「‥君に気安く話しかけられたくないな。」初恋の人に使用人と間違えられて、塩対応されちゃいました。

みるみる

文字の大きさ
11 / 39

ルモンド侯爵家の家族会議 1

 エリーゼが傷心のまま帰宅すると、屋敷の中がざわついているのに気付きました。

『何の騒ぎかしら。』

 エリーゼは自分の留守中に何が起きたのか気になりつつも、皆に見つからないようにそっと自分の部屋に向かいました。

「カルディ‥ただいま。‥カルディ‥?」

 出かける前にベッドで寝ていたカルディが居なくなっていました。  

「‥いつもはもっと眠ってるはずなのに、起きてどこかへ行ってしまったのかしら。」

 エリーゼはカルディに使われて汚れた枕カバーを外し、そこへ頭をのせて少し横になりました。

「何だか精神的に疲れてしまったわ。少し眠ろうかな。」

 そう言って目を閉じてみたエリーゼでしたが、頭の中で今日起きた出来事を何度も反芻してしまい、なかなか眠れずにいました。

「あー、私の馬鹿!恥ずかしい!」

 そう言って、手で顔を覆ったまま頭を振ってみたり、足をバタバタさせていると‥誰かの視線を感じ、慌てて飛び起きました。

「‥えっと、エリーゼ?」

「あっ、カルディ!カルディどこに行ってたのよ。」

「‥ああ、まあちょっとね。それよりもエリーゼ、父さんに会った?父さんはなんて言ってた?僕はもう家に帰れるのかな?」

「あっ!ごめん‥、その事なんだけど‥色々あってその‥実はナポリ医師のところへは行ってないの。」

「は?まじでそれ言ってるの?」

「‥だから、ごめんって。」

「‥まあ、いいよ。それについさっき僕がこのお屋敷に連れて来られた本当の理由も分かったし、それに当分このお屋敷から出られないって事も分かった事だし。」

「‥‥カルディがこの家にきた本当の理由‥?」

「そう。僕はエリーゼの夢遊病の件でここへ来たんだと思ってたんだけど、どうも違うみたいなんだ。それがさっき分かったんだ、侯爵様と話しててね。」

「‥‥お父様といつ話したの?」

「エリーゼが出て行った後に侯爵様に呼び出されたんだ。‥僕はてっきりエリーゼを呼び捨てにしたり、ぞんざいに扱ってる事について叱られてしまうのかと心配したんだけど、そうじゃなかった。

侯爵様は僕を君と結婚させようと考えているようだ。」

「‥結婚!?やだ、初耳なんだけど。あっ、カルディも私と結婚だなんて嫌よね?今から早速お父様のところへ行って抗議してくるわね。」

 エリーゼはカルディにそう言うと、ベッドから起き上がり、早速父親の書斎へ向かおうと歩き出しました。

「あっ、ちょっと待って。僕は断るつもりはないよ。」

「‥だってカルディは美人が好きなんでしょ?それにカルディが将来ナポリ医師の後を継ぐのなら、もっと他に良い結婚相手が現れそうじゃない?」

「君のような有力な貴族の御令嬢をお嫁さんに出来るんだ、いい縁組じゃないか。それに‥たとえ美人じゃなくても、貴族じゃなくても僕はエリーゼとなら結婚しても良いって思ってるんだ。」

