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いつの間にかカルディと気の置けない関係になりました
誘拐騒ぎの後しばらく自室で大人しく過ごしていたエリーゼでしたが、誘拐される直前に会っていたナポリ医師に会いたくなり久しぶりの外出を試みました。
「エリーゼ様、お供します。」
エリーゼが外出しようとすると、どこから現れたのかエリーゼの背後にいかつい騎士が近づいてきました。
彼は父がエリーゼにつけた護衛騎士のスタンレーです。
彼のいかつい外見と礼儀正しい所作がいかにも騎士らしい、とエリーゼは思いました。
エリーゼはナポリ医師に会いに行く事を告げ、スタンレーのエスコートで馬車に乗り込みました。
馬車は大通りを優雅に通り抜け、あっという間にナポリ医師の医院に到着しました。
「スタンレー、あなた‥まさか中までついてくるの?」
エリーゼはナポリ医師との会話をスタンレーに聞かれたくなかったので少し怪訝そうな顔で訊きました。
「‥‥エリーゼ様が戻られるまで建物の入り口付近に待機しております。」
「分かったわ。お願いね。」
礼儀正しいスタンレーはエリーゼに一礼すると、自分の立ち位置らしい場所に姿勢良く立ち、辺りを警戒しながら待機の状態を保ちました。
エリーゼはスタンレーを建物の外に残して、ナポリ医師のいる部屋に向かいました。
午前の診察の終了後を狙ってきたので、ナポリ医師はランチの最中でした。
「先生、エリーゼです。」
「‥まさかまた一人で!?」
「いえ、護衛の者を連れて来たんです。」
「‥まあ、それならいいか。」
エリーゼが慣れた様子で部屋のソファーに腰掛けると、ナポリ医師がため息をつきながら話し始めました。
「‥エリーゼさんがいなくなってから大変だったんだ。ここにも捜査員が来て色々と聞かれたり、医院の中を調べられたりして‥。」
「‥本当にすみません。私の勝手な行動のせいで、先生にまでご迷惑を‥。」
「あっ、いやそれは良いんだ。とにかくエリーゼさんが無事で本当に良かった。それにしても‥あの夜にエリーゼさんを一人で帰してしまったことを何度悔やんだ事か。」
「本当にごめんなさい。」
「‥これからは夜に一人で出歩かないで下さいね。」
「はい‥。」
エリーゼとナポリ医師が無言になり、しんみりとした空気の中‥誰かが部屋の扉をノックもなしに開けました。
「父さん、頼みがあるんだけど‥。」
「カルディ、今来客中なんだが‥。」
「あっ‥。」
一瞬の沈黙の後、口火を切ったのはカルディでした。
「これは‥元婚約者のエリーゼさんじゃないか。君のせいで僕の研究室にも捜査員が来て大変だったんだよ。まあ、無事でなによりだけど。」
「カルディ、ごめんなさい‥。」
「いいよ、責めてる訳じゃないんだ。‥まあ何はともあれ君が無事で安心したよ。」
エリーゼはつくづく大変な事をしでかしてしまったと、申し訳なさそうな顔をしてカルディを見ました。
カルディはそんなエリーゼを優しい笑顔で見つめ返しました。
軽い口調の言葉とは裏腹に、その表情はとても暖かく優しいものでした。
エリーゼはそんなカルディの顔を見ているうちに、何となくむず痒いような変な気分になり‥思わず顔を背けてしまいました。
カルディはそんなエリーゼの様子を嬉しそうに眺めます。
「ああ、えっと‥カルディ、頼みとは何だ?」
ナポリ医師は時計を見ながら、カルディに話を振りました。
お昼休憩の後に午後の診察が控えているので、ナポリ医師は少し急いでいました。
カルディはエリーゼから視線を外すと、自分もナポリ医師の隣に腰掛けてナポリ医師と話し始めました。
「そうそう、父さんの患者で何かに悩んでそうな人がいたら、何人かに僕のところへ相談へくるように勧めて欲しいんだ。」
「‥お前のところにか?お前に相談してどうなると言うんだ。」
「‥うーん、この国ではまだ認可されてないんだけど精神的な病で悩んでいる人達の為の診療科を作ろうと思ってるんだ。その為のサンプルが欲しいんだ。」
「サンプル!?そんな物のために大切な患者をお前に任すわけにはいかんな。」
「‥いや、これは隣国ではメジャーなんだよ。もちろんそうした患者を診る為の資格も隣国で取得してるから、隣国では開業もできるぐらいの知識はあるんだよ。それで‥この国でもその分野で開業できないかなって思って‥。」
「‥将来この医院を継ぐんじゃなかったのか。」
「将来この医院を大きくして総合病院にしたいんだ。そしてさまざまな分野の専門医を雇って、僕も精神診療科の医師として‥。」
