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大好きな人 後編
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アイザックが近寄ってきた時少し顔を強張らせたララベルでしたが、すぐに笑顔を作り大人の対応をしました。
「‥ありがとうございます。今日は奥様のユリアと一緒に私のお祝いに来てくれたのですよね?」
「‥‥ああ、そうだ。」
「‥ユリアは一緒ではないのですか?」
「ユリアは‥今身重の身体だから、あっちの椅子で休ませている。」
「そうですか。では、ユリアのところへ‥。」
「‥ララベル、待てって。」
アイザックがその場を去ろうとしたララベルの腕を掴んで引き留めました。
アイザックとララベルのただならぬ様子を皆が遠巻きに見守ります。
好奇心の入り混じった皆の視線が、容赦なく2人に注がれます。
そんな2人のすぐ側にいるナタリーにも皆の視線は注がれました。
「あの方はなぜあの2人と一緒にいるの?」
「まさか、三角関係!?あっ、でもあの3人共きちんとしたお相手がいたはずよ。」
皆の視線とヒソヒソ声に耐えきれず、その場から逃げようとしたところ、ララベルの縋るような表情に引き留められて‥ナタリーは仕方なくその場で晒し者になり続けるのでした。
そもそも何故アイザックとララベルがこんなにも好奇の的になってしまうのか‥。
ナタリーは知らなかったようですが、実はアイザックがユリアと結婚して子供を授かった後もずっとララベルを追っていた事は、社交界では有名な話だったのです。
そんな面白いゴシップの現場が目の前で展開されてるというのに、それを見て見ぬふりをする人なんている訳がないのです。
皆が固唾を呑んで、この後の2人の展開を見届けようと静まり返る中、ナタリーの夫マクレガーだけがその静寂を破り、ずかずかとナタリーの元へ近寄って来ました。
「ナタリー、2人とは学生の頃以来だろ?ゆっくり話せたかい?」
「‥‥。」
「同級生3人で色々と募る話もあるだろうが、ララベルさんはまだ他の方達とも話をしなきゃならないだろうから、2人共そろそろララベルさんを解放してあげたらどうだい?」
「あっ‥そうね、ありがとうマック。私達懐かしくてついつい話し込んでしまったみたい。‥ララベル、ごめんね。」
「‥ナタリー、マクレガーさん、ありがとうございます。」
ララベルはそう言ってマクレガーに軽く会釈をすると、ようやく幼なじみの旦那様のもとへと戻って行くことができました。
一方のアイザックは、お酒に酔っていたのか少しふらついた足取りでその場から後退りして、会場の隅の椅子へと歩いていきました。
それを彼の妻のユリアが追って行き、甲斐甲斐しく彼の世話を焼き始めました。
その一部始終をずっと見守っていた皆は、何事も起きなかった事に少しがっかりした様子でした。
何はともあれ、マクレガーの機転によってララベルの結婚披露パーティーは思わぬトラブルを回避し、無事進行していったのでした。
ナタリーはその事にホッと一安心しました。
それにしても‥アイザックはナタリーの事をあまり覚えていないようでしたので、ナタリーはその事を少し悔しく思っていました。
「学生時代にあれだけ私に絡んできておいて、私の事を全く覚えていないって何よ、最悪!‥アイザックってば、よっぽどララベルの事しか見てなかったのね。‥私の事もララベルに近づくためのいい駒にしてたって事ね、最低!」
ナタリーが苛立ちをあらわにして独り言を言っていると、マクレガーがその様子を見て馬鹿にしたようにクスクスと笑いました。
「ナタリー、君はもうアイザックにこれっぽっちも未練なんてないだろ?あんなに薄情であざとい男、ナタリーには勿体ないよ。つくづく彼にナタリーの良さが分からなくてほっとしてるよ。」
「そうね。私の初恋の相手がアイザックだなんて、もう黒歴史よ。忘れてやる!」
「そうか、それは良いね。」
「それにしても‥マックはさすが格好良かったわよ。あんなに気まずい雰囲気をすぐに変えてしまうし。それに‥誰よりも私の事を愛してくれているわ。」
「アハハ、どういたしまして。」
ナタリーはマクレガーの笑顔を見ながら、彼が自分の夫である事を誇らしく思いました。
視界の隅に、酔って項垂れるアイザックが妻のユリアに世話されている様子が見えました。
彼の妻ユリアは甲斐甲斐しく彼の世話を焼き、嫌な顔ひとつ見せません。
「ユリアさんが子供を出産したら、さすがにアイザックも家庭に落ち着くわよね。‥ユリアさんや産まれてくる赤ちゃんのためにもそうであって欲しいわ。」
ナタリーが夫のマクレガーにそう言って同意を求めると‥
「‥そうだな、是非そうあって欲しいものだ。いつまでも叶わない恋を追って、自分や他人様の家庭を壊すような事は、立派な大人のする事ではないからな。」
と、彼には珍しくアイザックに対して少し嫌味な物言いをしてきました。
「‥ねえ、もしかしてマックはアイザックの事が嫌いなの?」
「嫌いだよ。彼は僕の大好きな人の初恋の相手なんだからね、嫌いに決まってる。」
そう言って少し拗ねた表情を見せたマクレガーに、ナタリーは思わず笑ってしまいました。
「マックってば、やきもちを焼いてくれてるの?マックのそんなに子供っぽいところ、初めて見た。」
「‥まあ、僕はナタリーよりも歳上なんだし、君に嫌われないように常に大人っぽく振る舞っていたからね。‥君はこんな子供っぽい僕は嫌いかい?」
「まさか!大好きよ、嫌いどころか寧ろ自慢の夫よ。」
ナタリーがそう言うと、マクレガーは満足そうな笑顔を見せました。
そんなマクレガーの笑顔を見ながら、ナタリーはこの上なく幸福な気持ちに浸るのでした。
end.
