはこれまであまり接してこなかった若い女性がうじゃうじゃといました。


 女性達は皆、雄の孔雀が求婚をする時のように、派手な洋服を揺らして男性と体を密着させてダンスを愉しんでいました。


『‥くだらない。適当なところで帰ろう。』


 グスタフが人混みを避けながらダンスフロアーを抜けて夜会会場を出ようとしたところ、見知らぬ若い令嬢にぶつかってしまいました。


「すまない、大丈夫か?」

 ぶつかった拍子に後ろへ転倒しそうになった令嬢を支えようとしたその時でした‥。


 彼女は、咄嗟にグスタフの差し伸べた手でなく彼の股間を公衆の面前で鷲掴みにしていました。


「‥危なかった‥、ありがとうございますお手を貸して頂けて‥‥ってあれ?何これ?」

 彼女は何かを確かめるかのようにグスタフの股間をしばらく弄った後、ギューッと握りしめてきました。


「‥っ痛!何をするんだ、離せ!」


 股間を握りしめられたグスタフは、あまりの激痛にその場でのたうちまわってしまいました。

「‥え?」

 彼女はしばらく何が起こったのか分からない様子でぼーっと立っていましたが、彼女の周りのヒソヒソ声をきくうちにようやく自分が犯した失態に気づいたようでした。


「‥あっ、私‥ごめんなさい!わざとではないんです。」


 彼女は必死に謝罪してきましたが、グスタフは自分に恥をかかせた事に腹を立ててそれを無視しました。

 そして、自分の前に立ちはだかる彼女を押しのけて急足で会場を離れました。




 



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