「‥まさか私の事が好きだとか言うんじゃないでしょうね。」

「好きだよ。一緒にいてこんなに楽だった女は、エリーゼが初めてなんだ。」

「‥‥一緒にいて楽だからって‥。それなら何も結婚しなくてもお友達で良いんじゃない。」

「いや、友達ではなくて結婚‥でないとお互い利益がないだろ?そういった利益も含めて君となら結婚してもいいかなって思ったんだ。

 それに、エリーゼが僕と結婚してくれれば、君を美容に関する専門の医師として正式に我が医院へ迎え入れるつもりだよ。‥どう良い話でしょ。」

「‥でも結婚だよ?」

「うん、結婚だよ。」

「‥‥。」

「まあ、そう言う事だからよろしくね。」

「‥いえ、納得してないですから!」

「ハハハ、そう言わないで。もう決まった事なんだから。」

 そう言ってカルディはエリーゼの頬を指でつついてきました。

「‥カルディのそういう軽いところが‥私は嫌いよ。」

「はいはい。じゃあ、僕はもう一眠りするから。」

「‥あっ、私が今から寝るところだったのに!」

 エリーゼがそう言って、ベッドに向かうカルディの腕を掴むと‥逆にカルディに手首を掴まれてベッドに押し倒されてしまいました。

「‥なら一緒に寝る?」

「‥なっ、何するの!離してよっ!」

 エリーゼはカルディに両手を掴まれベッドに押さえつけられ、足をバタバタさせながら必死に抗議しました。

「‥エリーゼ。君はラッキースケベに囚われすぎだよ。そんな馬鹿らしいハプニングに頼らなくても、こうやって男女は自然に親密になれるもんなんだよ。」

「‥とりあえずどいて。苦しいからどいて!」

「‥面倒くさいな。これだから男慣れしてない処女は‥。」

「えっ、今なんか言った?」

「‥えっ?別に何も言ってないよ。‥それより二人共眠いんだから、さっさと一緒に寝ようよ。‥エリーゼの期待してるような事は何もしないから。」

「‥なっ、私は別に何も期待してなんかいないわ!」

「ハハハ、ならすぐに寝よう。」

「‥ちょっと‥。」

 スースー

 エリーゼが戸惑う中、カルディはエリーゼの上に覆い被さったまま、眠りについてしまいました。

「‥苦し‥い、重たいのよ!」

 エリーゼは必死にカルディの体を持ち上げると、やっとの思いでカルディの体の下から抜け出せました。

 フゥーッ、

 エリーゼがベッドに腰掛けて一息つくと、執事がやってきました。

 コンコン、

「‥エリーゼお嬢様、侯爵様がお呼びです。」

「結婚のことかしら?分かったわ、すぐに行く。」

 エリーゼはすぐに部屋を出ると、執事を従えて侯爵のいる部屋へ向かいました。

 コンコン、

「入ってくれ。」

 そう言って扉を開けられた部屋の中には、夫人やロレーヌ、それにガルーナまでがいました。

 ロレーヌは俯いたまま泣いていたし、ガルーナはエリーゼを見るなりバツが悪そうに顔を背けてしまいました。

『何、この雰囲気。私の留守中に一体何があったというのよ。』


 エリーゼは訳が分からぬまま侯爵の指示した席につきました。


 これからどうやらルモンド侯爵家の家族会議が始まるようです。


 一体何の話が出るのか‥。


 エリーゼは部屋にいる他の家族達の異様な雰囲気に戸惑いながらも、この期にカルディとの結婚に対して異議を申し立てよう、と意気込んでいました。

あなたにおすすめの小説

警察官は今日も宴会ではっちゃける

饕餮
恋愛
居酒屋に勤める私に降りかかった災難。普段はとても真面目なのに、酔うと変態になる警察官に絡まれることだった。 そんな彼に告白されて――。 居酒屋の店員と捜査一課の警察官の、とある日常を切り取った恋になるかも知れない(?)お話。 ★下品な言葉が出てきます。苦手な方はご注意ください。 ★この物語はフィクションです。実在の団体及び登場人物とは一切関係ありません。

好きな人が嬢を身請けするのが辛くて逃げたら捕まりました~黒服の私は執着騎士に囲われる~

こじまき
恋愛
騎士が集う高級酒場「夜香楼」で女性黒服として働くソフィアは、客である寡黙な騎士ゼインに恋していた。けれど彼が指名するのはいつも人気花嬢イサナで、身請けも近いと予想されていた。 ソフィアは、叶わない想いにと嫉妬に耐えきれず、衝動的に店を去る。 もう二度と会うことはないはずだったのに、身請けした嬢と幸せに暮らしているはずの彼が追ってきて―― 「お前への愛は焼き印のように刻まれていて、もう消えない」 ――失恋したと思い込んで逃げた黒服が、執着系騎士様に捕まって囲われる話。 ※小説家になろうにも投稿しています

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。

〖完結〗旦那様が私を殺そうとしました。

藍川みいな
恋愛
私は今、この世でたった一人の愛する旦那様に殺されそうになっている。いや……もう私は殺されるだろう。 どうして、こんなことになってしまったんだろう……。 私はただ、旦那様を愛していただけなのに……。 そして私は旦那様の手で、首を絞められ意識を手放した…… はずだった。 目を覚ますと、何故か15歳の姿に戻っていた。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全11話で完結になります。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

愛を知った私は、もう二度と跪きません

阿里
恋愛
泥だらけのドレス、冷え切った食事、終わりのない書類仕事。 家族のために尽くしてきたエカテリーナに返されたのは、あまりにも残酷な追放宣告だった。 「呪われた男にでも喰われてこい」 そう笑って送り出した彼らは知らなかった。辺境伯ゼノスが、誰よりも強く、美しく、そして執着心が強い男だということを。 彼の手によって「価値ある女」へと生まれ変わったエカテリーナ。 その輝きに目が眩み、後悔して這いつくばる元家族たち。 「エカテリーナ様、どうかお助けを!」 かつて私を虐げた人たちの悲鳴を聞きながら、私は最愛の夫の腕の中で、静かに微笑む。

『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた

歩人
ファンタジー
侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。

気に入った人を片っ端から『私のモノ』と宣言する料理人を雇ってしまった

ぜんだ 夕里
恋愛
辺境の領主フィリップは慢性的な人手不足に悩んでいた。料理長が腰を抜かして引退し、塩水スープしか食べられない地獄に限界を迎えていたある日、「私、料理ができます!」と一人の少女が現れる。それは、気に入ったものは全て「私のモノ!」と宣言する困った食いしん坊エリーだった。