「‥ありがとうございます。今日は奥様のユリアと一緒に私のお祝いに来てくれたのですよね?」
「‥‥ああ、そうだ。」
「‥ユリアは一緒ではないのですか?」
「ユリアは‥今身重の身体だから、あっちの椅子で休ませている。」
「そうですか。では、ユリアのところへ‥。」
「‥ララベル、待てって。」
アイザックがその場を去ろうとしたララベルの腕を掴んで引き留めました。
アイザックとララベルのただならぬ様子を皆が遠巻きに見守ります。
好奇心の入り混じった皆の視線が、容赦なく2人に注がれます。
そんな2人のすぐ側にいるナタリーにも皆の視線は注がれました。
「あの方はなぜあの2人と一緒にいるの?」
「まさか、三角関係!?あっ、でもあの3人共きちんとしたお相手がいたはずよ。」
皆の視線とヒソヒソ声に耐えきれず、その場から逃げようとしたところ、ララベルの縋るような表情に引き留められて‥ナタリーは仕方なくその場で晒し者になり続けるのでした。
そもそも何故アイザックとララベルがこんなにも好奇の的になってしまうのか‥。
ナタリーは知らなかったようですが、実はアイザックがユリアと結婚して子供を授かった後もずっとララベルを追っていた事は、社交界では有名な話だったのです。
そんな面白いゴシップの現場が目の前で展開されてるというのに、それを見て見ぬふりをする人なんている訳がないのです。
皆が固唾を呑んで、この後の2人の展開を見届けようと静まり返る中、ナタリーの夫マクレガーだけがその静寂を破り、ずかずかとナタリーの元へ近寄って来ました。
「ナタリー、2人とは学生の頃以来だろ?ゆっくり話せたかい?」
「‥‥。」
「同級生3人で色々と募る話もあるだろうが、ララベルさんはまだ他の方達とも話をしなきゃならないだろうから、2人共そろそろララベルさんを解放してあげたらどうだい?」
「あっ‥そうね、ありがとうマック。私達懐かしくてついつい話し込んでしまったみたい。‥ララベル、ごめんね。」
「‥ナタリー、マクレガーさん、ありがとうございます。」
ララベルはそう言ってマクレガーに軽く会釈をすると、ようやく幼なじみの旦那様のもとへと戻って行くことができました。
一方のアイザックは、お酒に酔っていたのか少しふらついた足取りでその場から後退りして、会場の隅の椅子へと歩いていきました。
それを彼の妻のユリアが追って行き、甲斐甲斐しく彼の世話を焼き始めました。
その一部始終をずっと見守っていた皆は、何事も起きなかった事に少しがっかりした様子でした。
何はともあれ、マクレガーの機転によってララベルの結婚披露パーティーは思わぬトラブルを回避し、無事進行していったのでした。
ナタリーはその事にホッと一安心しました。
それにしても‥アイザックはナタリーの事をあまり覚えていないようでしたので、ナタリーはその事を少し悔しく思っていました。
「学生時代にあれだけ私に絡んできておいて、私の事を全く覚えていないって何よ、最悪!‥アイザックってば、よっぽどララベルの事しか見てなかったのね。‥私の事もララベルに近づくためのいい駒にしてたって事ね、最低!」
ナタリーが苛立ちをあらわにして独り言を言っていると、マクレガーがその様子を見て馬鹿にしたようにクスクスと笑いました。
「ナタリー、君はもうアイザックにこれっぽっちも未練なんてないだろ?あんなに薄情であざとい男、ナタリーには勿体ないよ。つくづく彼にナタリーの良さが分からなくてほっとしてるよ。」
「そうね。私の初恋の相手がアイザックだなんて、もう黒歴史よ。忘れてやる!」
「そうか、それは良いね。」
「それにしても‥マックはさすが格好良かったわよ。あんなに気まずい雰囲気をすぐに変えてしまうし。それに‥誰よりも私の事を愛してくれているわ。」
「アハハ、どういたしまして。」
ナタリーはマクレガーの笑顔を見ながら、彼が自分の夫である事を誇らしく思いました。
視界の隅に、酔って項垂れるアイザックが妻のユリアに世話されている様子が見えました。
彼の妻ユリアは甲斐甲斐しく彼の世話を焼き、嫌な顔ひとつ見せません。
「ユリアさんが子供を出産したら、さすがにアイザックも家庭に落ち着くわよね。‥ユリアさんや産まれてくる赤ちゃんのためにもそうであって欲しいわ。」
ナタリーが夫のマクレガーにそう言って同意を求めると‥
「‥そうだな、是非そうあって欲しいものだ。いつまでも叶わない恋を追って、自分や他人様の家庭を壊すような事は、立派な大人のする事ではないからな。」
と、彼には珍しくアイザックに対して少し嫌味な物言いをしてきました。
「‥ねえ、もしかしてマックはアイザックの事が嫌いなの?」
「嫌いだよ。彼は僕の大好きな人の初恋の相手なんだからね、嫌いに決まってる。」
そう言って少し拗ねた表情を見せたマクレガーに、ナタリーは思わず笑ってしまいました。
「マックってば、やきもちを焼いてくれてるの?マックのそんなに子供っぽいところ、初めて見た。」
「‥まあ、僕はナタリーよりも歳上なんだし、君に嫌われないように常に大人っぽく振る舞っていたからね。‥君はこんな子供っぽい僕は嫌いかい?」
「まさか!大好きよ、嫌いどころか寧ろ自慢の夫よ。」
ナタリーがそう言うと、マクレガーは満足そうな笑顔を見せました。
そんなマクレガーの笑顔を見ながら、ナタリーはこの上なく幸福な気持ちに浸るのでした。
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