「精神?そんなものは体が健康なら何とでもなる。それに患者さんの悩みぐらい普段の診察の中でも聞いてあげられるし‥。」
「父さん、僕は研究を続けながら自分の好きな分野で人の為に役立ちたいんだ。だから‥」
「とりあえず今日は帰ってくれ。気分が悪い。」
「‥分かった。また来るよ。」
カルディは肩を落として部屋から出て行きました。
「‥‥。先生、私もそろそろ失礼しますね。」
「そうですね。次来た時にはもっとゆっくり話せると良いですね。」
「はい。ではまた。」
ナポリ医師が時計を見ながら急いでランチを済ますのを横目に、エリーゼは医院を出て護衛のスタンレーを連れてカルディのあとを追いました。
「カルディ!」
「‥エリーゼ?まさか僕を追いかけてきたのか。」
「そうなの。先生と何か面白そうな話をしてたでしょ、とても気になって。」
「‥そうか。」
「あと、私も相談に乗って貰おうかなって思って。」
「そうか!なら‥あそこのカフェに入ってお茶でも飲みながら話そうか。‥そこの騎士さんも一緒に。」
「そうね、行きましょう。」
エリーゼはいつも自信たっぷりのカルディが珍しく肩を落とす姿を見て、何となくカルディを追いかけてきてしまいました。
それに悩みがあると言いながらも、カルディにそれを打ち明けるつもりもなかったのに‥。
何故だかカルディを追いかけてカフェにまで来てしまいました。
ですが、目の前で明るい様子で話すカルディを見るうちにカルディを追いかけて来てカフェにまで来た事は正解だったと思いました。
カルディもカルディで、まさかエリーゼが自分を追いかけてきてくれるとは思っても見なかったので、嬉しさの余り少し浮かれてもいました。
そのせいで普段は飲まないブラックコーヒーを飲んで、思わず苦虫を噛み潰したような顔を浮かべてしまい、エリーゼに笑われてしまう事になってしまうのでした。
「押して駄目なら引いてみろ‥か。案外言い得て妙だな。」
「カルディ?」
「‥ううん、何でもないよ。それよりさっきの話の続きなんだけど‥。」
「うんうん、詳しく教えて。」
エリーゼはカルディとの会話を思う存分楽しみました。
『婚約関係にないと、カルディとは本当に気軽に話せるわ。もう苛々する事もないし。それにこうして話してると、カルディほど私と気の合う人物はいないかも。彼が私と友達になってくれたら楽しいだろうな‥。』
そんな風にエリーゼは思うのでした。
「エリーゼ様、お供します。」
エリーゼが外出しようとすると、どこから現れたのかエリーゼの背後にいかつい騎士が近づいてきました。
彼は父がエリーゼにつけた護衛騎士のスタンレーです。
彼のいかつい外見と礼儀正しい所作がいかにも騎士らしい、とエリーゼは思いました。
エリーゼはナポリ医師に会いに行く事を告げ、スタンレーのエスコートで馬車に乗り込みました。
馬車は大通りを優雅に通り抜け、あっという間にナポリ医師の医院に到着しました。
「スタンレー、あなた‥まさか中までついてくるの?」
エリーゼはナポリ医師との会話をスタンレーに聞かれたくなかったので少し怪訝そうな顔で訊きました。
「‥‥エリーゼ様が戻られるまで建物の入り口付近に待機しております。」
「分かったわ。お願いね。」
礼儀正しいスタンレーはエリーゼに一礼すると、自分の立ち位置らしい場所に姿勢良く立ち、辺りを警戒しながら待機の状態を保ちました。
エリーゼはスタンレーを建物の外に残して、ナポリ医師のいる部屋に向かいました。
午前の診察の終了後を狙ってきたので、ナポリ医師はランチの最中でした。
「先生、エリーゼです。」
「‥まさかまた一人で!?」
「いえ、護衛の者を連れて来たんです。」
「‥まあ、それならいいか。」
エリーゼが慣れた様子で部屋のソファーに腰掛けると、ナポリ医師がため息をつきながら話し始めました。
「‥エリーゼさんがいなくなってから大変だったんだ。ここにも捜査員が来て色々と聞かれたり、医院の中を調べられたりして‥。」
「‥本当にすみません。私の勝手な行動のせいで、先生にまでご迷惑を‥。」
「あっ、いやそれは良いんだ。とにかくエリーゼさんが無事で本当に良かった。それにしても‥あの夜にエリーゼさんを一人で帰してしまったことを何度悔やんだ事か。」
「本当にごめんなさい。」
「‥これからは夜に一人で出歩かないで下さいね。」
「はい‥。」
エリーゼとナポリ医師が無言になり、しんみりとした空気の中‥誰かが部屋の扉をノックもなしに開けました。
「父さん、頼みがあるんだけど‥。」
「カルディ、今来客中なんだが‥。」
「あっ‥。」
