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ラファエル侯爵が呼ばれた理由
しおりを挟むミザリーの死は自殺だった‥‥それは周知の事実でした。
ですが、ミザリーの父ラファエル侯爵はまだ娘の自殺の事実を受け入れられずにいました。
『娘が自殺する程悩んでいたというのに、親である自分は何故娘の悩みに気付いてあげられなかったのか‥。もし気付いて相談にのってあげられていたら、娘は死なずに済んだのか‥。それとも自殺ではなくて他殺だとは考えられないか?』
毎日ずっとそんな事ばかりを考えていたのです。
「あなた、今日も眠れなかたったのね‥。」
ミザリーの母エルザは、そんな夫の身を案じて声をかけました。
「‥大丈夫だ。少し眠れた。‥それよりも君こそ大丈夫か?」
「‥ええ、医師から頂いた睡眠薬がよく効いて‥おかげで最近はよく眠れて体調も良いんです。‥それにミザリーが帰って来た時、私がしっかりしていなければあの子を心配させてしまいますしね。」
エルザはそう言って元気そうに笑いました。
「‥‥‥ミザリーが帰ってきたら‥か。ああ、そうだな。」
ラファエル侯爵はこのやり取りで、妻もまだミザリーの死を受け入れられずにいるという事を、改めて知る事になりました。
「‥‥では行ってくるよ。」
侯爵はエルザにキスをすると、その後何度もエルザを振り返り見て‥後ろ髪を引かれる思いのまま王宮へと向かいました。
何故ラファエル侯爵が王から頻繁に呼び出されるのか‥。
それは、王がミザリーの自殺の原因が息子のアポロ王子の浮気のせいではないか?と言う思いを抱いており、ラファエル侯爵に対して申し訳ないという気持ちを抱いていたからです。
そして今日は、そんな王からラファエル侯爵に改めて大切な話があると言うのです。
「‥一体今更なんの話があると言うのだろう。ミザリーの遺体がないから死因を突き止める術がないというのに。」
ラファエル侯爵は、娘ミザリーの死因が未だ分からない事や、相変わらず娘が悪女扱いされている事に苛立っていました。
「ハァーッ‥‥。」
「侯爵‥大分疲れているようだな。」
「あっ、すみません。最近溜息が癖になってしまったようで‥失礼しました。」
ラファエル侯爵は、応接間で出されたお茶に手を伸ばしながら、王の前にも関わらず大きな溜息をついてしまいました。
「ラファエル侯爵、実は今日‥君の他にも客を呼んであるんだ。‥まあ、だれが来ても緊張せず寛いでいてくれ。」
「‥‥。」
王はラファエル侯爵にそう言うと、従者に指示を出してある人物を招き入れました。
「‥お久しぶりです。またお目にかかれて光栄です。」
そう言って部屋に入ってきたのは外国の若者でした。
ラファエル侯爵は、王と親しい様子のこの外国の若者は一体誰なのか?と不審に思いながらも二人の様子を見守っていました。
「ゼウス王子、彼がラファエル侯爵だ。」
「ラファエル侯爵、初めまして。今日はお会いできて嬉しいです。」
「‥‥こっこちらこそ、‥会えて光栄です。」
ラファエル侯爵は、外国の若者が隣国の王子だと知ると、分かりやすく動揺しました。
『何故この場に私が呼ばれているのだ‥王とカピエラの王子だけでなく、わたしが何故この場に‥。』
王はラファエル侯爵のそんな戸惑いを察したのか、早速彼にこの場に呼んだ理由を説明しました。
「侯爵、実は我が国の若い女性の遺体が隣国カピエラに流れ着いたらしい。
カピエラとしては、隣国の身分の高そうな女性が、服毒して海に流されてるところから、何かの事件に巻き込まれたのでは?と不審に思い、私だけに内密に報告してくれたんだ。
彼は、その遺体を保護している施設の所長でありカピエラの王子だが、我が国に留学という名目で調査に来てくれているんだ。」
「‥服毒して海へ流されてって‥もしかしてミザリーですか!?」
ラファエル侯爵は顔を紅潮させて興奮しながら王に詰め寄りました。
「‥侯爵、落ち着きなさい。まだ話は終わっていない。‥それにまだその女性がミザリーと断定はできないんだ。‥だから君にカピエラへ行って、女性の遺体がミザリーかどうかを確認してきて欲しいんだ。」
「‥すみません、取り乱してしまいました。‥そういう事でしたら、是非カピエラへ行かせて下さい。」
ラファエル侯爵はすんなりとカピエラへ女性の遺体を確認しに行く事に同意しました。
そしてカピエラへ向かうにあたり、ゼウス王子の側近の若者が、ラファエル侯爵に同行してくれる事になりました。
『たとえ遺体でもいい。ミザリーに会いたい。ミザリーを‥丁寧に弔ってやりたい。それにできれば死因の調査もしてやりたい‥。ああ、だからどうか女性の遺体がミザリーでありますように。』
ラファエル侯爵は、カピエラへと向かう同中そう必死に願っていました。
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