親切なミザリー

みるみる

文字の大きさ
12 / 38

ピューリッツの回想 ミザリーとの思い出②

しおりを挟む

ピューリッツは一週間後、ミザリーとの約束通り学園へやって来ました。

忙しいスケジュールを調整したり、図書館でミザリーの知りたがっていた植物について調べたりと忙しい日々を過ごしましたが‥あの日泣いていたミザリーの顔が、ずっと頭から離れなかったのです。だからミザリーが喜ぶ事をしてやって、彼女を少しでも笑顔にしたかったのです。‥それに、若い女の子の前で物知りで仕事ができる格好いいところを見せたい、という気持ちもありました。

「‥それにしてもミザリーさんは、あの日何故泣いてたんだろう?男に振られたのか、他の生徒に虐められていたのか‥。」

ピューリッツがミザリーの事を考えていると、ちょうどそこへ作業着を着たミザリーが小走りにやってきました。

「お兄さーん!約束通り来てくれてありがとう。」

「ああ、約束したからな。あと‥名乗るのが遅れて申し訳ないが、僕は庭師のピューリッツだ。皆んな僕を呼び捨てで呼んでるから、ミザリーさんにもそうして欲しい。」

「うん、分かった。」

「ところでここに来るまでに学園の植物の状態をチェックしてきたんだけど‥。」

「‥どうでした?」

「完璧だったよ!僕の助手にしたいぐらいだ。」

「本当!?」

ミザリーはピューリッツの褒め言葉に満面の笑みを浮かべました。そして、両手で顔を覆うと‥涙を流して泣き出してしまいました。

「うっ、うう‥。」

「ミザリーさん、泣いてるのか?」

「嬉しくて‥。私なんて誰からも必要とされてなかったから‥。」

「そんな大袈裟な‥。」

「ピューリッツ、私を弟子にしてくれませんか?手に職をつけておきたいんです。」

「手に職って‥えっ?」

「‥ピューリッツ、私学園をやめて遠くの街へ行く!‥誰も私の事を知らない街に‥。だから、お願い!」

「‥学園をやめて遠くへ行く事には素直に賛成はできないが‥手に職をつけたいだとか、植物に興味があるというのなら‥僕が君に色々教えてあげるよ。君は真面目で向学心があるから、教えがいもあるしね。‥とはいえ、君に園芸の事を教えてあげられる時間はそんなにとれないんだ。とれたとしても、週に一回この時間ぐらいだけど‥‥それでもいいかい?」

「ありがとう!ピューリッツ先生、これから宜しくお願いします!」

「あっ、ああ分かった。‥ところで、例の花なんだけど、ちゃんと調べてきたよ。」

「‥‥本当に調べてきてくれたんですね。ありがとう、ピューリッツ。‥で、何という名前の花なのですか?」

「カピエラという国の「ファントム」という木の花だよ。花や茎は高級な砂糖の原料にもなっているんだ。」

「‥だからあんなにも甘い匂いがしたんだ‥。」

「あっでも、「ファントム」はただ甘くて可愛い花を咲かせるだけの木じゃないんだ。‥根には協力な毒を持っているんだよ。」

「毒!?‥なんでそんな危険な木が学園にあるの?」

「いやいや、毒を持つ木や花なんて珍しくないからね。‥ほら、そこの夾竹桃だって、茎を串や箸代わりに使った人が亡くなった例だってあるんだ。」

「‥知らなかった。そうなの?毒って結構身近に沢山あるのね。」

「そうなんだよ。どう、勉強になったかい?」

ピューリッツの話に終始驚きっぱなしのミザリーに対して、彼はそうやって得意げにたずねました。

「‥ええ、とても勉強になりました。ところでピューリッツ先生、質問を良いですか?」

「なんだい?」

「「ファントム」の毒って苦いのですか?花や茎が甘くても‥毒と言うからには、やはり苦いのですよね?」

「それが‥あまり大きな声では言えないんだが、「ファントム」の毒は甘いんだ。‥根を乾燥させて粉にしてやれば砂糖と変わらないんだよ。」

「‥それは危険ですね。暗殺とかに使われたら、毒を入れられても気づかないうちに食べて死んでしまいますね。」

「‥ああ、だから近年はカピエラでも「ファントム」の国外への持ち出しを禁止するようになったそうだ。」

「‥そうなんですね。」

ミザリーは「ファントム」に手を伸ばし、もう一度その可愛らしいピンクの花に顔を近づけました。

「こんなにも可愛くて甘い匂いがするのに‥毒があるのね。」

「ああ、だから無闇に触れない事だ。」

ピューリッツはミザリーにそう言って、改めて注意を促しました。

ですがミザリーは、この時すっかり「ファントム」に魅了されていました。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

彼は亡国の令嬢を愛せない

黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。 ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。 ※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。 ※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。

死に戻り王妃はふたりの婚約者に愛される。

豆狸
恋愛
形だけの王妃だった私が死に戻ったのは魔術学院の一学年だったころ。 なんのために戻ったの? あの未来はどうやったら変わっていくの? どうして王太子殿下の婚約者だった私が、大公殿下の婚約者に変わったの? なろう様でも公開中です。 ・1/21タイトル変更しました。旧『死に戻り王妃とふたりの婚約者』

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

真実の愛だった、運命の恋だった。

豆狸
恋愛
だけど不幸で間違っていた。

『仕方がない』が口癖の婚約者

本見りん
恋愛
───『だって仕方がないだろう。僕は真実の愛を知ってしまったのだから』 突然両親を亡くしたユリアナを、そう言って8年間婚約者だったルードヴィヒは無慈悲に切り捨てた。

この祈りは朽ち果てて

豆狸
恋愛
「届かなかった祈りは朽ち果ててしまいました。私も悪かったのでしょう。だれかになにかを求めるばかりだったのですから。だから朽ち果てた祈りは捨てて、新しい人生を歩むことにしたのです」 「魅了されていた私を哀れに思ってはくれないのか?」 なろう様でも公開中です。

【完結】私の婚約者は、いつも誰かの想い人

キムラましゅろう
恋愛
私の婚約者はとても素敵な人。 だから彼に想いを寄せる女性は沢山いるけど、私はべつに気にしない。 だって婚約者は私なのだから。 いつも通りのご都合主義、ノーリアリティなお話です。 不知の誤字脱字病に罹患しております。ごめんあそばせ。(泣) 小説家になろうさんにも時差投稿します。

処理中です...