一瞬の沈黙の後、口火を切ったのはカルディでした。
「これは‥元婚約者のエリーゼさんじゃないか。君のせいで僕の研究室にも捜査員が来て大変だったんだよ。まあ、無事でなによりだけど。」
「カルディ、ごめんなさい‥。」
「いいよ、責めてる訳じゃないんだ。‥まあ何はともあれ君が無事で安心したよ。」
エリーゼはつくづく大変な事をしでかしてしまったと、申し訳なさそうな顔をしてカルディを見ました。
カルディはそんなエリーゼを優しい笑顔で見つめ返しました。
軽い口調の言葉とは裏腹に、その表情はとても暖かく優しいものでした。
エリーゼはそんなカルディの顔を見ているうちに、何となくむず痒いような変な気分になり‥思わず顔を背けてしまいました。
カルディはそんなエリーゼの様子を嬉しそうに眺めます。
「ああ、えっと‥カルディ、頼みとは何だ?」
ナポリ医師は時計を見ながら、カルディに話を振りました。
お昼休憩の後に午後の診察が控えているので、ナポリ医師は少し急いでいました。
カルディはエリーゼから視線を外すと、自分もナポリ医師の隣に腰掛けてナポリ医師と話し始めました。
「そうそう、父さんの患者で何かに悩んでそうな人がいたら、何人かに僕のところへ相談へくるように勧めて欲しいんだ。」
「‥お前のところにか?お前に相談してどうなると言うんだ。」
「‥うーん、この国ではまだ認可されてないんだけど精神的な病で悩んでいる人達の為の診療科を作ろうと思ってるんだ。その為のサンプルが欲しいんだ。」
「サンプル!?そんな物のために大切な患者をお前に任すわけにはいかんな。」
「‥いや、これは隣国ではメジャーなんだよ。もちろんそうした患者を診る為の資格も隣国で取得してるから、隣国では開業もできるぐらいの知識はあるんだよ。それで‥この国でもその分野で開業できないかなって思って‥。」
「‥将来この医院を継ぐんじゃなかったのか。」
「将来この医院を大きくして総合病院にしたいんだ。そしてさまざまな分野の専門医を雇って、僕も精神診療科の医師として‥。」
「精神?そんなものは体が健康なら何とでもなる。それに患者さんの悩みぐらい普段の診察の中でも聞いてあげられるし‥。」
「父さん、僕は研究を続けながら自分の好きな分野で人の為に役立ちたいんだ。だから‥」
「とりあえず今日は帰ってくれ。気分が悪い。」
「‥分かった。また来るよ。」
カルディは肩を落として部屋から出て行きました。
「‥‥。先生、私もそろそろ失礼しますね。」
「そうですね。次来た時にはもっとゆっくり話せると良いですね。」
「はい。ではまた。」
ナポリ医師が時計を見ながら急いでランチを済ますのを横目に、エリーゼは医院を出て護衛のスタンレーを連れてカルディのあとを追いました。
「カルディ!」
「‥エリーゼ?まさか僕を追いかけてきたのか。」
「そうなの。先生と何か面白そうな話をしてたでしょ、とても気になって。」
「‥そうか。」
「あと、私も相談に乗って貰おうかなって思って。」
「そうか!なら‥あそこのカフェに入ってお茶でも飲みながら話そうか。‥そこの騎士さんも一緒に。」
「そうね、行きましょう。」
エリーゼはいつも自信たっぷりのカルディが珍しく肩を落とす姿を見て、何となくカルディを追いかけてきてしまいました。
それに悩みがあると言いながらも、カルディにそれを打ち明けるつもりもなかったのに‥。
何故だかカルディを追いかけてカフェにまで来てしまいました。
ですが、目の前で明るい様子で話すカルディを見るうちにカルディを追いかけて来てカフェにまで来た事は正解だったと思いました。
カルディもカルディで、まさかエリーゼが自分を追いかけてきてくれるとは思っても見なかったので、嬉しさの余り少し浮かれてもいました。
そのせいで普段は飲まないブラックコーヒーを飲んで、思わず苦虫を噛み潰したような顔を浮かべてしまい、エリーゼに笑われてしまう事になってしまうのでした。
「押して駄目なら引いてみろ‥か。案外言い得て妙だな。」
「カルディ?」
「‥ううん、何でもないよ。それよりさっきの話の続きなんだけど‥。」
「うんうん、詳しく教えて。」
エリーゼはカルディとの会話を思う存分楽しみました。
『婚約関係にないと、カルディとは本当に気軽に話せるわ。もう苛々する事もないし。それにこうして話してると、カルディほど私と気の合う人物はいないかも。彼が私と友達になってくれたら楽しいだろうな‥。』
そんな風にエリーゼは思うのでした。
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